2-5
「はぁ疲れた…。」
気が付けばもう黄昏時。傾きかけた夕陽に照らされながらバス停のベンチに腰掛けている。
「たくさん買ったね〜。ありがとね。荷物持ってもらって。」
あれからまた他の店に移動し、試着をする作業ををくり返し、結果今俺の手元にはものすごい量の荷物がある。
「いやいいよ。というか周りからの目がかなり痛かったし…。」
はじめはヨウが1人で全部持っていたのだが、次第に荷物が増えるたびに周りからちらほらと
「なにあの男、女に荷物持たせて最低だな。」
「うわっ!マジクズじゃん!」
「ほら、まーくんあんな大人になっちゃダメだよ。あれは男として最悪な部類の人だからね。」
「わかった!僕あんなダメ人間にならない!」etc,
世論に耐えられなくなりヨウの腕から荷物をかっさらったわけである。しかし…、
「なあヨウ、あれだけのを重さをよく持てたな。」
いくらなんでもこの重さは女の子には無理があるだろう。
俺でさえこのベンチに着くまでに腕がプルプル揺れ始め、もはやガタガタと鳴り、錆びついた車輪並に悲鳴を挙げていた。
「えっそう。全然余裕だったけど。私鍛えてたし。」
「そうか…。」
こいつパワータイプだったか。じゃあテクニカルタイプが有効だったりするのではないのだろうかと考えてしまう。
「ねえ公一?」
少し疲れていたため俯いたまま、おう。と小さく返事はしたものの、あちらから返事は返ってこない。
どうしたもんかと視線を上げる。
と、そこには、夕陽に照らされ、普段は綺麗な金色の髪が、淡い茜色に染まり、神秘的な雰囲気を纏った彼女がこちらを少し不安げな顔でこちらを覗き込んでいる。
「なっ何?どうした?」
一瞬たじろいでしまった。 それは彼女の表情を見たからか、それとも鮮やか映えた彼女自身に見惚れてしまってたのかは分からない。
「あのね、私、公一にずっと聞きたいことがあったの。」
その声音もその表情も彼女らしからぬ印象を受ける。
「何だよ…。」
ほんの少しの間ができる。一瞬の筈なのに体感的には酷く長く感じた。
「何であの時私を助けてくれたの?」
「それは…。」
言葉が喉の奥で詰まってしまう。
心に浮かんだ気持ちと頭に浮かんだ言葉をすり替えてしまった。
「それは友達だからだろ。」
「…そっか。そうだね。」
一瞬表情が曇ったような気がしたが、それからいつものヨウの笑顔に戻った。
「じゃあ公一が困った時私が助けてあげるね!」
「おう、一回聞いてるけど、よろしく頼むな。」
真っ直ぐな目で見つめられそんなことを言われ、少し居心地が悪くなってしまう。
ちょうど良い。俺も自分の用を済ませてきてしまおう。
「悪い、ヨウ。ちょっと便所行ってくるわ。少し待っていてくれ。」
「わかった。気をつけて行ってきてね。」
「あいよ。」
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