2-4

お客様これなんていかがですか?」


「すっごい~!良いですねこれ!」


「これとだったらこれとこれとこれとが合うんですよ。いかがなさいます?」


「あ~すっごいかわいいです。どうしようかな?どう思う公一?」


白をベースにした壁とタイル調の床、天井にはシャンデリヤのようなキラキラした照明、商品棚の1番上にはお城イメージしたようなオブジェや、人形、謎の絵画などが飾ってある。ガラスの靴とリンゴのオブジェが揃って並んでいのに違和感を感じられずにいられない。まるでお姫様に憧れる乙女の夢と希望が具現化したような店内・・・。


当然、そんな店に入るほどの度胸など無く、先程から廊下の柱に身体を預けている。先程から何度も人にぶつかりそうになられ、その度に「気づかなかった」「影薄かったよね」「今なんか居た・・・。」「きも・・・」などなど、求めてもないのに勝手に俺に対する第一印象アンケートが募られてくる。

次第には俺は柱なんじゃないかという錯覚に陥ってきた。


そんな新しい人柱?柱人?についての定義について思考を巡らせていると、店内の方から自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。声のしたほうに顔を向けると、ヨウがこちらに向けて手を振り何か喋っている。がしかし、店内のざわめきが大きくその声は上手く聞き取ることができない。かろうじで自分の名前が呼ばれた時だけはわかる。これがカクテルパーティー現象か・・・。


 とりあえず何を言われたのか分からなかったので、ヨウに向け親指を立てた。おそらく買うか、買わないか悩んでいたのだろう。何でも良いから早く買って帰ろうぜ。

 ヨウがそのままレジに行くのをその場で見ながら待っていたが、なぜかこちらに歩いてきた。そして流れるように俺の腕を掴み、店内に引きずり込もうとしてくる。 


「えっ?何?」


「何って、試着見てくれるんでしょ?」


「・・・はい?」





只今、私、御住 公一はファンシーな世界に一人取り残されております。

 試着室の正面にある椅子に座って待つ事十数分、他の試着室から出てきた人には「うわっ!きも・・・。」と言われ、スマホをいじっていたら、試着室を利用しようとしていた女の子二人組のには小言で「盗撮とかされそうだから辞めとこうよ。」と言われ、もう心が折れそうです。


「帰りたい…。」


はぁぁ、と深いため息をついているとそれを遮るように試着室のカーテンが開かれた。


「どう、かな?」


黒のタンクトップに白のニットのカットソー、淡い色がカラフルにあしらわれたロング丈のフレアスカート。春らしいブラウンの足首ばかりあるサンダル。一瞬誰だかわからなかった。それほどまでに大人びていて、気品のある雰囲気を醸し出している。正直な感想としては、誰だこの綺麗なお嬢さん。である。


 「似合う…かな?」


不安そうに、そして少し照れたような仕草で

聞かれたのでこっちも何だか少し恥ずかしくなってしまう。


「あぁ、あん、そうだな。かわいいじゃないか。」


自分の言葉に身体がむず痒くなる。


「そっか…。それなら良かった。」

ほっと息を吐き。いつものヨウの笑顔に戻る。そしてその顔のまま


「ありがとう。」


「…おう。じゃあそれ買って早く帰「じゃあ次のもお願いね!」


再び、ピシャっと音をたてて目の前のカーテンが締められた。


「…嘘でしょ…。」


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