2-2
「わかった!」
勢いのある耳に残る透き通るような高周波を放ち、ヨウは店を出て行った。
1人残された俺は窓からヨウの後ろ姿を眺める。
スエットのバックプリントにあしらわれたキラキラした猫のキャラクターのイラストと目があってしまう。
あのキャラ好きなのかな。
とりあえずヨウには用件を伝え、一度家に帰ってもらった。
背中が見えなくなり、視線を前に戻す。
そろそろ昼時ともあり、店内には空席の方が少ないように思えるようになった。
小洒落た喫茶店ともあり、若い女性同士の客が大半を占めている。
そのためか店内には高いガヤガヤ音が響いており、うるさいとまではいかないがあまり心地は良くはない。
やだなぁ、帰りたいな。
俺も一緒についていけばよかったかな。
ふと正面のヨウが座っていたソファに視線を向ける。
「あいつ、バック忘れてんじゃん。」
少し大きめのトートバッグがこちら向け口を開けている。
ここからでも中身がほとんど見えるほどである。
ペットボトルの水、櫛、水、タオル、水、乾パン、水、水素水、水…。
水ありすぎじゃない?何?水ないと死ぬの?カッパかなんかなの?
水だけで3キロあるよ、このバック。
俺のヨウ水属性説が浮上したところで妙に違和感を放つものを見つけた。
「何あのノート…。」
何の変哲もないただのノートだが、そこに存在する事自体そのノートそのものが異様に感じられる。
何気無しにそのノートに手を伸ばしてしまう。
いやいやいや、落ち着け俺。
よく考えてみろ勝手に人の私物を荒らすなんて最低の人間がする事じゃないか。
同じ事を再び自分に問いかける。
「…。」
そっと俺の手は可愛らしいピンクの大学ノートの表紙をめくる。
よく考えてみたらもうこれ以上人間としての価値は下がらないし、最低としては最強だと自負しているぐらいである。
「何じゃこら…。」
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