2-1
カランコロンカラン
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
まだ来ていない人数も含めて答える。
「2名様ですね。お好きな席へどうぞ。」
そう店員に促され一番奥の1番端の席へ座る。
「ご注文は何にいたしましょう。」
待ち合わせの時刻にはまだ少し時間がある。
アイスコーヒーを頼みゆっくりと待つことにしよう。
「かしこまりました。」
コーヒーが来るまでの間、手持ち無沙汰なので軽く店内を眺めてみる。まだ朝の中途半端な時間だけあってからか、店内には俺の他に3組程度。
1組目は女の子二人連れ。
片方は普通の女の子なのだが、もう片方は店の中なのに帽子とサングラス、マスクまでつけている。というか女の子ということさえ怪しい。
というかちょっと怖い。
2組目はなんかねちっこいやり取りをしてるいい年をした男女のカップル。
「あぁ愛しているよ。」
「私もよ。」
インテリ風の胡散臭そうな意識高い系の眼鏡の男性。
女性のほうはこちらに背を向けていて顔は見えないのだが、服装や身に付けているものでそこまで若くない印象を受ける。
そして3組目その男女の席とは通路向かいに座って新聞を読んでいる中年の男性。
俺の視線はそのおじさんに釘付けになってしった。穴が開くほど新聞を睨んでいるおじさん。本当に穴が空いているのだから驚きだ。
そしてその視線の先には、ねちっこいカップル。
「さぁここに押してくれ。僕には君しかいないんだ。」
「分かったわ。」
そう言って鞄から判子のようなものを取り出し机の上にある紙切れに押そうとしたその時、
「待つんだお嬢さん!」
おじさんが立ち上がり判子を押そうとする手を掴んだ。
「あんた誰よ。離してよ!」
「そうですよ。邪魔をしないで頂きたい。貴方誰なんですか?」
「いやはやこれは失礼した。名乗りもせずに。私はこういうものです。」
女性の手を離し、佇まいを直したおじさんは懐に手を入れ何か取り出すような仕草をした。
こちらからではおじさんの背中しか見えていないので、 なにを取り出したかは確認は出来ないが何故かインテリ眼鏡の表情が青ざめていくのが窺える。
そのまま男はおじさんに連行され店内を出て行き、女性は机に泣き崩れしばらくした後、走りながら店内を出て行った。
それと入れ違いに金髪の少女が
アンティーク風の木製の扉を開け店内に入ってきた。
レジにいた店員に何かを伝え、キョロキョロと店内を見渡し、目的の人物を見つけたのかこちらに近づいてくる。
「ねぇねぇねぇねぇ聞いてよ公一!今そこでね、結婚詐欺師が捕まってたの!そんなことするような人には見えないのに。人は見かけによらないね。あっ、ありがとうございます。」
「アイスコーヒーとカフェオレになります。ごゆっくりどうぞ。」
また絶妙なタイミングでウェイトレスさんがコーヒーを持ってきたな。てかこいつ、いつの間に頼んだんだよ。
「本当だよな。まさしくその通りだ。」
「なっ、何?人の事見つめて…。」
「いや、何その格好。」
この金髪お嬢さん、顔から上を見れば品のあるどこぞの令嬢かなと思えるのだが、さすがに上下黒のスエットと足元が某白猫のキャラクターがデカイ顔をしている健康サンダルを身に付けてるときたら、もはやその辺のヤンキーとしか思えない。衣食住ので衣って大事なんだなと思いました。
「可愛いでしょ。お気に入りなんだぁ〜。」
ドヤ顔で手を広げ身体を右左に捻りお気に入りのお洋服を見せてつけてくる。
「いやいやいや、こんなお洒落なカフェにそれはないでしょ。」
「えぇ〜。そうなの?おかしいな。雑誌見て人気があるからって買ったのにな。」
「そんな雑誌捨てちまえ。」
「かわいいかかわいくないかだったらかわいいでしょ。ほらもっと見てみて。」
机に前のめりになり両腕を再び広げる。
てか顔近い。近すぎて服とか見えないし。
「どう?かわいいでしょ?」
服云々より当の本人の顔立ちが整っているので返答に困る。
「まぁ、可愛いんじゃないか…。」
「そっ、そう?ありがと…。」
少しもじもじしながら目をそらされた。
恥ずかしいなら最初から聞かなければ良いのに。
「まあ俺だから良いものの。他の人の前だと絶対にするなよ。クラスメイトとかが見たら多分ドン引きだぞ。」
「えっ…。」
ヨウの顔が少し硬ばった。
「それはちょっとマズいっていうか…。うんマズいよね…。」
「何がだよ。」
「いやぁ、明日クラスのみっちゃん達とショッピングに行く予定なんだぁ。」
「良いことじゃないか。楽しんでこいよ。」
「だからマズイの。」
「いや、だから何が?それ以外の服着て行けば良いじゃないか。」
「…無いの。」
「えっ?」
「私これしか持って無いの…。」
「いやいやいや、さすがに…、えっ、嘘、マジで?。」
「私、修行ばっかだったからあんまりこういうのに興味がなくて。家には制服とコレと戦闘服しかないの。」
お前本当に女子高生かよ…。てか戦闘服って何だよ。
「じゃあ制服で行けば。」
「やだよ!みんなおしゃれしてくるって言ってるのに。私だけ浮きまくりじゃない!」
あーもーめんどくさいなー
かといってこの格好で行ったところで金髪ヤンキーが来たと思われて、斉木さん本当は怖い人なんだとドン引きされる事必至。
せっかくクラスに溶け込めてきているのに台無しじゃないか。
「ねぇ〜、公一〜、どうしよう〜。」
肩を掴まれ前後に思いっきり前後に揺らされる。胃の中の黒い液体が上に戻ってきたり、それがまた戻ったりしてくる。
このままでは拉致があかないどころかラテをぶち撒けてしまいそうである。
こうなったら仕方がない。
「あぁもう!一回お前帰れ!」
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