1-9


「おっはよ。今日はやけに早いね。」


「あぁおはよ。俺んち家いるに馬と鹿が朝からうるさくて目が覚めて眠れなかったんだよ。しかも今日からしばらく駅から歩きになりそうだし慣れてようかと思って。」



「そっか、大変だね。でも、じゃあこれからも一緒に帰れるね!」


このメガネめ、誰のせいだと思ってんだよ。

満面の笑みを向けている彼女は本当に嬉しそうだったし、助けてくれたのは事実なので文句は言わないでおこう。腹いせに姉が冷蔵庫にとっているプリンを一つ残らず食べてやろう。


「はーい、朝礼始めるから席についてください。」


担任の声が教室に響き、騒ついてた教室が静まりかえり、委員長の声とともに朝礼が始まった。

点呼やら、今日の連絡事項やらいつも通りだったのだか。


「えーと、最後に我が校の制服を着た顔をタオルで隠して人を襲う不審者が出たそうです。皆さんも登下校の際は気をつけて下さいね。ちなみに襲われていた方の中から、懸賞金をかけるという話も出ているみたいなので。目撃したらまず私の方に連絡を下さいね。あとそこに似顔絵もありますので顔をよく覚えておくと良いとおもいます。それでは委員長お願いします。」


この銭ゲバ教師め、どれだけ金欲しいんだよ。

それはともかく、


「ねぇねぇ、あの似顔絵昨日の御住君に似てない?」


この歳で指名手配とかやばいんですけど…。というかどちらかというと被害者なのですけど。


「ここよく見てみて。捕まえた方には報酬が支払われますだって。」


「懸賞金3万…。」


「やったじゃん、この人を捕まえたら新しい自転車買えるね。」


前科と引き換えにしては安い自転車だなと考え、自分の席にもどった。



たららら〜んたららら、たんたらたらたん〜、


授業終了のチャイムが鳴り、ただいまからランチタイムである。


「今日もいつもの場所で食べるの?一緒に行こうよ。」


「教室居たくないんだよ。行くなら行くこうぜ。」


鞄に手をかけ、弁当の包みを持って教室から出ようとしたその時、


「おい金獅子!お前がこの学校に居るということは分かっている。大人しく出てきやがれ、このヘタレ野郎!」


外の方から怒号が聞こえてきた。


窓に近づき外を覗くとそこには先日のカラフルレインボーヤンキー軍団が勢揃いで校門の前に立っていた。


「おいおい…。さすがに乗り込んでくるとかやり過ぎだろ。馬鹿なんじゃないの?、まあ関係ないし、ほら飯食いに行くぞ。」


「・・・。」


「おい、聞こえてんのか?。」


俺の問い掛けに返事はなく、メガネは先程から外を覗いた時のまま固まってしまっている。


「いい加減出てきやがれ!さもなくば見境なくここの生徒を血祭りにしてやるからな!。」


外から聞こえてくるその言葉に学校全体がざわついている。「きゃー」だの「誰のせいだよ。」だの「本当に迷惑なんだけど。」だのあたりから幾らでも聞こえてくる。


同時に隣から驚いたかのように息を短く吸いこむ音が聞こえてきた。


「…私のせいだ…。」


「えっ、お前今なんて、っておいどこいくんだよ!」


突然走り出し、教室を飛び出した彼女の目には何か見えたような気がした。

気がつくと俺も教室から飛び出していた。彼女が落とした涙の跡を追って。


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