第14話 脱走にむけて①
食事会が終わり、智貴達は部屋に戻って楽な服装に着替えてから集まった。
そして、智貴の部屋に皆が集まってから結衣と梓が、食事会での事を楽しそうに話しているのを聞きながら、智貴は食事会で気になったことを健司に聞こうと話しかけた。
「健司、お前が気にしてた事って何だったんだ?」
智貴がそう話しかけると、健司は智貴の様子に気付いたようで、
「智貴も何かに気付いたみたいだし、話すよ。ただ、その前に超能力について話すから、ちょっとみんな聞いてくれるか?」
健司が皆にそう声をかけると、やはり皆気になっていたのか健司に意識を向けたのが分かった。
健司もそれを分かったようで、一から話し始めた。
「皆も見たのかは分かんないけど、昨日夢の中で、俺に力を貸しているっていう悪魔と話をしたんだ。その時に居たのは、マモン、強欲の悪魔だって言っていた。それで、少し力の使い方について教えてもらったんだけど、その結果なのか、遠くの音が聞こえるだけじゃなくて、人の心の声っていうのか、考えてることも聴こえるようになったんだ」
「え!? ちょっと待って下さい、それって今も私達の考えてることが聞こえるって事ですか!?」
健司がそこまで話した時、結衣がそう聞いた。
「いや、今は聴いていない。て言うか、聴こえないんだよ。マモンが言うには俺たちの中にいる悪魔は同程度の力を持っているから、相当条件が良くないとお互いに力で干渉できないようになってるらしい。それで、続きを話していいかな?」
そう聞いて、皆とりあえずは安心して、続きを聞く態度になったのを確認したのか、健司は話し出した。
「それで、今日の訓練の時に少し練習をしてたんだけど、その時に色んな声が聞こえたんだ。と言ってもはっきり色々と言ってた訳じゃないんだけど……。簡単に言うと、俺たちに対してあまりいい感情を持ってる人間がいなかったんだよ。これっておかしくないか? 俺たちはこれでも悪魔を倒すため、って呼び出されてる訳だぜ?それなのに、なんで誰もいい感情を持ってないんだ? いや、それならまだいいんだ、それどころか俺たちを蔑んでるような事を誰もが考えてたんだよ。それが強かったのが、特に皇帝達だった、あの家族はほとんどがこっちを奴隷か何かぐらいにしか考えてなかったんだ。それを聞いて、俺はこの国が信じられなくなった、だから情報を渡したくないと思ったんだ」
健司の話を聞いて、皆の反応は様々だった。
結衣や梓は信じられないといった表情をしていて、そんなことを言い始めた健司に疑いの目をしていた。
美咲や竜太、拓也も、信じられないのはその通りなようだが、しかし健司が嘘をつくことも考えられず困惑しているようだった。
そして智貴は、健司の話を聞いて、やはりか、という気分になっていた。自分もあの胸糞悪い光景を見ていて、もしかして、という気持ちもあったからなのだが、健司も同じように不信感を感じることになって、疑念が確信へと変わりつつあった。
「正直、信じられないと思うんだけど、それでも俺はこの国にいるのがあんまり良いとは思えないんだ。だから、出来るだけ早いうちに逃げ出したいと思うんだけど、どう思う?」
話し終えた健司が皆にそう問いかけると、結衣が真っ先に否を唱えた。
「そうは言っても、それってほんとにこの城の心の声だったんですか? それに、実際そういう人たちもいるかも、ってだけで、少数派かもしれないじゃないですか。なら、逃げるようなことしなくていいと思うんですけど」
結衣は城の人で仲良くなった人も多いらしく、その人たちを信じているようでそう反論していた。
「ちょっと、俺の話も聞いてくれないか?」
智貴は、そう話しているのを聞いて、自分の見たことも話すべきだと思った。
そうして、智貴の見たことも話した時、流石に2人も同じようなことを感じていてただの気の所為とは思えなくなったようで、皆黙り込んでしまった。
「信じられないとは思うんだけど、もしかしたら、って考えておいてくれないか? それと健司、ここから逃げ出すのは正直賛成だ、けどもう少し時間を取らないか? ここから逃げたとして、その後のことも考えておかないと、野垂れ死ぬ事になるだろうし、暫くは計画を練る時間が必要だと思うんだ」
「そう、だな……。すまん、ちょっと焦ってたみたいだ」
智貴がそう言うと、健司も少し落ち着いたのか、そう言って謝ってきた。
「とりあえずは、暫く色々と調べる時間をとろう。逃げるにしてもどこに逃げるのか、どうやって逃げるのか、それと、日本への戻り方も調べたいけど……これは最悪、別の国とかに行ってからでもいいかな」
「そうだな……指輪のこともあるから、出来るだけ急いだ方がいいな、目標は1週間で何とかしたい所だな……」
もう皆逃げることには異論はないようで、調べることについて、それから暫く皆で議論していった。
「じゃあ、とりあえずは話した通りで、バレないように気をつけてやっていこう」
今後の話をして、そろそろ解散という所で智貴がそう声をかけた。
皆、とりあえずは納得したようで、最後の方は協力的になっていたので、智貴と健司も一先ずは安心することが出来た。
皆が部屋から出ていって1人になってから、智貴はふらっと倒れそうになって、存外緊張して身体に力が入っていたことに気が付いた。
(やっぱり、信じてくれるか少し不安だったんだな……)
少し苦笑しながら、また倒れそうになる前に今は早く寝てしまおうとベッドへと入り、横になった。
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