第11話 推理

「なあ、皆にちょっと聞きたいことがあるんだけど」


夢にあいつが出てきてから数日、様々な書物を調べたりして、正体を考えていたが、手がかりになりそうなものが無く行き詰っていた智貴は、梓達にも聞いて何か手がかりになるようなものは無いか考えることにした。


「どうしたの?」


「実は、この間倒れてた時のことなんだけど……」


倒れている時に夢? を見たこと、その時に目の前にいたやつのこと、その時話したことなどを皆に話してみた。


「うぅん……俺らはそんな夢は見てないからな……たまに靄見たいのが出てくる夢は見るんだけど」


智貴の話を聞いて、健司がそう言うと他の皆も同じようで、悩み始めていた。


「てか智貴、そんなことは早く話せよ、それって俺らの超能力にも関係あるんじゃねえのか? そいつの話し方から考えると」


「……あ、確かに……それはすまん」


「まあ、良いんだけどよお」


「それにしても、しっかり超能力を使いこなせていないってことは、まだまだ私たちは強くなれるって事よね……」


美咲がそう言うと、皆もそれに気付いたようで、どんな力が手に入るのかと落ち着かない様子になり始めた。

こんな力が欲しい、この力がこうなって欲しい、と話していると、美咲が、


「どんな力が手に入るのかは後でいいでしょ、今は智貴君の夢に出てきた相手を考えるわよ。どうせそいつが何なのか分からないと強化されないんでしょうし」


「そう、ですね……ただあいつは、自分のことを言う時に俺様達、って言ってたので、あいつが力を貸さないだけで、他は分からないですけど……もしかしたら、一人につきあいつらも一人ついてるかもしれないですね」


「そうね……ただ、それなら何故私たちのところには何もないのか分からないけれど……」


「そうですよね……でも、複数いるならそれぞれ性格が違って出てきてないだけかもしれないですね、何かあいつらの興味が引かれることがあったら出てくるような感じなんですかね……俺の場合は、何か馬鹿にしたような感じで出てきましたけど。俺様の力があってあんな奴に苦戦するなんて、って感じで」


「ふぅん……じゃあ、負ければいいのか?」


「いや、それは止めた方がいいぞ、ほんとにそれで出るか分からないし、出なかったら怪我するだけだしなぁ」


「まあ、それもそうか……」


こうして話していて、智貴はふと梓のことが気になった。

他の皆が騒いでる中で、一言も話さずにずっと何かを考えこんでいたからだ。

いつもの梓なら一緒に騒いでいると思っていたので、何か違和感を感じたのだ。


「梓、どうした? なんだかいつもより静かだけど」


「うん……ちょっと考え込んでて……それで、思ったんだけど、そいつらって私たちの中? にいるんだよね……? それなら、そいつらに身体とか心とか乗っ取られたりしないのかなって考えてたら怖くなってきて……それで考えてみたら、たまに普段なら取らない行動取ることが超能力を使うようになってから出てきたなって思ったんだけど……」


「そうか……? そんな変わったことしてるようには感じないんだけど……」


智貴がそう聞き返すと、梓は顔を赤く染めながら、


「……あれから、なんだか性欲が強くなった気がするっていうか……そもそも、私から誘うはずじゃなかったの……あの時はなんだか我慢しきれなくなったけど、それからはなんだかふとした時に、その、そういうこと考えるようになっちゃったって言うか……」


「あ、ああ、なるほど……」


「それで! 他の皆は何かおかしくなったって言うか、変わったなって自分で思うことないかなって思ったんだけど……これが私だけなら、別に私が実はそういう子だったってだけなんだけど、皆何かしら思うことあったら、何か影響されてることあるんじゃないかなって思ったんだけど……」


梓がそう言ったのを聞いて、智貴も含め皆一度自分のことを考え始めた。


そして、智貴には少し思い当たることがあった。


(俺は、あんなに喧嘩っ早い人間だったか……? あいつがイラつく態度だったのは確かだけど、それでもイラつく奴なんて日本でも散々いたのに、なんであの時は最初からあんなに不遜な態度だったんだ……?)


そう考えながら周りを見渡していると、他の皆も何か心当たりがあったようで、考え込んでいた。


「なあ、皆も何か心当たりあるみたいだし、ちょっと話さないか? もしかしたら何かヒントがあるかもしれないし」


智貴がそう言うと、皆も否は無いようだったので、智貴から話し始めた。

そして智貴が話し終えてから、次に竜太が話し始めた。


「俺、もともと運動部だし身体もデカいから食欲はある方だと思ってたんだけど、こっちに来てからもっと食うようになったんだよな……訓練とかもあったから、そういうものかな、って思ってたけど、よくよく考えてみたら、皆はそんなに食べてないよな?」


「そうですね……いつも竜太さんが食べてるの見て、よくあんなに食べられるなあって思ってましたね……」


「そうだよなあ、よく考えてみるとおかしいよな……そういう拓也はどうなんだよ?」


「僕ですか? 僕は……気の所為かもしれないですけど、なんだか前よりも睡眠時間が伸びたって言うか……いつも眠いわけじゃないけど、いつも寝たいって思うんですよね。訓練で疲れてるのかと思ってたけど、それなら眠くなるはずなのに、眠くはならないけど、寝たいって、おかしくないですか?」


「確かに……」


「……あっ」


そう智貴たちが話していると、健司が何かに気付いたようで、いきなり声をあげた。


「健司、どうかしたのか? いきなり声をあげて」


「いや、竜太さんとか拓也の話とか俺らのこと考えててちょっと思ったんだけど、なんだかアレに似てないかな、と思って」


「アレ?」


「あの、あれだよ、七つの大罪だっけ。俺らも七人で、確か大罪の中の暴食とか怠惰とか、まさに竜太さんと拓也の状況にそっくりじゃないか?」


「確かに……いや、でもあれって地球での話じゃないのか? 同じ様なものはあるかもしれないけど、そのままのやつがあるのか……?」


健司の話を聞いて、地球での話が出てくるのかと不思議に思った智貴だったが、しかし腑に落ちる部分もあった。

それを踏まえて考えてみると、確かにその通りかもしれないと思えてきて、謎は増えたが進展があったことに少し気が楽になってきた。

それからまた少し皆で考えながら、夜も更けてきたので、それぞれの部屋に戻ってその日は寝ることになった。


(明日はこっちの世界にも七つの大罪が存在するのかを調べよう……)


智貴も、そんなことを考えながら眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る