第7話 ルーカスとの出会い

「それじゃあ、超能力を使えるように訓練していくんだけど、とりあえずは全員同じことをしてもらうわ。危ないことにならないように、安全な奴からやってくわよ」


 リリーはそう言って、横並びに智貴たちを立たせると、何をしていくのか話し始めた。


「とりあえず、安全な順に試していくから、出来たと思ったら教えて頂戴。超能力が重複したり、同じ超能力を複数人が持つことは無いから、だれか一人でも出来るようになったら、その訓練は終わりにして次の訓練にいくから」


「まずは、千里眼から始めるわよ。これは、気力の呼び水にするために、魔力を目のあたりに集めて、目を活性化させてみて。活性化出来たら、魔力をゆっくりと霧散させて元の状態に戻すの。もし千里眼が使えるなら、その時に目に違和感を感じると思うから、少し遠くを見るような感覚で遠くを眺めてみて」


 リリーにそう言われて、言われたとおりに魔力を操作をしていると、智貴は何か、目に魔力以外の物が集まってくる感覚を感じた。

 そのまま、遠くを眺めようと思って目を壁の上に向けると、急に目の前が青一色になった。


「うわっ!?」


 つい声を出してしまったが、そんなことを気にする余裕もなく目を瞑った。

 それでも視界は青いままで、しばらく瞬きをしていると、ようやく視界に青以外の色が飛び込んできた。

 その色を見て、あることに思い至り、空を見上げると、思っていた通りの光景がそこにあった。

 そこで、ようやく智貴はこれが千里眼であると理解し、そのまま視界を動かしてみた。

 すると、面白いことに視界は目を動かさなくても自由に動かせるようで、いろいろと見ていた。


 智貴の行動を見て、リリーは千里眼は智貴が発動させたのだろう、と理解したのだろう、千里眼の訓練をやめさせて、次の訓練に移り始めた。

 智貴に対しては、そのまま訓練をしているように告げて。


 そのまま、智貴は千里眼を自由に扱えるように訓練していると、他の皆もそれぞれの超能力を発現出来たようで、1度全員が集められた。


「全員、超能力を使えるようになったから言っておくけど、魔法にも言えることだけれど、使い方を間違えないように。違法行為や破壊活動に使って迷惑かけるようなことはしないで頂戴」


 そう言ってリリーは智貴たちの顔を見て回ると、


「それじゃあ、今日の訓練はおしまい、初めて気力を使ったりで消耗してるでしょうから、しっかりご飯を食べてぐっすり寝なさい。明日からは私の訓練も本格的になるから、今のうちにゆっくりしておくのよ」


 智貴たちにそう伝えて、リリーは訓練場を後にした。

 智貴たちも今日の訓練が終わったので、部屋に戻り、休むことにした。



 部屋に戻り、智貴は休もうと思ったが、リリーに明日からはもっと訓練が激しくなると言われていたことを思い出し、図書館に行くことにした。

 今日を逃したら、きっと明日からは訓練で疲れていて勉強する余裕もなくなると考えたからだった。

 思い立ったのだから、すぐに行こうと部屋を出て、図書館へと向かうことにした。



 ……そして十分後、智貴は城内で迷っていた。


「この城、広すぎるだろ……道も分かりづらいし、似たような壁ばっかだったから、部屋に戻る道も分かんねえ……」


 そうぼやきながら、誰か人に会えないかとさまよっていると、後ろから声をかけられた。


「こんなところで何をしてるんだい?」


 声のした方を向くと、そこには智貴と同じくらいの背丈の、見るからに高級そうな服を身にまとった男がいた。


「すみません、図書館に行こうと思ってたのですが、道に迷ってしまって……もしよければ、道を教えてもらえませんか?」


「その前に、君は誰だい? この城で働いている人間ではないようだけど……もしかして、異世界から召喚したっていう勇者かな?」


「あ、自己紹介していなかったですね。そうです、西城智貴と言います。えっと……すみません、どちら様でしょうか?」


 見るからに位の高そうな服に雰囲気、もしかして、とは思ったが、自己紹介されたわけでもないので、誰か分からず、智貴が尋ねると、男は微笑みながら、


「ああ、そうだね、挨拶もしていなかったね。僕はこの国の第三皇子の、ルーカス・エル・ユダリオンだ。君らを召喚した第二皇女の双子の兄だよ」


 そう言われてみてみると、召喚されたときに見た女の子と似ていた。


「すみません! 皇子様とは知らず……無知なもので作法なども知らず、無礼な態度をお許し下さい」


 そう言って頭を下げると、ルーカスは笑いながら、


「気にすることは無いよ、皇子とはいえ、第三皇子だからそこまで偉いわけじゃない、これが兄上たちだったらまた違うだろうけどね。それに勇者様については、僕ら皇族と同等の扱いでいいと皇帝陛下が周知させていたから、友人のように接してくれて構わないよ。……と言っても、皇帝陛下にはさすがに礼を尽くしてもらうけどね」

「それで、図書館に行くんだっけ? それなら、僕もちょうど図書館に用があったからついでに案内するよ、ついてきて」


 ルーカスはそういうと、歩き始めたので、智貴はついていった。



 道中、ルーカスに普通に話して欲しい、敬語はいらない、名前もルーカスと呼んで欲しいと言われた。

 さすがに皇子に対してどうなのかとも思ったが、本人がそう言っているのだから、いいか、と楽に話すようになった。


「ところで、智貴は何故図書館に行こうとしていたんだい? 言っちゃなんだが、面白いところでもなんでもないよ?」


「ああ、それはまだ俺が、というより俺たちがこの世界について全然知らないからだよ。訓練はしているけど、まだこの国についても、世界についても何も、慣習とか、歴史とか何も知らない。だから、少しでも知っておこうかと思ってな。あとは、戦うことになる相手のことも調べられるなら調べたい。」


「へえ、意外と勉強熱心なんだね、僕なんか皇族としての勉強はしてるけど、皇子だから仕方なくやってるだけで、積極的にしたいとは思わないのに」


「俺も別に勉強が好きなわけじゃないけどさ……知らないことで何か不利益が出たりするのは嫌なんだよ、さすがにまだこの若さで死にたくも無いし、それに死なせたくないやつもいるしな」


 ルーカスとそんな話をしていると、いつの間にか図書館についたようで、目の前には大きな扉があった。


「さあ、ここが図書館だよ、蔵書量はどこの国にも負けていないと思うから、大概のことはここで調べられるよ。」


「ありがとう、ルーカス。正直、あのまま道に迷って帰れるかも分からなかったから、凄く助かったよ」


「気にしなくていいよ、その代わりと言ってはあれだけど、また時間がある時にでも話そうよ、君とは仲良く出来そうだし、異世界の話とかも聞きたいしね」


「こちらこそ、こっちの世界の話とか聞きたいし、また話そう」


「よし、じゃあ、また時間が出来たら話をしに行くよ。それじゃあまた会おう」


 ルーカスはそう言って、どこかへと行ってしまった。


「さて、それじゃあ俺もこの世界について勉強するか……」


 それから、寝る時間まで智貴は図書館で色々な書物を漁っては読んでいった。

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