終
『あっ!グラースちゃん!おはよー!』
その元気な声の先に振り向くと髪を
肩まで伸ばした女性が手を振りながら
こちらに笑顔を向けていた。
『お、おはようございます。ハナビさん。』
今日も綺麗だなハナビさん。
つい見惚れてしまう。
『グラースちゃんもすっかり川で洗濯するように
なったよね。』
『は、はい。そ、その…楽しいので。』
『あー、わかる!お日様の光を浴びながら冷たい川の水で
洗濯するのってなんだか自然を感じてるって思えて楽しいよね!』
『あ、あのそれもそうなんですけど…。』
(私はハナビさんと話せるのが一番楽しいんです。)
という言葉は残念ながら首から先には出なかった。
『それに、毎回グラースちゃんとお話しできるから、
毎朝しあわせだよー。』
『あぅ…。いつもいつもずるいです。ハナビさん。』
(あぅ…。いつもいつもずるいです。ハナビさん。)
『ずるい?』
ハナビさんが少し屈んで私の顔を覗き込んでくる。
『い、いえ!なんでもないです!』
(もう!なんで今日は聞こえてるんですか!)
『そ、そう。
あ!ところでグラースちゃん。今日ウチでお昼食べない?』
『い、いいんですか?』
(やったぁ。ハナビさんとお昼ご飯だー。)
『もちろんだよー。じゃ、洗濯物乾いたら行こっか!』
『は、はい!』
そして洗濯が終り、ハナビさんのお家へ。
『ただいまー。』
『お、お邪魔します。』
(もう、何回も来てるけど。全然慣れない…。)
『すぐ作るから、椅子に掛けて待っててね。』
『は、はい。』
ハナビさんがエプロンをつけて料理している。
(何度見てもハナビさんのエプロン姿は破壊力
抜群だなぁ。)
『はい!グラースちゃんお待たせー!お熱い内に召し上がれ!』
『あ、ありがとうございます!』
料理からは湯気と共に香ばしい匂いが漂ってくる。
(美味しそう。)
息で冷ましてから一口食べてみる。
(とっても美味しかった。)
するとハナビさんがこちらを見ている
事に気付いた。
『ど、どう?』
『とっても美味しいです!』
『良かったぁー。実は今の料理あんまり作った事なかったから
ちょっと不安だったんだよね。』
『そ、そうなんですか?全然そんな風に感じませんでした。
本当に美味しかったです。』
『ふふふ!そう言ってくれてとっても嬉しいよ!』
(こういう無邪気なところは本当に可愛いな。)
『さーってともうひと頑張りだー!』
『もうひと頑張りって…。今日何かあるんですか?』
『ん?あ、そっか。そういえばグラースちゃんにいうの忘れてた。
今日はシズとシオンが帰って来るんだよ。』
『えぇ!?そうなんですか!?』
『うん。昨日手紙が届いてね。
これが届いた次の日くらいには着くって書いてあったから。
多分ね。』
『へぇ。で、でもなんだか凄く久しぶりですよね。』
『そうだねー。もう一年経つのかな。
最初はびっくりしたよ!
二人して元気になったら旅に出るとか言い出して。』
『確か、シズさんが料理修行の旅でシオンさんが悪鬼滅殺の旅、
でしたっけ。』
『そうそう。なんかシズは命の危機に瀕してから、吹っ切れたみたいで、
どうせなら自分がやりたかった事をやろうって思っての事だって言ってたよ。
シオンの方はもともとそのために世界を放浪してたんだって。
で、治療を受けている期間に一緒に旅をする方向に決まったらしいよ。』
『な、なるほど。でも何はともあれ嬉しいですね。
帰ってきてくれて。』
『うん!これからまた、賑やかになるね!』
その時のハナビさんの笑顔は、
カッコよくて、綺麗で、可愛くて。
今まで私が見てきた中で最高の笑顔でした。
パナシア 赤星 @antanium
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