血晶病
どうしてこんな事になったの。
目の前には妹が村の治療室用寝具で横になって眠っていた。
皮膚は所々が血のように赤く染まっている。
シオンちゃんと会った日から、1週間が経った次の朝。
食器の割れる音で目を覚ました私は
台所で倒れているシズを発見した。
『シズ!シズ!』
私はシズを担ぎ急いで村のお医者さんのところまで駆け込んだ。
すぐに診察が始まって検査の結果が出たのは一時間後だった。
病名は血晶病。この地に伝わる古い風土病で
体のあちこちが真っ赤に染まっていき、やがて死に至るらしい。
最後に症状が確認されたのが古すぎるため、治療法がわからない
とお医者さんは言っていた。
『うう。シズぅ。なんでシズが…。』
『あ、あの。ハナビさん。』
『シズぅ。シズぅ…。』
『あ、あの!ハナビさん!』
『うわぁ!…あ、グラースちゃん。
もしかしてお見舞いに来てくれたの?』
『あ、はい。それもあります。
あ、あの、ハナビさん。辛いのはわかりますけど
休まれた方が良いと思います。
すごいひどいお顔してます。』
『そう?でももうどうでも良いんだ。
だってこのままシズが死んだら
私一人ぼっちだし。
それなら一緒に逝った方がマシでしょ?』
『そ、そんな事言わないでください!
もし、ハナビさんが死んじゃったら私、
悲しいです…。
それに、シオンさんだって同じ事を
言うと思います。
あ、あと治療法が分かったので
シズさんは絶対に死なせません!』
『グラースちゃん…。
そんな風に思ってくれるなんて、私とっても
嬉しいよ。ありがとね…。
って…え?
今なんて?』
『え、えっともし、ハナビさんが。』
『そこじゃなくて最後のところ。』
『えっと、治療法が分かったので
シズさんは絶対に死なせません!』
『それ、ほんと…?』
『は、はい…!』
治療法が見つかった。
シズが死なない。
私の中でこの二つの言葉が何度も何度も
反芻する。
『あ、あのハナビさん…?』
『………。』
『も、もしもーし。ハナビさん。』
『グラースちゃん!!!』
『ひゃい!な、何ですかハナビさん。』
『治療法教えてぇー!』
『は、はいー!』
グラースちゃんが言うにはパナシアと呼ばれる花があれば
血晶病の症状を中和できるらしい。
シズが倒れてから父親の部屋にこの病気のことが
書いてある資料がないか探していたが二日かけて
やっと見つけることができたと言っていた。
『そっか。じゃあ、パナシアっていう花を取りに行けば良いん
だね。』
『は、はい。それに私は実物を見たことがあるので
間違えることはないと、思います。でも…。』
『取れる場所が幽界の森っていう獣の出る危険な森なんだよね。』
『はい…。』
『心配しないで。ここまでしてもらったんだからもう十分。
無理について来て、なんて言わないよ。』
私の言葉を聞いた
グラースちゃんは少し思いつめたような難しい顔になった。
きっと責任感や、恐怖心を感じて迷っているんだろう。
本当に優しくて良い子だ。
『あ、あの私。私も、一緒に行きます!』
『え?でも…。』
『お願いします!付いて行きたいんです!』
本気の目だ。
グラースちゃん。
シズのためにそこまで。
……。
『…分かった。でも危なくなったら私を置いてでも絶対に逃げるんだよ。
良いね。』
『は、はい!』
『その話拙者も乗ろう。』
後ろの方から声がした。
振り向くとそこには
短めの髪を後ろで一つ結びにした
女の子が笠と呼ばれる帽子を
被って立っていた。
『拙者はテン・シオン。
用心棒を生業とする流浪者。
ハナビとシズに受けた一飯の恩。
ここで返上させていただく。』
『シオンちゃん…!ありがとう!』
こうして私たちは三人で幽界の森へ
行くこととなった。
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