SRパーティーに追放された俺は女神の加護『限界突破』でSSSRランクに覚醒し、神をも超える

最後の戦い Ⅱ

「イリス、リア二名は老衰死」

　神が後ろの二人を指さす。余裕を捨てて勝ちにいったのだろう、俺ですら神の魔法には支援をもらってぎりぎり耐えられたぐらいなのだから、ランクが低い二人では確実に死んでしまう。

　そして二人が倒れれば俺一人で神に勝つことはほぼ不可能だった。

「ごめん、もう無理だから使うね」

「おう」

　俺たちは秘めていた切り札を切らされる形になった。

　リアは持っていた短剣をイリスの首筋に突き付けて概念魔法を行使する。

「セレスティア教会を代償に魔法発動！　神の全魔力を無力化！」

　話は決戦の数日前に遡る。

　俺がイリスの部屋に入ると、彼女は目隠しした神官に大量に同じ文書を魔法で複製させていた。複製の魔法はあまり使える者はないが、国や教会といった大きな組織では情報伝達のために抱えていることが多い。

「何をしているんだ？」

「ここでは彼がいるので口には出せませんが、とある機密文書を大量に複製しています」

　俺はその中の一枚を手に取ってみる。

『神とカタストロフについて』

　そして文書には神がカタストロフを実施しようとしていることが詳細に論証されていた。しれっと俺も知らない証拠(多分捏造)がいくつか含まれているが、何も知らない神官がイリスが配布したこの文書を見ればカタストロフを信じるだろう。

　文書の最後は以下の文章で締めくくられていた。

“結局、いくら私たちが信仰しても神様は私たちを駒としか見ていません。という訳で教会は現時点をもって解散します。とはいえ私にその権限はないので、この文書を読んだ皆さんが信者をやめることを勧めるに過ぎませんが。個人的に信仰を続けることは止めません　イリス”

「信仰というのは紙一枚で揺らぐものなのか？　俺はこの世界には詳しくないが」

　俺はイリスの意図を理解した。イリスはこの教会に対する生殺与奪の権を握ることで、教会をも概念魔法による代償にすることを可能にしようとしたのだろう。

　俺は目隠しした神官がいる前で思わず口にしてしまう。

「違いますよ。私が欲しいのは教会という組織の喉元に突き付けたナイフです。信仰があることと教会が存続することは別問題で、私は皆さんが勝手に信仰を続けようと知ったことではありません」

　この文書をばらまければ教会は崩壊する。もしかしたらイリスはすでに神が怪しい、という不穏な情報を教会内に流しているのかもしれない。教会を捨てて神を倒すとは、相変わらず恐ろしいことを考える奴だ。

　リアの宣言とともに神は不思議な光に包まれた。リアによるとセレスティア教会のレアリティはLR級らしい。イリスの文書が教会を完全壊滅させるに足るものではないと考えれば一段階差し引いてSSSR級の代償と同等と言えるだろうか。

「何だと……予の力が……」

　さすがの神も、SSSR級の代償を使って行使された概念魔法を受けてはただではすまなかったらしく、魔法は結局発動しなかった。

　神にとって想定外だったのか、自分の手を見つめて呆然としている。

「長くはもたないと思うから、この隙に決めて！」

　後ろからリアの声が飛び、俺は間髪入れずに追撃を行う。

「メテオストライク！」

「その程度、魔法なしで止めてくれるわ！」

　神はそれでも負けるとは思わなかったのだろう、天に向かって拳を突きあげる。そしてそのまま空間停止に巻き込まれた。

　そして。

　降ってきたメテオストライクは神の拳に当たって粉々に砕け散った。神の周囲に砕け散った星の粒子に漂ってきらきらと輝く。その光景は幻想的ですらあった。

「よくも予が苦心して作り上げた教会を勝手に破壊しおって……」

　空間停止が解けると、神は怒りに燃えていた。メテオストライクの直撃を受けたところで、一発ではびくともしないらしい。

「素直にその娘を代償に捧げれば良かったものを」

「いえ、あなたが苦心して作り上げた教会は私よりレアリティが高くて助かっていますよ」

　イリスは挑発的に笑う。神は煽り耐性が低いのか、苦戦させられていることが悔しいのか、そんな彼女の態度に憤慨した。

「小癪な！」

　神はその場に落ちている瓦礫をいくつも投げつけてくる。目にも留まらぬ速さで飛んでくる瓦礫が次々と俺に命中して激痛が走るが、俺の防御力の前に瓦礫の方が砕けていく。

　埒が明かないと見た神は、折れた剣を拾うとこちらに走ってくる。

「メテオストライク！」

　LRになって魔法の使用回数が増えた俺はメテオを連打する。俺を突きさそうと岩を構えていた神は頭上の防御は当然お留守だった。

ドオオオオオオオオオオオン！

　轟音を立ててメテオが着弾し、俺は爆風に身を任せるようにして神から距離をとる。

「闇の矢、五連射！」

　リアはまとめて聖遺物を五つ消し潰して唱える。たちまち神の周囲に黒い矢が五本出現する。

「神の加護」

　イリスが闇の矢に加護をかける。

「小癪な」

「ディメンジョン・ソード」

　迎撃しようとする神、同時に攻撃魔法を放つ俺。放たれる闇の矢。

　五本の矢が一斉に神に迫る。神は持っている折れた剣を振り回して矢を三本まで叩き落とす。同時に飛んできた矢を三本撃墜しただけですごいのだが、残りの二本が神に突き刺さる。さらにどさくさに紛れて放ったディメンジョン・ソードも神の体にぶつかる。ここに来て神は蜂の巣になった。