第7話 ビアンカと空のデート

 監視付きでの外出が許可されたので巨乳侍女に誘惑されることも無くなるだろうしよかった。俺は護衛兼監視のビアンカと魔法訓練場に向かっている。

「殿下は何の魔法の練習をするのですか?」

「実は空を飛んでみたいと思っている」

「はぁ、そのような事ができるのですか?私はそんな魔法は聞いたことありません」

「浮くところまでは部屋で成功しているんだが制御が難しくて天井に頭を強打してしまったよ。ははは」


 おしゃべりしていたら訓練場に着いた。魔法訓練場は被害を気にせず的や岩に魔法を撃ちこむことができる物騒な場所だ。とりあえず反重力で浮くところまでをやってみた。

「おお、殿下が浮いていますね。凄いです!これはどうやって浮いているのです?」

「うーん、これは俺の固有魔法が無いとできないから聞かれても教えていいのかわからないから言わない」

 俺がふよふよと浮いているのをビアンカが不思議そうに見ている。


 前回の失敗は反重力で完全に無重力になってしまったので風魔法で吹っ飛びやすかったのだと思う。だから今回は反重力を弱めて風魔法を強めでいこうと思う。

「よっ!とっ!はっ!ぐぇっ!」

 ダメだ、きりもみ回転して墜落してしまった。

「殿下!大丈夫ですか?!頭から墜ちたように見えましたが」

「大丈夫だ、俺は物理攻撃無効だから」

「はぁ」

 格好悪いところを見られてしまった。風じゃなくて魔力操作で魔力を全方向に放出すれば安定するかな?創造魔法のスキルがあるから何でもありだ。

「おっ、これは某格闘マンガみたいでいいな!何だ空飛ぶの簡単じゃないか!オッス!オラ、クラウス!」

 前世で某マンガのアニメを見ていたおかげかこの方法だとすんなり飛べた。

「わぁ……殿下お見事です!安定して飛べていますね!」

 ビアンカが俺の動きを目で追っている。俺は手を振ってみた。するとビアンカもこちらに手を振り返した。可愛い護衛だ。

「ビアンカ!空飛べたぞ!」

 俺は着地して嬉しさのあまり勢いでビアンカとワルツを踊った。ビアンカも興奮していたようでノリノリだった。


「殿下、恐縮なんですが、私も一緒に飛べたりできませんか?殿下と空中でダンスを踊れたら素敵だなと思ってしまいまして」

 護衛にしては可愛いアイデアだな。反重力でビアンカも軽くすればいいんかな。その状態で俺とビアンカが手繋いで踊ればいいな。

「よし、ビアンカ。今から魔法をかけてみるぞ」

「わっ!私が軽い!浮いてる!殿下、私の手を離さないでくださいね」

 俺とビアンカは手を繋いでゆっくりと円を描くように浮上していった。

「わぁ……ちょっと高くて怖いですので殿下にしがみついてもいいですか?」

 了承すると、ビアンカは俺の首に手を回してお姫様だっこの状態になった。随分と積極的な子だなと思ったけど。高所恐怖症なだけかもしれない。

「じゃあこのまま5階の俺の部屋の窓から帰るぞ」

 ビアンカは下を見るのが嫌なのか俺の顔を見つめて首肯した。


「ははは、ビアンカ、どうだった?空の旅は」

 俺とビアンカは窓から俺の部屋に帰ってきた。

「殿下、私は夢を見ているみたいでした。剣ばかり振ってた私にもこんなロマンチックな青春が一瞬でもあるなんて、最高でした」

 よかった、喜んでもらえたようだ。あれ?ビアンカが俺の首から離れない。

「クラウス殿下、お慕いしております。もし出奔するのなら私も連れて行ってくださいね」

「えっ?」

 ビアンカはそう言うと、護衛兼監視にも関わらず顔を赤らめながら部屋から出て行ってしまった。出奔に付いてくるということは監視……なのかなぁ?どっちなんだろう……。でもすごくドキドキした。




☆アストリッド視点☆

 私とロッテは現在馬車に乗っている。今日はテオドール殿下との婚約の挨拶に王宮に行く予定だ。もちろん政略結婚だ。テオドール殿下は第二王子で新しい王太子で13歳だ。ちなみに私と侍女のロッテは15歳。

「テオドール殿下ってどういう方なのかしら?見た目が天使みたいなのは知ってるけど」

 王家は全員見た目は良いのよね。

「やはり2つも歳が離れると年相応に子供なのではないでしょうか?クラウス殿下がちょっと変わっているだけで」

 ロッテの予想がたぶん正しいのだろう。だがロッテのクラウスへの評価の高さが気になる。

「ロッテはクラウスの事が好きみたいだけど何で?」

「クラウス殿下はお嬢様の度重なる理不尽な対応にも全く動じないし女性に優しいし私が淹れた紅茶を綺麗に飲み干しますし大人の男性なのかなと思うぐらい落ち着いてますし何より顔が私の好みですね。それに近寄るといい匂いがしますし、たぶん私とクラウス殿下の相性抜群だと思うんですよね」

「へ、へぇ?ああそう……」

 女性に優しいのはいいんだけどただのヘタレで女にだらしないとなぁなぁになって事実婚という私にとっての地獄を生み出す可能性があるから嫌なのよね。夢見ているロッテの前では言わないけど。

 そんなこんなで王宮の前に着いた。


「……ん?あれは何ですか?人が!空を飛んでいます!」

「えっ?本当だ!」

 ロッテが謎の飛行物体を見つけたと思ったら人だった。何で人が空を飛んでいるの?

「あれは……クラウス殿下と護衛のビアンカですね。二人が抱き合っています!空中で!何でクラウス殿下とビアンカが抱き合っているの?」

 ロッテは目が良いのか空中の人物を識別できたようだ。クラウスと護衛のビアンカが空中で抱き合っている?何で?

「あっ、抱き合いながら窓から部屋に入っていきました!」

 ……クラウスって空が飛べて人も運べるの?すごいけど何で私に言ってくれなかったのかしら。少し悲しいわね。仲が良い人にしか教えないのかしら。あっ、つまりクラウスとビアンカは……。


「ビアンカってクラウス殿下の護衛から恋人にクラスチェンジしたんでしょうか。あーあ、私もクラウス殿下と一緒にいられたらチャンスがあったかもしれないのに」

「……行っていいわよ?ロッテが私の侍女を辞めるの私は止めないわよ?」

「……いいえ!私はお嬢様のお付きの侍女なのです!クラウス殿下のことは諦めます!」

「行けると思ったらいつでも行っていいのよ?私は応援してるわよ?」

「え?……じゃあお言葉に甘えて行けると思ったら行きます」


 なんかもう疲れた。帰りたい。

「……今日は気分が優れないから帰ろうかしら。テオドール殿下には悪いけど」

 私達は帰ることを伝えてから帰った。

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