第4話 うろおぼえ学院長

 俺とビアンカとミリアムは学院長室にお呼ばれしている。王太子の俺が事件のほぼ中心にいたので学院長もやや緊張気味である。


「それで、あそこで一体何があったのですか?」

 学院長は美人のエルフで年齢は不詳だ。彼女はユリア・フォン・ドール伯爵でずっと独身で子もいないがいつからいるのか誰も知らない歴史上の人物であるが存命中で謎の多い人物である。

「なんか私の友達が急におかしくなっちゃったの!」

 ミリアム男爵令嬢が嘘なのか天然なのか判別しづらい回答をした。俺はなんと答えるべきだろうか。ここは敢えて本当のことを言ってしまおうか……?


「周囲の生徒もそのような証言をしていましたね。さてクラウス王太子殿下も同じ証言でしょうか?」

「俺は彼らにディスペルを使いました」

「ディスペル?つまり彼らは解呪されておかしくなったということですか?」

「いいえ、一旦は正気に戻ったのですがこちらのミリアムさんが魅了魔法をかけてさらに俺がまたディスペルをかけました。そこでまた正気に戻って自害と言い出したので拘束しました」

「魅了魔法?なんか最近聞いたそんな話を聞いたような……。ミリアムさん、それは本当ですか?」


「えっ?な、何それ。私知らないよ?」

 異議あり!と言いたいところだが天然の可能性もあるからここは冷静に証拠品を提示しよう。

「ステータスオープン!」

「はっ?」「えっ?」

 半透明の板を出現させて今日のログを表示させる。

「ここを見て下さい。<魅了魔法をレジストしました>とあるでしょう?あの場でミリアムさんは俺にも魅了魔法をかけているんです」

「ええ?この魔法は一体なんですか?」

「……」

 学院長は見たことない固有魔法をいまいち把握しきれてないようだ。ミリアムは黙り込んでしまっていた。少なくとも魅了魔法が俺に効いていないのと俺にバレてるのがわかってもらえたのかもしれない。ここはハッタリでごり押してみようか。


「今、王家では魅了魔法を俺に使ったミリアムさんの処遇をどうしようかで揉めています。王太子や有力貴族の子息を籠絡して国家転覆を狙っているのではないかとか。つまり王家には報告済みです。揉めているというのは俺が穏便に対処したいと言っているからです。つまり俺はアリシアさんを救いたいんですよ。キリッ」

 嘘をつきました。王家はほぼ無関心です。

「そ、そういえば私もアストリッドさんから報告を受けていたのを思い出したわ!クラウス殿下が魅了魔法をレジストしたとかアストリッドさん言ってた!」

 おお、学院長のうろ覚えが炸裂した。学院長が急にミリアムに疑惑の眼差しを浴びせるとミリアムは学院長の豹変ぶりに怯えはじめた。


「そんな……みんな私の魅了魔法のこと知ってたの?私、国家転覆なんて……考えたことも無かった。ただイケメンの友達が欲しかったの。ううっ……」

 ミリアムがぽろぽろと涙を流し始めた。逆ハーしたかっただけで魅了魔法はちょっと大迷惑だからこれからは止めて欲しいわ。

「今後二度と魅了魔法を使わないという旨を、この魔道具の誓約書に書いてくれれば王家はミリアムさんを処罰しない。ただしミリアムさんの魅了魔法は封印される。」

「私、許されるの?……でもこの魔法が無いと私友達ができないの」

 俺は学院長を睨んだ。すると学院長は何かを察したようで。

「私が友達になりますよ!」

「え?でも学院長はイケメンじゃないし」

 あっ、学院長は女だった。じゃあ俺しかいないじゃん。

「じゃあ俺が友達になるよ!」

「わかりました!すぐ誓約書を書きます!」





 そんなこんなで王族用のラウンジである。

「というわけでミリアムさんが友達になりました」

「よろしくお願いします!」

 ニッコニコのミリアムがアストリッドにカーテシーをキメた。

「……はぁ?何であんたら2人が仲良くなってんのよ!」

 アストリッドがぶち切れている。……俺何か間違ったんかな?

「魅了魔法を封印できたし誰も処罰しなくて済んだんだぞ。喜ぶべきことじゃないか」

「この女は私を王太子妃から追い落とそうとしたのよ?クラウスが私よりその女がいいって言うのなら私にも考えがあるわ!あんたなんか婚約破棄よ!ロッテ!行くわよ!」

「ええ……?」

 アストリッドはロッテさんを連れて出て行ってしまった。

「事件は終わりましたが、私は引き続き殿下を護衛しますね」

「私も友達のクラウス君を放っておけないし!」

 ビアンカとミリアムは一緒にいてくれるらしい。



 その後、俺は王妃ことカーチャンに呼び出された。

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