第2話 婚約者とお茶
それから俺とアストリッドとアストリッドの侍女の3人でいることが多くなった。あれから魅了魔法で攻撃されることもなく平和だ。今は昼休みに学園内の王族用ラウンジで優雅に紅茶を飲んでいるのだ。
「アストリッドの侍女って何て名前なの?」
「殿下、私はロッテ・フォン・クラオカ子爵令嬢でございます」
クラオカ?倉岡?まぁいいか。
「へぇロッテさんも貴族なんだね」
「クラウス、私のロッテを口説いちゃダメよ。その顔で迫られたら大体の女はイチコロだから」
なんというか顔のこと褒められてもあまり嬉しくないのが転生者のサガだな。
「アストリッドは俺に惚れてたりしないの?」
「うーん、クラウスは顔はいいんだけど…負け犬の目をしているのよね。正直言ってそこを直してくれれば惚れてあげてもいいわ」
それは前世の影響というか呪いみたいなものだから直すのは難しいな。むしろそこが俺の本体だし。
「負け犬の目かぁ…そんなこと言われたのはアストリッドが初めてだな。ハハハハ」
「そういうところよ。酷いこと言われたんだから怒るべきでしょ。なのにハハハとか言って昔から良い子ぶってて馬鹿じゃないの?」
「ちょっ、アストリッド様…」
ロッテさんがドン引きするぐらいの不敬だ。何でそこまで言われなきゃいけないんだ?とは思うけどこの一歩引いた感じの身に染みついている処世術は婚約者にとっては失礼なのかもしれないな?まあでも何て返したらいいのかわからないぞ。
「………」
「ああクラウスごめんね?ちょっと言い過ぎちゃったわ」
そんなこんなでいちゃいちゃしていた丁度そのとき。
<魅了魔法をレジストしました>
「王太子殿下を負け犬だなんて、なんて酷い女なんでしょう!クラウス様が可哀想!」
昨日タックルしてきた女が王族用のラウンジに入ってきてそう言い放った。ええっと、ということは魅了魔法はこの女から発せられたということでファイナルアンサーだな。アストリッドとロッテさんは俺の方を見ている。俺が対処しろということか。
「えーと…やぁ、子猫ちゃんは迷子かな?ここは王族用のラウンジだから勝手に入って来ないでね」
アストリッドが俺を睨んでいる。何か間違ったか?
「…子猫ちゃん?私は子猫ちゃんじゃなくてミリアム・フォン・シュットラー男爵令嬢です!」
はぁミリアムちゃんね。いやそうじゃなくて入って来ないでねの部分に反応してくれよ。
「ミリアム様?殿下が入って来るなとおっしゃったのが聞こえなかったのでしょうか?ロッテ、その女をつまみ出しなさい」
おお流石アストリッド、おっかねぇ。あっアストリッドが俺を超睨んでる。
「離して!私はクラウス殿下に話があるの!」
ミリアムちゃんはロッテさんによってラウンジから追い出された。鍵も閉めた。これは俺にも護衛か取り巻きがいないとダメかな?アストリッドとロッテさんに頼るのはおかしいしな。
「クラウス、あなたがちゃんと出て行けと言わないから食い下がってきたのよ!」
「ああゴメン。俺が全面的に悪いと思う。トラブル回避のために俺にもロッテさんみたいな護衛がいた方がいいと思ったよ」
「そうね。不敬罪をちらつかせるような理不尽な存在がクラウスには必要よ!」
そんなヤバそうな奴いたかな…あっそうそう。
「アストリッド、さっき魅了魔法レジストした」
「あっ、ということは先程のミリアムさんが魅了魔法の発生源ということでファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー」
「じゃあミリアムさんがクラウスを狙ってるってことね。これは王家への反逆になっちゃう可能性があるけどクラウスはどうしたいの?」
「困ったなーどうしよっか。俺は穏便に行きたいけどこれ放っておくとアストリッドに負担がかかっちゃうよね」
「私を追い落としたいんでしょうからそうね。私と結婚したいのならなんとかしてくださいね、ウフッ」
「……でもその証拠がこのレジストしたログだけなんだけどこれで行けると思う?」
「うーん、その固有魔法の信憑性が説明できたら行けるんじゃないかしら?」
「ふむ……理不尽不敬罪マンを護衛に付けた方が確実かなぁ?」
「じゃあとりあえずはその方向で進めましょう。私は使えそうな魔道具を探します。後は……学院長にも相談してみましょう」
今後の方針が決まったので残りの授業を受けて帰った。
その次の日、学院内でアストリッドの悪い噂が流れていた。
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