乙女ゲーのクソ王太子に転生した
あんこくじだい
第1話 レジストする王太子
幼少の頃に高熱を出して生死を狭間を彷徨ったのを切っ掛けに前世を思い出したのと同時にこの世界が乙女ゲーの世界であることを知った。乙女ゲーのタイトルは知らない。
前世の俺は非モテのオッサンだったのだが今世ではイケメンのクラウス・フォン・アムシャビオス王太子殿下になってしまっている。
非モテだった頃の俺は自己評価が低かったのだが、王太子殿下となった今でもそれは引き継いでいて、社交辞令を真に受けて図に乗ったりはしなくて済んだ。ただ可愛げが全くないのと目が死んでいることで両親には心配をかけてしまっている。あれれ~?とか言って子供のフリでもしていればよかったのかもしれない。
そんな俺にも10歳の頃に婚約者ができた。エッカート侯爵家のアストリッド嬢だ。切れ長の目に気の強そうな顔をした金髪の縦ロールで、俺なんかの嫁にはもったいないくらいの美人で可愛いのだ。王命での政略結婚なので2人は断ることなどできないことがアストリッド嬢に申し訳なく思う。
だが俺が元オッサンだからアストリッドには父性みたいなもので接していたらつまらない男と思われたらしく、会いに行こうとすると病欠と言われ見舞いも断られる。俺と会うのは仮病使うぐらい嫌だってことか?
しかたないね。
そんな俺とアストリッドは15歳になり、貴族の学園に通うことになった。なんでもここが乙女ゲーの舞台で、俺ことクソ王太子がアストリッドに冤罪で婚約破棄を叩き付けるところらしい。俺ヤベー奴だよ。絶対婚約破棄なんてしないでアストリッドとイチャイチャしたい。
そして入学式の挨拶を終え、教室に向かう途中だった。
<魅了魔法をレジストしました>
無機質なシステム音声が聞こえた。俺に魔法かけた奴がいるな。辺りを見渡していると背中に衝撃が走った。
「ぐおっ!」
「いたた~、あっぶつかってごめんなさい!お怪我はありませんか?」
見知らぬ女が俺にタックルしてきた。倒れる程ではなかったが不意打ちだったので結構効いた。この女は乙女ゲーの登場人物なのか?だとしたらあまり関わりたくはないな。俺は無視して教室に向かった。
<魅了魔法をレジストしました>
<魅了魔法をレジストしました>
<魅了魔法をレジストしました>
ぬ、攻撃を受けているが全部レジストされているようだ。そういやこの世界魔法あるんだよな。俺もそこそこ使えるが魅了魔法なんて聞いたことないな。固有魔法か?一体誰が俺を攻撃しているのか。王太子を状態異常魔法で攻撃するのは国家転覆罪とか不敬罪とかで極刑だぞ。攻撃されているのはわかっているが俺しか気づいてないのとどこからの攻撃かわからないので放置するか。ただ誰かには相談しよう。誰に相談しようか…。などと考えながら今日の授業は終わった。
「アストリッド、やっと会えたな」
「これはこれは王太子殿下、ご機嫌麗しゅう」
俺はしばらく会えなかった婚約者であるアストリッドに会いにきた。会いに来たといっても隣のクラスに移動しただけだが。アストリッドは恭しく完璧なカーテシーをキメて俺に挨拶する。
「それで?私に何の用でしょうか?」
「婚約者に会いに来るのに用が必要なのか?」
アストリッドは面倒臭そうに首を左右に傾げている。こいつと結婚して大丈夫だろうか?と不安になる。
「じゃあ用は無いのでしたら私は帰らせてもらいます」
「いや、話があるんだ」
「はい、どうぞ話してくださいませ。そうだ、王宮までご一緒しましょうか?」
アストリッドはニコニコしながら怒っている感じだ。アストリッドはこの後王宮で王妃教育を受けさせられるので忙しいのだ。だから合理的な決断をすることが多い。
「そうだな、王家の馬車で送ろう。」
俺とアストリッドとアストリッドの侍女は王家の馬車に乗った。
「それで話とは?」
「今日、魅了魔法で4回攻撃された」
「ほう?殿下が?証拠とかありますか?」
「証拠か、ステータスオープン!」
俺は固有魔法と思われるステータスオープンを使い、ログをタッチした。
「ほら、このログを見てくれ」
「なっ?なんですの?この半透明な板は?」
「ほらここ、魅了魔法をレジストしましたって4回あるだろ?」
「ええ、そのようですわね。魅了魔法ってなんなんですの?」
徐々に話に熱が入っていくアストリッド。俺に興味は無くても未知の魔法は気になるよな。
「聞いたことない魔法だから固有魔法じゃないか?」
「固有魔法…殿下も変わった固有魔法をお持ちみたいですわね」
「そうだな」
「何でこんな面白そうな魔法があるのを教えてくれなかったんですの?」
「アストリッドが仮病使ってずっと会ってくれなかったからな」
「これからは毎日会いましょう!ねっクラウス❤」
アストリッドが俺の名を初めて呼んでくれたが複雑な気持ちだ。そんなこんなで王宮に着いて俺達は別れた。
「後は親父と宮廷魔道士長に報告しとくか」
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