第11話 デス・ゲーム
ある日、大久保三木は目を覚ますと、白い空間に放り出されていた。
身に覚えのない場所だ。
辺りを見回すと13人ほどの老若男女が集まってるではないか。
一体ここはどこ?
そんなシンプルな疑問が思い浮かぶ。
そして、周囲の男女の様子からして彼らもここにいきなりいたことで困惑している様子だった。するとどこからとも無く声が聞こえてきた。
「静粛に。今からあなた達にはゲームをしてもらいます。」
エコーのかかった、どこか異質な声が聞こえてきた。女性の声のようである。
「誰だ?ドッキリ企画か?」
「早くここから出させてくれ。誘拐犯め!」
口々にそんな声が湧いて出てきた。
「静粛にと言っただろう。まあ、落ち着いて聞いてくれ。ゲームにクリアしたら君たちは自由の身だ。」
「なに?本当か?失敗したらなんかあるのか…?」
「クリアしたらか…回りくどいな。そもそもなぜ俺らがここに連れてこられたんだ?」
不満を漏らす声が聞こえてくる。
「ゲームのルールは簡単だ。君たちの行動は今から〈視聴者〉に監視される。君たちは紙に書かれた指示に従って行動する。それを〈視聴者〉達が評価する。その評価が見事合格基準に達したらクリアだ。不合格の場合は…」
続きをため、
「悪いが君たちに明日はない。この空間と運命を共にすることになる。」
「ふざけたルールのゲームだな。強制参加させられる感じか?これは。」
「君たちに拒否権はない。拒否した場合は即刻死んでもらう。」
今度ははっきりと死んでもらうって言った。
大久保は状況は把握できたが、落ち着かない。というよりこの状況で落ち着ける方がおかしい。
いきなり見知らぬ人と一緒にデス・ゲームに強制参加させられるなんて夢のようだ。
頬を抓るが、感覚はあるし、これは現実だ。
悪い夢のような現実と立ち向かわなければならない。今改めて状況を整理した。
つまりその〈視聴者〉から高評価を得られるように行動すればいいんだね!
それが簡単なのか難しいのか分からないけど。
それにこんなカメラもない空間。
一体どこからその”声”は見ているのやら。
辺り一面白い。
とにかく真っ白で13の人物以外誰も何もない。
すると
「ゲーム開始ぃぃぃ。」
耳を劈くような声でゲームの開始が告げられた。
すると、目の前に紙がヒラヒラと落ちてきた。上からだったが、上には穴も何も無い。
何も無い空間からまるで落ちてきたかのようにその紙は舞い降りた。
みんなその紙が各々の目の前に落ちてきたのでそれを拾う。
大久保も慌ててそれを拾う。
「ええっと何何。」
[あなたはあなたが今まで経験した中で1番の怪奇事件を語ってください。]
そう紙には書かれていた。
えっ、怪奇な事件んんん。得意分野だぁぁぁ。
内心これは勝ったなと思っていた。
怪奇な事件なら今まで色々見てきた。
墓場の幽霊。
壁抜け女。
デカいカラス。
そして、
アグノという異世界人。
に加え、先日の大怪獣。
他にも色々ある。
あぁーどれにしようかなぁー。
大久保は一人悩み中。
そんな中、
「それでは、大石政明さん。あなたの行動を示しなさい!」
最初に指名されたのは大石政明という大柄でガッシリとした男だった。黒髪。タンクトップ。青いズボン。
「俺は今から過去に経験した…虐めるという行為について語る。」
虐めるという行為について?まさか、そっち側の人間か?と大久保は思った。
「俺は中学の頃、俺より体格の小さいヤツから全てを奪う気でいた。若さ故に無茶苦茶をしていた。金も女も成績も全部取ってやった。金は暴力で奪い取り、そいつに勉強を教わりつつ、その金で個別指導塾に通いつめ、成績を伸ばし、そいつの悪い噂を広め、そいつの彼女を寝返らせた。そして、そいつの人生を俺は破滅させた。幸いそいつは自殺とかしなかった上に、誰にもそのことを打ち明けずにいたから俺は何の罪も償わないでここまでやってきた。正直、今思えば心に刺さるものがあるから今こうして虐めるという行為が何たるか語ろうと思います。虐めるというのは虐める側の人間のフラストレーションを解消すること、人を貶めたいという気持ちが何よりも虐めを加速させるものだ。そう俺は経験から考えている。以上。」
そして大石は座った。
「ちょっと待ってねー。結果集計中。」
そして、すぐに
「それでは結果発表しまーす。結果…」
その場にいた全員が固唾を呑んで結果を聞くのを待った。
「残念ですが不合格。さよなら。」
すると、大石の座っていた部分が黒くなった。
そして、大石の姿は一瞬にして消えた。
まるでその黒に落ちたかのように消えていった。
「みなさん。失敗するとこうなりますからねー。気をつけて次行きます。」
そして、次々とゲームは行なわれていったが、ここまで6人全員が不合格になった。
一体合格基準がどこにあるのか?さっぱり分からなかった。
「それでは7人目の方。」
大久保は次は自分か?自分なのか?と恐怖して固まっていた。
正確には小刻みに震えてはいたが。
「大久保三木さん。お願いします。」
遂に来てしまったー。
あー何話そう。頭が真っ白になるぅ。この部屋みたいに!
墓場幽霊はややインパクトに欠ける。
大怪獣はみんな経験してるし、有名すぎる。
巨大カラスもイマイチ。
ならば…
「ええっと。私は自らが経験した中で1番の奇怪な出来事について語りたいと思います。」
一呼吸おいて、
「私はある日、公園で、不思議な煙がたっているのを目撃しました。近づくと、1人の女がたっているではありませんか。少々傷ついている。私はこれは珍妙スクープ案件だと予見し、カメラを回し始めました。理由?勘だよ。そして、色々その女の子はやってましたが、耳を叩いたり、佇まいを直したり、適当なことをしていました。そしたら、こちらをみて、そりゃ驚きましたよ。カメラとめて、自転車乗ってきてたから颯爽と逃げ出そうとしてた。そしたらなんとその女性が羽を生やしたんですわ。そして追いかけてきて、あっという間に追いつかれたんですよ。普通に考えてこれは尋常ではないと思いましたわ。私は恐怖に飲み込まれましたわ。そして、こう言ったんですよ。〈泊まる場所を提供してくれ。ただでとは言わない。オレがお前のボディガードをする〉。それで一瞬、安堵しましたね。あー命を狙ってるわけじゃないんだとね。名前はアグノって言うんですわ。」
「結果集計中」
「えっまだ途中ですけど?」
「結果、不合格。」
今までのような溜もなくあっさりと吐かれた不合格の3文字。
「は?まだ途中なんですけど。」
すると足元に黒い空間がまるで現れた。
そして、
「きゃぁぁぁ。」
黒い空間に体が吸い込まれた。
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