第12話 二面性

そしてやがて地に着いた。


「いてててて。」


大久保は足を捻挫してしまいうまく動けなくなっていた。


周囲を見回すと


そこは真っ暗な空間だった。


しかし、


「どうなっちまうんだよぉぉぉ。」


「ここもどこだよ…」


どうやら先に消えた人達の声が聞こえてくる。


声だけが虚しくその空間には響く。


ああ。これからどうなるんでしょう。

足も捻挫してしまったし、動きが取れない。


するとどこからか人とはまた違う声が聞こえてくる…


グェグェグェグェ


キキキキキキキキキキキキ


声というより鳴き声めいたものだった。


そして


「ハハハハハ。お前達の命は間もなく奪われる。飯の時間だぁ。」


不気味かつ大声、だが震えてる声でその声の主が叫ぶではないか!


飯の時間?

何を言ってるんだこの人は。

そもそも人なのかも分からないけど…


大久保の脳裏では、嫌な予感がしていた。

これも、もしかしたら紋に関係のある連中のしていることなのかもしれないと…


すると、その声とはまた別な声が聞こえてきた。


「我々も腹が減ってるんじゃぁ。どう捌いてくれようか!」


そして


「はいはい。では、休憩に入ります。にいる人はゆっくりしててね。すぐに戻りますから…」


さっきの上で聞いた声がまたもや聞こえてきた。


ゴォゴォゴォ


暗闇で何かが動く音が聞こえてくる。


そして僅かにさす光に照らされ出され、目の前に現れたのは


赤い瞳。額から2本生えたツノ。白と黒のコントラストの肌。赤いドレス。綺麗な銀髪。巨大な漆黒の翼。白い鋭利な尻尾。鈍い光を放つ銀色の鈎爪。


これらを兼ね備えた化け物のような容姿の者が現れ出てきた。


「これはこれは失礼しました。私がこのゲームの進行役のドグラ・マグラと申します。今からあなた達には罰を受けてもらいます。」


そして、手を振り上げ


思いっきり下に振り下ろす。


何かの合図のようだった。


「さぁ。あなた達!好きにしていいわよ!」


「キキキキキキ」


「よっしゃぁ。腹減ってたところやー。丁度ええところやで。ここにがおるわい!」


大久保はこの発言で全て悟った。


あっこれ私食べられる…


走馬灯のように今までの出来事が頭をかけ回った。


SSSに興味本位で誘われて入ったのはいいものの、結局何もできずにここで人生が終わる…終わってしまう…足もうまく動かせないし、逃げようが無い暗闇。あー。



終わりを悟った。


周囲からは悲痛な叫びとむしゃむしゃと咀嚼音が聞こえてくる。


みんな、逃げきれずに化け物に捕まっては食べられてしまっているようだ。


自分ももう終わりだ。









そう思っていた。


バゴッ


ガクッ


ビシッ



「うぎゃぁぁぁぁああああ。」



「キキキキキキ…キキっ」


次々と鈍く肉と肉がぶつかり合い、殴り合い、蹴りがぶつかるような音が聞こえてきたではないか!


大久保は感覚的に音からこう察していた。


あれ?もしかして誰か助けに来てくれた?


暗闇で何も見えない中から聞こえる音だけで判しているが、確かに化け物と思われる私達を食べようとしている連中の声が段々と聞こえなくなり、やがて静かになったことから誰かが、連中を倒したのではないか?


そんな期待を抱いていた。


「誰ですか!」


思わずそんな言葉が口を開けば出ていた。


トコトコトコ


足音がこちらへ近づいてくる。


そして現れでたのは、


天井からの僅かな光に照らし出されたのは、


黄色い瞳。額から2本生えたツノ。白と黒のコントラストの肌。赤いドレス。綺麗な銀髪。巨大な漆黒の翼。白い鋭利な尻尾。鈍い光を放つ銀色の鈎爪。



うん。変わってるの瞳の色だけだね。



「あなたがやってくれたというの?」


「私は藤崎未来。この体の主人格です。この度はドグラ・マグラのおかげで大変な目に会われたと思います。この体は私とドグラ・マグラで繋がってるのですが…まあ詳しい話は置いといて今はあなた方を助け出します。」


大久保はこの時、天井からさす光がやたら神々しく見えた。

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