第2話 目覚め

私は目覚めた。

そこは所々穴があき、陽の光が差し込むボロ屋同然の場所だった。柱が崩れており、中は汚く、内装はボロボロだった。

まるで廃墟ではないか。いや廃墟そのものといえた。

なぜこんなところにいるのか分からない。

記憶がまるでない。

私の名前は藤崎未来。

年齢20歳。

弟と父親しか家族はいない。

この3つのこと以外まるで覚えていない。

私はどうすればいいのやら困り果てた。

周囲に人影は見えない。

ここには私以外いないようだ。

とりあえず中を探検してみよう。

私は立ち上がり、中を歩き始める。

どこからとも無く聞こえる水のしたたる音。

私の足音は孤独な音。

羽虫が飛び立つ音。

そして


何やらガシャンと物が崩れ落ちる音が聞こえる。


その音に驚き振り返るが何もいない


「だれ?」


素の感情が飛び出る。


返事がかえってくることはない。


怖気付いた私は思わず後ずさりをする。


そして、


ドゴッ


何かに背中がぶつかった。


「やぁ。藤崎…未来さん」


恐る恐る振り向くとそこには赤いドレスに身を包んだ女がいた…


彼女は息をつまらせ、生きた心地がしなかった。しかし、恐怖に支配されたその身体は動かなかった。 そこに存在するということも、私の名前を言ったことにも驚きを隠せなかった。


「驚かしてすまないね。私はあなたに宿るもう1つの人格であるドグラの友人と言いますか。そんな関係です。あなたの監視を任されているので、変な行動はしないように…」


私に宿るもう1つの人格?なんのことだ?さっぱり意味が分からない。

彼女はそう感じつつも頼りになるものがない中、その女に頼る他今はないと思っていた。


「どうしてここに私はいるの?ここはどこ?お父さんと弟の居場所は?」


「それは答えられない質問だねぇ。とりあえずゆっくりお休み」


その瞬間、私は全身が痺れた。


身体の感覚が失われていく。


ガタッ


完全に沈黙する。


そして幾許か時間が経った時、彼女に眠るもう1つの人格が目覚める。


「んんんー。よく寝たー。」


「おはよう。ドグラ」


赤いドレスに身を包んだ女性は話しかける。


「マグラちゃんおはよう。この世界の侵食活動に勤しみますか!」


「これからどうする気なの?」


「私らはもといた世界の連中の手引きをするのさ。」


「具体的な策はあるの?」


「なに、もう既に始まってるよ…この世界の侵食はね。ぐふふふふふふ」


不気味な笑い声をあげ、周囲を恐怖に満ち溢れさせた。





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