第2話 落ち着け、落ち着け拓真
1度冷静になりまして今、クロに俺の洋服を着せた所だ。
何せ裸で部屋に居たのだ。
何か着てもらわないと自分を保てなくなりそうだ。・・・・・・飼い猫を襲うなんてなんて酷いことか!
「・・・・・・まじかよ」
とりあえず白の半袖を着せて、適当なズボンを履かせた。ここまでは良かった。
なんという破壊力。
どうして男の服を着た女の子ってエロく見えるのだろうか?
解。大きさが合わないから。
シャツの大きさ故か、綺麗な首筋を覗かせ、その下へと妄想を膨らませるのだ。
ズボンの緩さも相まって全体的に色々な所が見えている。
「んっ・・・・・・あっ、なんか擦れて変な感じ」
「お、おう。そうか」
「もう!たくま、いつも見たく可愛いって言ってよ!」
「言えるかバカ!」なんて言えるかバカ!
さては女子に『可愛い』と言う難易度をクロは分かっていないな。
気持ちがどうであれ、本気にされてみろ。その年、あるいはその学校、果ては中学まではからかわれるんだ。
俺は適当に誤魔化しつつ、椅子に腰掛けた。
対してクロは床に胡座をかく野性的なスタイルだ。
う〜ん。可愛い。
猫耳がある訳でもしっぽがある訳でもない。凄く可愛い人間の少女にしか見えないのだ。
「なぁクロ、どうしてそうなったんだ?」
「んー?わかんない!起きたらこうなってた!」
うっ、眩しい!愛する人(猫)と意思疎通が出来ることがこれ程か!
照れを隠しつつ時間を確認する。
今は午後8時。半分ほどの生徒は寮に帰ってきているのではないだろうかという時間帯。
とりあえず、今日は大浴場を使っていないのでシャワーを浴びたいところだが・・・・・・
「クロ、一人でシャワー浴びれるか?」
「・・・・・・どうやって?」
「だよなぁ」
だって、猫だもんなぁ。
「シャワーって我慢できるか?」
「嫌だよ!女の子は毎日しゃわー浴びたいよ!」
「だ、だよなー。そうだよなー。毎日なー」
だって、女の子だもんなぁ。
数秒目を合わせて離れられなくなりそうなのでその前に話を変えた。
「一応聞くけど・・・・・・下着って持ってないよな?」
「ぱんつとぶらじゃーでしょ?持ってないよ!」
「なっ!うちの猫はどこでその言葉を!?
・・・・・・俺か。俺しか居ないよな。うん。
男の子だし?そういう動画も見るんだよ。
音には気をつけるけどさ、まさか猫に聞かれてるとは思わないじゃん?
そういう事だよ。うん。」
「たくま何言ってんのー?」
きょとんとした顔のクロに俺は罪悪感を覚えるだけだ。
はぁ、と溜息。ともあれ、下着は重要な問題になりそうだ。
自分の下着を貸すか?そんな変態プレイのような事は出来ない。
父親が娘にパンツを貸すようなものだろう。俺には不可能だ。
一番実用的な案は借りる事だが・・・・・・。クール系を貫く以上女子に下着を借りられる訳が無い。
クロはシャワーを待ち侘びているのだ。中止にしてやりたくは無いな。
ここで俺は羞恥に打ち勝ち、一つの決断を口にした。
「俺が買ってくるから、クロはここで待ってろ」
かなり勇気を振り絞った決断だ。
この学校がいかに充実しているとは言え、敷地にあるのはコンビニと文具屋だけ。
服飾類を揃えようと思ったら出なければならないのだ!
俺はは財布を取り出し、中身を確認。
五千円もあれば買えるだろう。
靴を履き、玄関のドアに手をかける。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい!」
流石に高校生なのだ。この高校が自由を優先していようと、22時〜5時の校門の出入りは禁止だ。
一応なるべく急ごうと思いつつ、拓真は店へと向かった。
〜〜〜
タッタッタッ
ガチャ、バタン!
「危なかったぁ!」
家に帰ってきて玄関の前に座り込む。
溜息とともに思い出すは店での出来事。
『お、お客様ぁ?ナニをお探しでしょうか?』
『す、すみません!?』
直ぐに2セットを決めて会計を済ませて
あの女の店員の引き攣った笑みを忘れることは無いだろう。
下着を探すのは30分くらい普通だよなぁ?
よっ、と起き上がると本題に入る。
「クロー、下着買ってきたぞー」
「おかえりたくま!」
その時クロはというと、何をするで無くベッドでゴロゴロしていた。
笑みを浮かべて起き上がる。
さて、ここからは何が起こるか分からない。
俺(高校生男子)はクロ(見た目高校生女子)の体を洗ってあげるという、なんとも俺が可哀想な事をしなければならないのだ。
気合いを入れてまず一言。
「クロ、今からクロの体を洗う。だからやり方を覚えてくれ」
「分かった!」
「よし。それじゃ、ついてこい」
脱衣場。ここが俺の理性を問う第一の関門。ここで襲いかかればクロが口を聞かなくなるかもしれない。
ゴクリ。
「クロ、ぬ、ぬ、脱いでくれ?」
「うん!」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・クロ?」
「・・・・・・脱がせて?」
oh......no.ピンチだ。どうしてそんな事しなければならないのか!?
見せられないよ!とかしてくれる便利な人は居ないのか?
やっぱ他の人に見て欲しくないので来ないでくださいませ。
愛するクロからの対応はゴミを見るようになったら俺は生きていけない!
響く嬌声が隣の生徒(ちなみに響)に聞かれるかも知れない!
「落ち着け、落ち着け拓真。俺はいつもクールでいるじゃないか。
よし、行くぞ?」
クロのTシャツに手をかけ一気上げる!
当然、二つのメロンに1度引っかかってから上がり、その後は・・・・・・
ぷるんっ
揺れた。
二つのメロンが大きく揺れる。そして、
忘れてたぁぁぁぁ!
先に着いているのはピンクのポチ。
帰ってきた時、裸だったクロに服を着せたのは俺だ。
だって、俺がブラジャーなんて持っている訳ないだろ?しょうがないだろ?
しかし、あの時は咄嗟の事で目に入っていなかったものの、落ち着くと良く見える。
「がぁぁ!」
男としての本能がクロを襲いそうになった時!
「・・・・・・?」
目に入ったのは首を傾げるクロの顔。
何も疑わない純粋な瞳。
ふぅ。
大きく息を吐いて、切り替える。
「クロ、次は下を脱がすぞ。」
「うん!」
あっち向いてろと伝えクロのスボンを下げる。
娘に対する親の気持ちを想像して。そうだ、パパは娘に発情しない。
そこからの俺は素晴らしいものだったろう。
クロにシャワーの使い方やシャンプーの使い方を教える。
どうしても、あるシャンプーは猫用か男用なので男用を使ってもらったが・・・・・・これからは女用も用意するべきだろう。
髪を洗い、水で流し、体を洗い、水で流す。
1年と少しの間クロ(猫)を洗っていた為、クロ(人)にも手つきは好評だった。
実はシャワーで流す時、色々な所に当たって、その度クロは嬌声を漏らし、潤んだ瞳で俺を見つめるていたのだが・・・・・・。
全てをいなした!
でも、父親って常に賢者タイムなのかとか考えた僕を許してください。
シャワーを終えると、体を吹いてやり、買ってきたパンツとブラジャーを着せる。
上下黒でお揃いのものだ。軽くあしらわれたレースが可愛らしい。
「たくまはいいせんすしてるねぇ」
「ぶっ!?」
拓真にクリティカルヒット!
父親の気持ちでここまで耐えてきたものの、流石に女性用下着のセンスを褒められるのには耐性が無かった。
「お、落ち着け。これくらい当然なんだ。そうだ。大丈夫大丈夫」
「たくま大好き!」
「ぐはっ!?」
完敗だ。愛する猫が自分を大好きだと言ってくれたらどうだ?
絶対に有り得ない事が、たまらなく嬉しいね。
結果、俺は再び父親の境地へと向かわねばならなくなった。
だからぁ、賢者タイムって言うなぁ!
下着を着せ終わって、別のTシャツと半ズボンを履かせる。
ドライヤーで髪を乾かせば終わりだ!
その後タオルで髪をどうこうする事に関して俺に全くの知識が無い為ここで終了。
全てを終えた達成感を味わいつつ、クロを見やる。
ほんのり赤い頬。肩の広いシャツから覗く白い肩。はちきれそうな胸。
愛する
「完璧だ・・・・・・」
「えへへ、ありがと!」
照れながらもクロはVサイン。
こうして、シャワーという難関を超えた!
その後自分もシャワーを終え、少しクロと話をする。
さぁ寝るぞと一日を終えようとしたのが夜10時の事だ。
寝る前に確認した響からのメールに、
────
先生にメニューの確認取れたぞ。
添付の画像見といてくれ。
あぁ、後な、
AV見る時はもう少し音量落としてくれよ?
隣の部屋が俺じゃ無かったら今頃どうなってたか(笑)
それじゃおやすみ。
────
隣の響にはクロの声が聞こえていたらしい。
クロの存在を隠すにしろ明かすにしろ、暫くは大変な日常になりそうだと思う。
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