第1話 不意打ち

「で、結局委員長になってしまったと」


「ああ」


俺は愛美(あみ)に遅れた理由を説明した。

愛美は呆れた様な顔をして言う。


「翔くんって変な性格してるよね」


「ほっとけ」


「まあ、そこが好きなんだけど」


「ちょっ」


いきなりの大胆な発言に頬が熱くなる。

思わず隣の彼女を見ると、言った本人が顔を赤くしている。


可愛い。ってそうじゃなくて、


「おい、赤くなるなら最初から言うなよ。ここまだ学校近いんだし。誰が聞いてるかわかんないだぞ」


「じゃあ、翔くんは嫌だった?」


うっ。その上目遣いはやめてくれよ。断れないじゃないか。

断る気なんてさらさらないけど。


「嫌じゃない」


「なんて?聞こえなかった」


絶対聞こえてただろ。


「嫌じゃないです!」


さっきよりも大きめの声で言うと、愛美は嬉しそうに微笑んだ。

その笑みの可愛さに思わず見とれてしまう。


こんなに可愛い子が俺の彼女なのか。


俺が幸せをかみしめていると、愛美が話しかけてきた。


「翔くん、ボーっとしてどうしたの?」


愛美にはいつもからかわれているので、ここぞとばかりに反撃を試みる。


「大好きな彼女の笑顔に見惚れてた」


「ひゃっ」


愛美が変な声を出した。

そのまま俯き、耳まで真っ赤にして震えている。


反撃成功。



…ん?

俺今めっちゃ恥ずかしいこと言わなかった?


ヤバい。言ってから恥ずかしさがこみ上げてきた。

恥ずかしくて愛美の顔を見れない。


「しょ、翔くん」


「は、はい」


「わ、私も大好きだよ」


「うっ」


反撃をしたら、もっと強い大好きだよ《カウンター》が返ってきました。



********



二人して身悶えた後。

落ち着いた頃を見計らって話しかける。


「あ、あのさ」


「え、えっと」


被った!


「ご、ごめん。俺のは後でいいから、先いいよ」


「ありがとう」


愛美はふうっと息を吐き、続けた。


「二人とも同じクラスになれなかったね」


「ああ、そうだな。でも、俺は同じクラスじゃなくて良かったかな」


「え、何で?」


とたん、愛美は悲しそうな顔をする。


「ご、ごめん。愛美と同じクラスが嫌だってことじゃなくて、同じクラスになっちゃうと、愛美のことばっかり考えちゃって、勉強できなさそうだなって思って」


「っ。そういう不意打ち禁止!」


怒られてしまった。

解せぬ。俺は本当のことを言っただけなのに。


「愛美は委員会に入ったのか?」


「私はね…保健委員だよ。

でも良かったなぁ。翔くんも委員会に入ってくれてて」


「何で?」


「何でって委員会ある日に一緒に帰れるじゃん」


きょとんとした顔で、愛美は言ってのける。


お前…!

人のこと言えないだろ。




「そういえば、愛美は誰か仲がいい奴、クラスにいたか?」


熱くなった頬を冷ますため、俺は話題を変えた。


「去年同じクラスだった子が何人かいたよ。

後は…そんなに仲いいわけじゃないけど、輪島くんがいたかな」


「俊樹か」


輪島俊樹は俺の親友だ。

小学校からの付き合いで、良く家に行ってゲームをしたりする。


「翔くんこそ、どうだったの?」


「俺は結菜と一緒だった。

これで中学3年間ずっとあいつと同じクラスだよ」


不思議なもんだ。

うちの中学校は一学年8クラスあるのに、3年間ずっと一緒とは。


「で、あいつ、副委員長になったんだよ。去年まで全くやろうとしなかったのに。何でだろ」


「うーん。そうだね。不思議だね」


なんか愛美が素っ気ない。

俺、なんか変なこと言ったかな。




気が付けば、もう家の近くの公園まで来ていた。


俺はここを真っ直ぐ。愛美は右に曲がる。


「じゃあ、また明日ね」


「ああ。また明日」


そう言って手を振って歩き出そうとすると、くいくいと制服の袖が引っ張られた。


「どうかした?」と聞く前に、俺の耳元で囁きが聞こえた。




「大好きだよ、翔くん」



「っ」


「じゃ、じゃあね。また明日!」


愛美はそう言って走り去っていった。

小さくなっていく後ろ姿を見ながら、ぼやく。




「そういう不意打ちはやめろって」








******


第1話から変なタイトルですね。


この物語はこんな感じで短めに書いていこうと思います。


誤字、脱字等ありましたら、コメントしてください。

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