俺と君の話

さくた

プロローグ

「誰か、学級委員長をやってくれる人はいませんか~」


教師のやる気のなさそうな声が教室に響く。

教室は静まり返っているため、教師の声がよく聞こえる。


しかし、手を挙げる者はいない。


まあ、当然だろう。

今年は受験があり、とにかく忙しい。


斜め後ろの友人に「お前やれよ」と視線で訴えるが、「あんたがやりなさいよ!」と視線で返された。


教室を見渡すが、誰も彼もペンで遊んだり、俯いていたり、中には寝ている奴もいる。


まあ、学級委員なんてめんどくせー、と思っている奴が大半だ。

やる奴は余程自分の成績に自信があるか、それが楽しいと思ってる奴だけだろう。

内申点のためにやる奴もいるかもしれないが。




「はあ、またこのパターンか」


去年も見た光景である。


どうやら、俺はクラスメイト運がないようだ。

他のクラスなら、というか普通のクラスなら、ここで一人くらい手を挙げるはず(と俺は勝手に思っている)。

なのに誰も手を挙げず、「私は関係ないです」みたいな顔をしている。


はあ、めんどくさい。

俺はこんな事早く終わらせて、愛しい彼女に会いたいのに。



既にチャイムは鳴り、他のクラスはとっくに帰り始めている。

だが、学級委員は今日中に決めないといけないため、俺たちのクラスだけ残っているのだ。


ああ、早く彼女に会いたい。

一緒に帰りたい。


「誰かやりたい人いませんか~。いないなら先生が勝手に決めちゃうよ~」


こう言ってはいるが、先生は誰かが名乗り出るまでやめないだろう。


刻々と時間が過ぎていく。


この時間は無駄だ。

もういい。終わらせてやる!

俺が身代わりになればいいだけの話だ。





「先生。俺、委員長やります」




********



「あんた、良く委員長やる気になったわね」


やっと学級委員決めが終わり、さっさと帰ろうとしていると、俺のあんまり多くない女の友人—小西こにし 結菜ゆなが話しかけてきた。


「ああ。あのままだと、絶対決まらずに長引いたからな。無駄な時間を過ごすぐらいなら、自分がやったほうが早く終わって楽だ」


「相変わらず、変な性格してるわね。去年も同じ事言ってたじゃない」


「ほっとけ」


俺は鞄を肩にかけ、席を立つ。


「じゃあ、また明日」


「なんか急いでるけど、今日なんかあるの?」


「早くあいつに会いたいんだ」


「そう…」


理由を説明すると、結菜は少し寂しそうな顔をした。

結菜のような美少女が寂しそうにしてると、こちらまで申し訳ない気持ちになる。


俺は元気づけるように結菜の肩に手を置くと、少し冗談めかして言った。


「今年もよろしくな。頼りにしてるぜ、


俺の言葉に、結菜も整った顔を綻ばせ、返す。


「ええ。こちらこそよろしく。頼りにしてるわよ。


俺はその答えにふっと頬を緩めると、足早に教室を出た。

そのまま早歩きで昇降口へと急ぐ。


最速で靴を履き替え、ダッシュ。

愛しの彼女の元へと走る。


学校の正門から外へ出てすぐの電柱のそばに、彼女はいた。


「遅いよ~、翔くん」


「ごめん、委員決めが長引いて」


俺の彼女—千歳ちとせ 愛美あみは俺を幸せにする笑顔で、文句を言ったのだった。




******


こんにちは、さくたです。


ラブコメを書いてみました。

受験生なので二作並行は難しいかもしれませんが、書け次第更新していきますので、よろしくお願いします。


誤字、脱字等ありましたら、コメントしてください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る