本当の話②
「どこまで話しましたっけ?」
「ああ、そうそう。私が一番おかしかったころの続きですね」
「うちは、父と母と私の3人家族だったんですよ」
「だから、早く弟か妹が産まれないかなーって思ってました」
「だって親がかわいそうじゃないですか。自分の子供がこんなヤツ1人だなんて」
「親はどうして2人目を作らないのか本当に不思議でしたね」
「そこで私は気づいたんですよ、うちには子供2人を養う余裕がないのではってことに」
「考えれば考えるほどそれは本当のような気がしてきました」
「それで私は、じゃあ死ななきゃなって思ったんですよ」
「それでロープを用意して釘を壁に打ち込んで、どうなったのかは皆さんご存じの通りです」
「笑ってやってください」
「そのとき私は絶望しましたよ」
「死ななきゃいけないのに死ぬ勇気もない、それに気づいてしまった人間の気持ちがわかりますか?」
「それから私は自殺に失敗した足でそのまま学校に向かいました。もうボロボロになってしまった真面目でいい子なメッキを被って」
「中身はからっぽで授業はもちろん、友人との会話も相槌を打っているだけで右から左でした」
「それから3日くらいたって、ようやく私は身の振り方を決めました」
「死ななきゃいけないけれど死ぬこともできないなら、生きていくしかないじゃないかって」
「誰からでも嫌われて、親に醜く縋り付いて、私とかかわるすべての人々に迷惑をかけて、醜く愚かでも生きていこうって決めたんですよ」
「そうしたら少し気が楽になりました」
「いろいろなことが少しずつうまくいきだして、親との関係もそれなりになったように感じました」
「それから私は少しずつ幸せになっていきましたとさ」
「めでたし、めでたし」
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