バカ

バカは憎む。自分の全てを踏み潰した不条理を。

バカは夢見る。いつか自由に翼を羽ばたかせる日を。

バカは妄想する。不条理などない幸せを築くと。

バカは酔いしれる。勘違いした己の能力に。

しかし、バカは気づかない。

生物も遺伝子の奴隷でしかないことを。

自分も所詮DNAと電気信号による物理法則に制限されたカスでしかないことを。

知らないうちに刻み込まれた理不尽な思考回路に。

それでも、バカは夢見る。

バカは努力する。

バカは絶望する。

バカは泣き叫ぶ。

バカは知る。

己を殺した不条理が自分の中にドクドクと息づいていることを。

水が低きに流れるが如く、自分の中に流れる不条理もまた自分を低俗なものに変えていくことを。


始めから何も変えられるはずなどなかったということを。

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