遺言

歌は歌えない、

会話のテンポなんてのもよく分からない、

足が速い訳でもない、

顔がいいわけでもない、

スタイルも普通かそれ以下、

その癖に弱音と愚痴だけは超特急で溢れ出る、

ちょっとできないくらいで急に諦めることもよくある

嫉妬と劣等感だけは1人前で何かになりたがる

できる人を見ると影の努力を無視してその結果だけをほしがる

存在意義は感じられない、

自分をかけて守りたいものも、情熱を注ぎたいものも見つかりそうにない


僕は常に誰かの「下位互換」だったのだ

そして多分これからも


どうも世界が、現実が似つかわしくない僕には「フィクション」というものが大層居心地よかった。

架空の主人公たちは常に等しく皆の大切さをとき、欠けてはいけない集団の一員だなどと根拠もないことをスラスラペラペラ喋る。

現実じゃどうも救いようもない僕だったが

ページを開けば、

イヤホンを耳に刺せば、

暗闇でスクリーンを眺めてれば、

世界を救ったり甘酸っぱい青春を体験したりとにかく色々できた。なんにだってなれた。

そういう意味でフィクションは僕にとって「夢の妄想ドラッグ」だった。

それはクズなリアルの僕をむしばむ代わりに僕を忘れさせてくれる最高のツールだった。

フィクションなんて荒んだ心に一時的に麻酔を打ち込むだけのものに過ぎなかった。

もしかしたらこれを書いている僕も物書きを始めた頃のウブの心ではなくただどこの誰かもしれない「あなた」にこれを読んでもらって哀れんでもらいたいだけかもしれない。

弱音を吐いている自分が情けないとは思う、他の人見たく努力で夢を掴みたいとも思う。ただそれをするには足りないものが多すぎるのだ

恐らく僕はこのまま「何も持たず生まれた自分」を哀れみ時代と環境を憎みすべてを他人のせいにして生きていく、だからとってつけたような感じではあるがこれを今は亡き「リアルに生きる自分」の遺書とさせていただこう。

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