その7 土曜日

 珍しく俺の事務所オフィスの中が賑やかだ。


 時刻は午前1時、すなわちもう土曜日になっている。


 俺はジョージと二人、多めのギャラを手にした満足感で、新宿に繰り出し、

 行きつけの『アバンティ!』を振り出しに、顔見知りを三軒ほどして、事務所オフィスに帰って来たのが午後11時30分。

『まだ呑みたりねぇな』というジョージの提案で、途中でワイルド・ターキーを二本仕入れ、ビーフジャーキーと共に音楽をかけ、盛大な(?)酒盛りを開催した。


ええ?


あの二人がどうしたかって?


知らんな。

ご亭主の仁氏は、妻の過去を許し、自分が疑ったことを詫び、妻の聡子は自分の過去を詫び、夫婦はますます仲良くなった・・・・と、そう考えておくのが一番無難じゃないか?


何だよ?まだある?


(暴力掏摸グループはどうなった?奴らが泥を吐けば、聡子も逮捕されるんじゃないか)


 心配ないよ。

 何度も話したろ?


 掏摸ってのは現行犯でないと逮捕が出来ないんだ。


 それにだ。

彼女は現役なんかじゃなくって、単に先代親分の娘だったって、それだけだぜ。

 今はただのカタギの奥さんに過ぎんのだからな。


 警察おまわりも証拠がなけりゃ、幾ら連中が吠えたところで単なる悪あがきとしか見ないだろう。


 おまけに当の本人たちは武器を持って暴れたって、立派な『キズ』が出来ちまった。


 さ、これで話はおしまいだ。

 はぁ?

 (そうはいかん、一週間の話の筈だろ)だって?

  週休二日って言葉を知らん筈はあるまい。

 明日は日曜、夜っぴて呑んだって、誰にも文句はいわれやしない。

 


                                  終わり

*)この物語はフィクションです。登場人物その他は全て作者の想像の産物であります。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

妻(かのじょ)を追いかけて 冷門 風之助  @yamato2673nippon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ