第0.09ー06話 闘戟=発動(トウゲキ=ハツドウ)
「ぐおぉぉぉぉぉ……、ニ、ニンゲン……。
お前も喰らってやるぅぅぉおおおおお。
血も、肉も、
あの女の様に引き裂いて喰らってやろうなぁぁぁぐおうぅ。」
焦点の合っていない赤く濁った眼を向け、ソレは言った。
口の周りと、両の手から腕にかけて、かろうじてそれと判る白いワイシャツの前面が朱に染まっている。引き裂いて喰ったあの女の物だろうと推測できた。
血に狂ったソレが、意外なほど素早く俺に突進してくる。
(弦さんは獲物の事『空手とボクシングの猛者』って言ってたが、魔族に堕ちても技使えんのかよ?)とか思いながら、ソレの動きに集中する。
言葉通り、引き裂くつもりか超大振りなモーションで右腕を振り回して来る。
素早く懐に入り、水月に右の正拳を突き立てた。
「ぐうおぉぉぉ……。」
初撃をかわしながら肩甲骨を回し、溜めこんだ波動を拳が当たる瞬間に合わせて一点に解放する。外的な衝撃はもちろんだが、肩甲骨から肩、肘を伝って拳から相手に向かって突き刺す様に放たれた波動は、敵の体内を伝わり内側から内臓や骨・血管・神経なんかを衝撃波が伝わるが如く破壊していく……はずだった。
「チッ!
何だ、このデタラメな硬さはよ?」
液体金属の塊を殴った様な感触だった。
自分の技の力を絡め取られる様なイヤな感じだ。
(こりゃ、魔族の加護とやらがあるにせよ攻撃食らいたくねーぜ。)
敵の攻撃は、これまたインチキ級に重い事が窺えた。
「キヒヒヒヒィィィィ……。
ニンゲン、お前……強いなぁぁぁ。
でも、その攻撃……効かない。
なぶり殺してやるぅぅぅわあああぁぁぁ。」
さっきまでの大振りなモーションが消え、ファイティングポーズでステップを踏み始める。禍々しい怨念の様な物が全身から溢れ出ているのを感じた。
(ボクシングか……。尤も、足技が来ないって保証もねーけどな。
それなら、敢えて超
――【闘戟=発動】――
(ちっとばかり様子見しちまったが、こっからは普通に闘ってやらぁ。)
出来るだけ全身を脱力させながら肩甲骨を大きく速く回転させる。
先程とは比較にならない程の波動と氣が丹田を中心に身体中に満ちていくのを感じる。
(準備OKだ!)
「こっからが本番だ。
俺を喰うなんて言いやがった事を後悔させてやるよ。」
※BGM「... And Death Smiled」/Alastis
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