第0.09ー05話 天狼=覚醒(テンロウ=カクセイ)
……ソレは、灯りが消えた地下駐車場の一番奥に居た。
さながら生命を持った邪悪な闇が蠢いている、そんな風に見えた。
ソレは荒い呼吸で肩を上下させ、時に全身を大きく痙攣させる。
まるで苦痛にもがき苦しんでいる様だった。
俺は距離を保ちながら近くの柱の陰に身を滑り込ませた。
「イリス、見つけたゼ。
一番下の階の一番奥だ。
【狩り】を開始する。」
心の中で囁くと、すかさず返事が返ってくる。
「こっちの準備はOKよ。
術により地下には人が入らない様になっている。
それに、アンタは魔族の加護とともにある。
安心して、確実に仕留めなさい!」
特許でも取れば大儲けじゃねーか。
そいつぁ後で考えるとして、今は【狩り】だ。
【天狼派古流】の技、思い知るがいいぜ。
俺はいつも通り【天狼派古流】の技を使う時の呼吸法で丹田に内なる氣を集めながら肩甲骨を左右交互に回した。身体中に満ちた氣が急速に丹田に集まっていくのを感じる。肩甲骨は回すにつれてその可動域が増し、そこから生まれる波動が全身を駆け巡り細胞レベルで活性化していくのを実感する。
――【天狼=覚醒】――
波動と氣が丹田を中心に全身に満ち渡り、全ての感覚が研ぎ澄まされる。
よし、準備完了!
呼吸を変えてからここまで約2秒ってとこだな。
さーて、行くとしようか。
≪天狼ノ技ヲ継グ者ヨ……。
コノ
ソノ闘イニ我モ連レテユケ!
コノ天狼ミズカラ、オ主ヲ導イテヤロウ。≫
「その声、天狼?
一緒に闘ってくれるっつーのかよ?
ありがてーぜ。
よろしく導いてくれ!」
≪技ヲ継グ者ノ闘イニ立チ会エルトハ、コノウエモナク血ガ騒グモノヨ……。
オ主ノ磨キシ技、存分ニ振ルウガヨイ。≫
「了解だぜ。」
俺は柱の陰から出て、不穏な気配に支配された奥へと進む。
邪悪な闇を具現化した様なソイツはさっきと同じ場所にうずくまっていた。
声にならない嗚咽と呻き声が心をかきむしる。
普通の人間なら胃の内容物を吐くか意識を失うレベルだろう。
「そこのヤツ。
この街のためだ、狩らせてもらうぜ……。」
※BGM「Whisper of the Evil ~Premium Edition Ver.1 ・Ver.2~」/CROWLEY
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