第0.09ー01話 特製カレーと、峰崎 弦一(トクセイカレーと、ミネザキ ゲンイチ)

 俺たちの前で旨そうな特製カレーが湯気を立てている。

 芳醇なスパイスの香りが鼻……いや、腹を刺激する。

 そう言えば朝から何も食べてなかったな。

 喉も乾いてる。一気にグラスを干した。

 

 俺とイリスは、行きつけのROCK BAR [FireHouse]に居た。

 狩りの前に腹ごしらえをするためだ。

 何でか知らんが、俺のオゴリらしい。

 まぁ、いいけどなメシぐらい。


 「珍しいな、お前が女の子連れて来るなんて。」


 空になったグラスにおかわりを注ぎながら店主マスターが声を掛けてきた。腰まであるロン毛をオールバックにまとめた、身長2メートルに届きそうな巨漢ながら全身は引き締まった筋肉に覆われている。

 優しそうな眼差しがちょっとアンバランスだ。


 「ちっとワケありでね。

 こっちは、イリス。

 イリス、店主マスターゲンさん。

 話は後にして冷めないうちに食っちまおうぜ。」


 店主マスターの名前は、峰崎 弦一ミネザキ ゲンイチ

 俺が初めてこの店に顔を出してからの付き合いだから、もう7年以上になる。ここは、ゲンさん――親しい奴は店主マスターの事をこう呼ぶんだ――が趣味で始めたんだが地元のROCK好きには有名な店だ。


 店の紹介はまた今度にするとして、弦さんは昔自衛隊のレンジャー部隊に属していたんだそうだ。本人から聴いたんだからホントなんだろう。

 そんで、そのレンジャー部隊の中でもダントツの腕利きだったから教官に指名されて新設の特殊部隊なんかに戦術や格闘術なんかを教えてたんだと。

 

 その後、色々あって傭兵になって世界の戦場を渡り歩いたらしい。今は引退してROCK BARの主人だが、その頃の人脈は生きていて多くの情報が集まって来るって言ってた。

 確かに、この街の警察組織もたまに話聴きにくるんだよな。


 「コレは……、一体なんなのだ?

 クセになる味だ。ただ辛いだけではなく何とも奥深い!

 コレは、我が魔族界には無い味だ。

 汝はコレを……、この様な素晴らしい物をいつも食べておるのか?」


 あらイリスさん、いつものツンデレはどこに行ったのかしら?

 それ程に旨かったって事か……。完食してんじゃん。

 そりゃ旨いだろーよ。

 コイツはこの店の看板メニューの一つだぜ。


 「――そんなにおいしかった?

 嬉しい事を言ってくれるじゃないか、お嬢さん……いやイリスさん。

 おかわりあるからドンドン食べていきなさい。

 気に入ってくれたお礼に、今日のカレーはワタシがおごろう。」




※BGM「FireHouse」/FireHouse

 

 

 

 

 

 

 

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