第0.05話 憑依(ヒョウイ)
「で、どっから始めるよ?
獲物の居場所、アタリついてんのか?
やみくもに探すとなると結構ホネだぜ。」
その日の午後、昼と夕方の間の時間である。
もうすぐ、逢う魔が時というわけだ。
読んで字の如く、魔族の下っ端を狩るには丁度いいな。
「獲物探しの前に大事なハナシをするわ。
アンタの【古き狼の力】を狩りに使うに当たって、やってもらわなきゃいけない事があるの。
これは今後の狩りにも大きく関わってくる事だから、ソノつもりで聴きなさい。
――アンタには自身の心の中に棲む【古き狼】と対話をしてもらうわ。」
「いや、ちょ……ちょっと待てよ。
心の中に棲む……って、どういうこったよ?
そんな相手と対話なんてできんのかよ?
いくらなんでもムチャ振りなんじゃねーか?」
「今朝話したであろう……。
【狼】とは気高く誇り高い獣なのだ。
昨夜は我の術を使い、ムリヤリに技を使える状態に覚醒させ彼の了解も得ずにあの技を使ってしまった。
魔族との闘いにおいて彼の【力】を使うには、どうしても【古き狼】にその【力】をこの狩りに使う事を同意してもらう必要があるのだ。」
またキャラが戻ったな。ツンデレは何処で憶えたんだよ?
っと、キャラのハナシは今はほっといて!
どーやって対話すりゃいいのかも判らんのに同意まで貰わなきゃいけないなんて。俺一人で出来る事じゃねーんじゃねーの?
「汝の気持ちはよく判る……。
よく判るが、これはどうしても避けては通れぬ道なのだ。
であるが、一人で出来ぬかも知れぬ……と考えるのは自然な事。
こんな事は初めてであろうから、今回はこの我も一緒に行こう。」
ナニ言ってんだよ、イリス君。
一緒に行こう……って、ドコへだよ?
アナタ【心の中に棲む】ってゆったじゃんよ。
どーやって一緒に行くんだよ? さすがにムリじゃね?
「……ムリではない。
我が汝に憑依し、共に心の中の【古き狼の棲家】に行き話すのだ。
もちろん敬意をもって……な。
時間が惜しい、用意はよいか?」
言うと同時に俺の中に意志を持った濃密な暗闇のような物が流れ込んで来た。
時間が惜しいのはわかるけど、心の準備ぐらいさせてくれ!
結構キツイんだから。ドット疲れるんだよ、コレ。
――次の瞬間、俺とイリスはだだっ広い空間に立っていた。
セピア色がかった殺風景な何も無い空間……。
ココが俺の心の中? 何にも無いじゃないか。
俺の心の中に棲むという【古き狼】の姿も見えなかった。
「ナンだよ、ここ?
何もねぇーじゃねーか。
俺の心ってこんな虚ろなのかよ?
今まで生きてきた思い出とかも何もナシかよ!」
「慌てるでない。今我々が居るのは確かに汝の心の内の【古き狼の棲家】だが、このままでは内なる【狼】に逢う事は叶わぬ。
汝があの技を使う時、いつも何をしている?
何かを忘れておらぬか?」
そーゆー事か!
【天狼派古流】の基本の一つに、この流派の持つ独特な呼吸法がある。
その呼吸法を使うと身体中に力が漲り、自分の中に強大な力を持った獣が覚醒るのを感じるのだ。そしてコレは今までに何千……いや何万回と繰り返してきた、日常動作と何ら変わらない物だ。
――次の瞬間、黒い疾風か吹き抜けヤツが現れた……。
※BGM「Double X Vision (A Live Celebration of 20 Years of Rock 'n' Roll)」
/BONFIRE
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