第15話 害虫駆除

 街の北の入り口から外へと出て少し歩いていると、牛や豚が放牧されているのが目に入った。


「あそこが牧場じゃな。ということはこの近くに奴らが隠れているわけか。」


 一先ずこの辺りを歩きながら見渡してみるとしようか。それで見付けれれば尚良し‥‥。

 牧場の周りをぐるりと一周している途中、儂の視界にあるものが飛び込んできた。


「む?あれは‥‥」


 視界に飛び込んで来たのは一匹の毒々しい色をした大きな蜂。それが群れをなして牧場の方へと飛んで向かっている。

 あれがポイズンビーじゃな。しかし今回は巣の駆除を依頼されておる‥‥あやつらを相手にする必要はあるかの?


「‥‥そうじゃ、一匹だけ残して他の奴らを全て倒せば恐れをなして巣に帰るはず‥‥そうすれば巣の場所がわかりそうじゃ。」


 そうと決まれば‥‥行動開始じゃ。ポイズンビーが飛んでいった方向に走り、後を追いかけた。

 そして牧場が間近に迫ると、放牧されている牛や豚が危険を察知し逃げ惑い始める。そんな中、麦わら帽子をかぶり鍬を片手に持ったふくよかな男がポイズンビーの前に立ちはだかった。


「これ以上俺の可愛い子ちゃんに手出しはさせねぇぜっ!!」


 そう吠えた男は引く様子はなくポイズンビーを迎え撃つつもりのようだ。


「なんじゃあいつは‥‥ここの牧場主かの?しかし見たところ戦えそうな感じではないのぉ~。」


 あそこにいれば真っ先に襲われてしまうじゃろう。まぁ捨て置いても良いのじゃが、目の前で襲われそうなあ奴を放っておくのも良心に欠けるかの。


「さて、じゃがまぁ‥‥あやつのお陰で奴らの前に先回りできそうじゃ。」


 口で詠唱をしつつ魔力を練り上げ魔法を発動させる。


「連携 交代チェンジ


 そしてポイズンビーが牧場主らしき男の前に迫った瞬間‥‥儂とその男の場所が入れ替わり、今度は儂がポイズンビーの目の前に立った。


「くっふふ‥‥大盤振る舞いじゃ、たんと喰らえ。緋篏華ヒガンバナ 乱れ散る緋い死の華ラピッドファイア


 背後に大きな魔方陣が現れ、そこから鋭く尖った炎の槍が何本も射出され次々にポイズンビーを貫き、激しく燃やした。

 そして唯一貫かれなかった一匹のポイズンビーは危険を察知しすぐに踵を返し逃げ去っていく。

 まさに予定通りの展開に思わず口角がつり上がる。さぁ‥‥儂を貴様らの巣へと案内するのじゃ。


「追跡 スニークストーカー」


 魔法で気配を消し巣へと一目散に逃げて行くポイズンビーの後ろを追いかけるのだった。


「な、なんだったんだ‥‥一体。」


 驚異が去り牧場で取り残された男がポツリと一人呟いた。





 そしてポイズンビーを追跡していると、なにやらボロボロの建物に入っていくのが見えた。


「廃屋を根城としておるのか。まぁ厄介なことじゃな‥‥む?」


 ポイズンビーが廃屋の中に入っていくとその中からこん棒を装備した緑色の醜悪な面のゴブリンが何匹か群れになって外へと出てきた。


「‥‥あやつら共存しておるのか?」


 ゴブリン達が向かった先に目を向けると縄に繋がれたファングボアがムシャムシャと野菜を貪っていた。

 

「ゴブリンがファングボアの世話をして‥‥ポイズンビーはゴブリンを服従させておると言ったところかの?まぁ、こっちは一ヶ所に固まってくれたほうが仕事がしやすいが‥‥の。」


 木陰から静かに魔法の詠唱を始める。


「氷地 アブソリュートゼロ」


「ギッ!?‥‥ガ‥‥ッ」


「ブッ‥‥モォ‥‥」


 魔物達が異変に気が付いたが時すでに遅く、パキパキと音をたてて凍り始めた。

 凍り始めた地面は魔物達の足をとらえ、そこからあっという間に体を全て氷が覆い尽くし魔物達の氷像が出来上がった。


「後はこれをアイテムボックスに収納して‥‥と。」


 出来上がった魔物の氷像を地面から切り離しアイテムボックスに放り込んでいく。これだけでもかなりの重労働じゃ‥‥。

 そしてすべての魔物の氷像をアイテムボックスに放り込み一息ついてから儂は廃屋へと目を向けた。


「さて、残るは巣の駆除だけじゃな。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る