第9話 ゴミ屋敷
ギルドを後にし、ひたすらにエリスの後ろを着いていくとどんどん街の中心から離れていく。そして狭い路地を抜けた先にはまさに豪邸‥‥という表現がふさわしい建物が鎮座していた。
「のぉ、エリス。まさかとは思うがこの屋敷がお主の家かの?」
「そうよ~、大通りからちょっと離れてるけど静かでいいわよ。」
ギィィィ~‥‥と軋む門を開け屋敷の扉にエリスが手をかけたとき、クルリとこちらを向いて言った。
「あ、あの‥‥ちょ、ちょっと散らかってるけど気にしないでね?」
「そのぐらい気にしないのじゃ」
カールと儂の研究室ほどではなかろう。あそこはそこかしこに書類が散らばっておったからな。
「ほ、ホントに?」
「大丈夫じゃと言っておろう。ほれ早く中にはいるの‥‥じゃ‥‥」
何度も確認してくるエリスに焦れったくなり、大きな扉を押して開けると足元を
そして屋敷の中は‥‥
当の本人といえば中の惨状を笑ってはぐらかす始末だ。
「‥‥‥じ‥‥じゃ。」
「え?」
「掃除じゃ~!!箒を持ていっ!!」
こんな虫どもとゴミの山に埋もれて暮らしとうない!!エリスに箒を持ってくるよう言うが‥‥
「ほ、箒?ど、どこいったかな‥‥ここかしら‥‥」
ガサガサとゴミの山を掻き分ける度に宙に埃が舞い、そこを隠れ家にしていた害虫がぴょんぴょんと跳び跳ねる。
「のぉエリス‥‥お主虫と共に暮らして何も思わんのかの?」
「あ、あはは~‥‥最初は気持ち悪かったけど今はもう慣れたわ。」
なんとも乙女らしからぬ太い肝の持ち主じゃ。カールなんかゴキブリ一匹出ただけで獄炎魔法をぶっぱなしていたと言うに‥‥
はぁ‥‥とエリスの姿を見てため息を漏らしていると、一匹のゴキブリが不快な羽音を響かせながら飛んできて、儂の顔の中心にピタリと止まる。
その瞬間、儂のなかで何かがプツンと音を立てて千切れるのがわかった。
「‥‥‥獄炎 ヘルフレア。」
地獄の炎で顔についたゴキブリを焼き払う。今カールの気持ちが理解できた。こやつはとても不快じゃ。見つけ次第焼き払い滅殺せねば気が収まらん。
「あっ!!あったあった!!」
そして儂が不快な思いをしている間にようやくエリスがゴミの山から箒を見つけ出した。
箒の先には大量の蜘蛛やゴキブリなどの害虫がくっついている。
「はいっ!!箒っ!!」
エリスは笑顔で虫付きの箒を差し出してくる。悪意がないというのは怖いものじゃ‥‥。
「ヘルフレア‥‥」
エリスが差し出してきた箒に触れることなく儂は付いていた虫ごと箒を焼き払う。
「きゃあっ!!な、なにするのよ!?」
こういうときはゴキブリを焼き払うときにカールがよく叫んでいたあの言葉が良く合うの‥‥
「汚物は消毒じゃあァァァァァッ!!獄炎ッ‥‥ヘルッフレアァァァァァッ!!」
目についた虫、ゴミを全て焼き尽くすまでヘルフレアを撃つのを止めることはなかった。
◇
そして数刻後‥‥
「はぁっ‥‥はぁっ‥‥貴様で最後じゃ‥‥」
ヘルフレアで最後まで逃げていたゴキブリを焼き払い、ようやくエリスの屋敷からゴミの山と虫が消えた。
「ふぅ~~っ‥‥最後に‥‥滅菌
空気を浄化する魔法で屋敷全体の空気を浄化し、ようやくエリスの屋敷の大掃除が終了する。
「おぉ~‥‥すごい綺麗になったわね~」
遠目でパチパチと拍手するエリスの元にずんずんと足音を立てて詰め寄り、注意を促す。
「もう散らかすでないぞ?ん?出たゴミは捨てる、物は散らかさない。わかったかの!?」
「わ、わかったわ~‥‥。」
ホントかのぉ~‥‥。いまいち信用できないが、エリスがまた散らかし始めたら儂が注意すれば良いかの。
「さ、さてっじゃあそろそろご飯にしましょっか?」
「‥‥‥お主に料理が作れるのかの?」
「ま、任せて欲しいわっ!!料理位できるわよ。‥‥多分。」
今多分と聞こえた気がするが気のせいじゃろ‥‥。まぁひとまずエリスの料理を馳走になるとしようかのぉ~。
味‥‥今まで感じることのできなかったもの、楽しみじゃの~。
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