第7話 力の呈示
まっすぐに男の目をのぞき込みながら問いかける。
「お主は誰の案で儂に嫌がらせを企んだのじゃ?」
そう問いかけると男はちらりと視線をある男のほうへとむける。その視線の先に目を向けると、一番最初に突っかかってきたあの男がそこにはいた。
そしてその目線に気が付くとそ奴は首を振った。
「お、俺じゃ‥‥」
「ぐっああぁぁぁッ!!」
男が否定した瞬間拘束されているほうの男の鎖が締まり、とげが肉にめり込んで出血し始めた。あまりの痛さに男は悲鳴を上げる。
「さっき言ったじゃろ?周りの者が嘘をついてもこの鎖は締め上げるとな。ほれ、かわいそうに出血しておるではないか?」
まぁ可哀そうだとは思っとらんがな。さてさて、首謀者はわかった‥‥次は
「さて、次の質問は‥‥そうじゃな、お主に質問をするとしよう。よいか?今度は嘘偽りなく話すんじゃぞ?でないと次は‥‥あやつがもっと苦しんでしまうぞ?」
「~~~ッゲッ‥‥ゲイルッ!!てめぇ、マジで嘘なんかつくんじゃねぇぞっ!!」
先ほどの痛みを味わった男は、ゲイルという名の男に念を押す。
さてさて、どんな質問をしてやろうかと頭を悩ませていると、ゲイルと呼ばれた男がエリスのもとへと走った。
「えっエリスさんっ!!あいつを止めてくれっ!!」
「は?言いつけを守らなかったのはあんたよね?自業自得、自分で解決しなさい。」
助けをエリスに乞うたが彼女は冷たく突っぱねる。今まで彼女の言うことを聞かなかったことでツケが回ってきたらしい。ま、完全に自業自得じゃな。
「さてさて、頼みの綱は切れてしまったようじゃな。ん?それじゃあ儂の質問に答えてもらおうかの‥‥っておや?」
「‥‥‥‥」
ガタガタと震えているゲイルなる男の近くに歩み寄ると彼はブクブクと泡を吹きその場に倒れこんでしまった。
本当に怖い思いをしておるのはこやつではなくあっちで縛り付けておるやつなんじゃがな。まったく自分勝手な奴じゃ。
「はぁ‥‥興醒めじゃ。」
パチンと指を鳴らし男を拘束していた魔法を解除し、体の至るところから出血している男に近寄る。
「ひっ!?も、もう止めてくれっ!!」
「動くでない。」
後ずさりして離れようとする男を制止させ目の前で魔法の詠唱をする。
「回復 ヒール」
詠唱を終えると緑色の光が男を包み、身体中の傷を癒した。ランクの一番低い回復魔法だから古傷や致命傷レベルの傷は治せんが、この程度の怪我ならばこれで十分じゃ。
ぽかんとした表情を浮かべる男に警告する。
「今回はこのぐらいで勘弁してやるのじゃ。次は無いぞ?‥‥これだけ見せつけても儂にちょっかいをかけてくる輩がいそうじゃからな。ちと次はどうなるか教えてやろうかの。」
絡まれるのは面倒じゃからな。今のうちに軽く力を示しておくことにしよう。
男達の前で再び魔法を詠唱をする。儂に記録してある魔法の中でもトップクラスに威力が高いものをな‥‥と言いたいところじゃが、そんなものを唱えたらここが跡形も残らんから注ぐ魔力をかなり減らして威力を低くしたものを見せてやることにする。
「事象の地平面 ブラックホール」
バチバチと音を立てて掌の上に時空を歪める小さな黒い球体が現れる。
「ちょっ!!それ大丈夫なのっ!?」
この球体に込められている魔力を感じ取ったのかエリスが焦ったように聞いてくる。
「大丈夫じゃ、それにまだ三割も魔力を注いでおらん。」
「そ、それならいいんだけど‥‥ここを壊さないでよね?」
「わかっておる。では、これを使ってお主らにちと面白いものを見せてやろう。」
アイテムボックスから昔カールが実験のためと捕まえてきたゴブリンを取り出した。そしてそのゴブリンにブラックホールを近づけると‥‥
「ぎ、ギギッ‥‥ギャアァァァ‥‥‥‥」
ゴブリンは自分の体より遥かに小さい黒い球体に吸い込まれていき、中で体が細く伸ばされ最終的にはブチブチと音を立てて千切れていった。
その光景を見た男達は顔を真っ青にしている。
「とまぁ‥このようにこの中に吸い込まれるとあのゴブリンみたいになってしまうというわけじゃ。ちなみにこの大きさでもお主らのような体格の人間程度ならわけなく吸い込めるぞ?」
男達に説明をした後掌の上に出来上がったブラックホールをきゅっと握りしめて消した。
そしてクスリと笑いながら男達に忠告する。
「次はこれじゃ‥‥わかったの?」
コクコクと全力で首を縦にふる男達に満足し、儂はエリスに向き直った。
「それで、儂はこれで冒険者として認められたかの?」
「えぇ、もちろん。それじゃカードを作るからこっちに一緒に来てもらえる?」
「わかったのじゃ。」
カードを作るためにエリスに着いていく。これで儂も冒険者の仲間入りじゃっ!!
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