第6話 嫌がらせへの報復
ギルドを出てここまで来た道を戻り、森のほうへと歩いていると先ほど儂に痛めつけられたはずの冒険者の男たちとすれ違った。あっちはこちらに気が付かなかったようだが‥‥何やら気味の悪い笑みを浮かべていた。
「まったく、エリスにおとなしくしておれと言われていたじゃろうに‥‥あやつも苦労人じゃな。」
言うことを聞かぬやつの苦労は儂も痛いほど知っておる。カールのことじゃ、エリスにも昔迷惑をかけていたに違いない。苦労人は最後まで苦労人か‥‥エリスも浮かばれんのぉ。
エリスに同情しているとあっという間に森の入り口に着いてしまった。
「さて、一時間しかないからのぉちゃっちゃと終わらせて帰るのじゃ。」
山に入り薬草を探していると、ふとある違和感に気が付いた。
「ん?確かここに生えてたと思ったんじゃが‥‥いや、これはもうむしられておるな。」
間違いない。薬草の茎からまだ水が滴っていることを見るにむしられたのはついさっき‥‥まさかとは思うがあの男どもがやったのか?
可能性としては無きにしも非ず‥‥じゃが、まぁ確証はないからの。
「まぁ、あたりに少しぐらい残っておるじゃろ。‥‥捜索 アイテムソナー。」
魔法で辺りに生えている薬草を探すが、驚くことにこの森の入り口付近には一切目的のものは生えてはいなかった。かといって奥に進みすぎれば制限時間内に戻って来れるかわからない。
まったく厄介なことをしてくれたものじゃな。
「まったく、なめられたものじゃな。この程度で儂が手詰まりになるとでも思っておるのか?」
まったくやるなら徹底的にやらんか。例えば根っこすら残らないほど焼き尽くすとかのぉ~‥‥。まぁ、それでも儂は手詰まりにはならんがな。
浅知恵にクスリと笑いながら両手を地面に当てて魔法を詠唱する。
「豊穣 セレスの抱擁」
詠唱が完了すると同時にキラキラとした光が自分を中心に現れ、それが大地に吸収されていく。その光を吸収した大地は枯れていた草木が再び青々とした葉をつけ。さらには根元からむしられていた薬草たちは根っこから新たな芽を出し、それがみるみるうちに成長を始めた。
「ふん、まぁこんなもんじゃの。これ以上土地を豊かにすると生態系が壊れかねん。」
手に着いた土をぱんぱんと叩き落とし辺りに目を向けると、草花が咲き乱れており先ほどまで無造作にむしられていた薬草も復活している。
「さて、採取して帰るとしよう。」
新たに生えてきた薬草を10本採取しアイテムボックスにしまう。そして余裕をもってギルドへの帰路につくのだった。
◇
時間にかなり余裕を残しつつギルドへと帰るとエリスが儂のことを待っていた。当然ギルドの中には街中で通りすがった男たちもおり、儂のことをにやにやと見ている。やはりこやつらが儂に嫌がらせをしたとみて間違いないじゃろう。
「どう?三月草は採取できた?」
「当り前じゃ、儂にかかればこの程度どうってことないわ。ほれ、これじゃろ?」
エリスの前にアイテムボックスから先ほど採取したばかりの三月草を出すと、男たちの間でどよめきが起こる。
「うん、鮮度もばっちり。これなら文句はないわね。」
「そうじゃろ?あぁ、そうじゃエリス一つ報告があるんじゃが‥‥。」
「あら?何かあったの?」
「実は儂が薬草採取に行った時、すでに森に生えている薬草がとりつくされておったのじゃ。」
その報告にエリスは驚愕し、じろりと細めた目を男たちに向けつつ儂に疑問をぶつけてくる。
「それじゃあどうやってこれを採取してきたの?」
「ふん、儂にかかれば摘まれた薬草を復活させることなど造作もないわ。こんな感じでのぉ。」
ギルドの中にあった手入れのされていない植木鉢を手に取り魔法を詠唱すると、何も生えていなかった植木鉢から草が生えピンク色の花が咲いた。
「便利な魔法もあるのね‥‥」
「まぁの。使うことはないと思っていた魔法じゃが、案外使い時というのはあるものじゃ。」
花の咲いた植木鉢をもって街ですれ違った男たちのもとへと向かい、話しかけた。
「のぉ?薬草はたくさん採れたかの?」
「~~っ‥‥な、なんのこった?言いがかりはよしてくれ。」
「ほう‥‥ではお主らはやってないと申すか。ではそれが本当かどうかお主自身の口で語ってもらうとしようかの。裁判 嘘偽りなき法廷。」
詠唱を終えると、どす黒い鋭いとげの着いた鎖が一人の男に絡みつき拘束する。暴れ始める男に儂はこの魔法の説明を始めた。
「その鎖はお主や周りの者がウソをつくたびにきつく締まり、最終的に主の体をずたずたに引き裂いてしまう鎖じゃ。せいぜい嘘をつかぬように気を付けるのじゃな。」
がくがくと震える男にさっそく質問を投げかけることにする。さてさて、ここにはどれぐらい正直者がおるかのぉ~。
「ではまず一つ目の質問じゃ。お主は誰の案で儂に嫌がらせを企んだのじゃ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます