第9話 神を喰らいし者(ゴッドイーター)
体の制御が全くできなくなってから何分だっただろうか、相手の攻撃を受け続けている。動かせないのだ。でも痛みはない。
ただ一つだけ、憎悪の気持ちが湧き出てくる。湧き出てくるとともに体に熱さがもどる。
しばらく攻撃を受け続けた後、急に体を動かすことができるようになった。いや、どちらかというと勝手に動いた。大振りの殴りを山の主に当てる。山の主は無様にも吹き飛んでいく。木々をなぎ倒し、大きな岩にぶつかり止まった。
「お姉ちゃん、どうしよう…。このままじゃご主人様の体が持たないよ…。」
「戻す方法を私は知らないの…。どうにか戻って来てほしいけれど…。」
2人の声が聞こえる。零奈の姿が見えない。もう既に2人の指示で外に避難しているみたいだ。
そう安心していた。直後体に魔力が流れる感覚があった。魔法を知らない俺でもわかる。これはやばいやつだ、と。
目の前に大きく魔法陣がいくつか現れ、強力な光を放ちながら魔法を発動させている。
ーゴッドイートを発動ー
魔法名を見た瞬間、体に大きな衝撃が走った。痛い、苦しい、熱い。目の前の景色が一瞬にして削がれる。大きく地面を削りながらモンスターを蹂躙する。常闇の森の半分が壊滅しただろう。山の主も消滅していた、なぜか生存が感覚でわかる。
(もういいだろう…もう…やめてくれ…)
そんなもので戻るわけもなく、周りのモンスターを全て蹂躙する。体の制御はやはりできない。
「ご主人様!もうやめてください!戻ってきてください!お願いします!」
(アルの声だ、俺を止めてくれ…頼む…)
「ご主人!止まって!もういいわ!山の主はやっつけたから!」
(エルの声も聞こえる…あぁ、俺はこのまま止まることができないのか…)
声の認識はできても、意識が戻ることはない。意識が弱いのだ。うっすらとしか確認ができない。耳からは声が何も聞こえない。2人は頭に語りかけてくれるから分かるが…。
「ーーって!ー止まって!!」
何か声が聞こえる。誰の声だ。わからない。
「止まって!!もういいよ!もうこれ以上この世界と自分自身を傷つけるのは、もうやめて!闘熾!!私のところに戻って来て!!」
(あぁ、零奈だ。零奈の声だ…)
零奈の声が聞こえると、目の前がぼやける。滲んでいく感じがある。
俺は今、泣いているのか。零奈を守るつもりが、傷つけてしまっていた…。
俺は意識を取り戻そうと踏ん張った。苦闘がいくら続いたのかわからない。目の前が真っ暗になった。
しばらくすると目が覚めた。気絶していたようだ。
「闘熾…無事で…本当によかった…。」
目の前で零奈が泣いている。
戻ってきたみたいだ。ステータスも正常値に戻ってる。
「ごめんなさい。私たちのせいで…レベルが合っていればこんなことにはならなかったのに。」
俺は2人の頭を撫でた。君たちは悪くない。自分がこんなだから悪いんだよ、と慰めた。
体が動かなかったので、しばらく休んでから街へ戻ることにした。
2人の新たな仲間(兼武器)が加わり、結果的には収穫はあった。忙しい1日になってしまった。
今回の事件でドレイド王国の地図から、常闇の森の表示が半分消されることになった。
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