第7話 常闇の森へ
北の大門を抜けて、しばらく歩いた。すると、遠くに大きな森が見えて来た。森が近づいてくるとともに少し不気味な感じが増してくる。さらに少し寒くもなってきている。早朝冷えていたこともあり、ローブを2人分持って来ていて正解だった。
「ここが、常闇の森…なのか?」
頭の中に流れてきた声を頼りに来ただけで、実際街の人に情報をもらったわけではない。だから合っているか不安だった。
もし違う場所だったら帰ってこられないかもしれない、と。
しばらく入るか悩んでいると、何か聞こえて来た。
「探しに来て、中に入って。私たちを見つけて。ここのモンスターは光に反応する。光がなければ襲わない。それだけは覚えていて…。」
あの時の声だ
今回は忠告付き。『光がなければ』これはどういう意味なのだろうか。常闇、と言うくらいなのだから中は暗いのではないか?光がなければ道がわからない。どうしていいかわからなかった。
とりあえず、零奈に光は出すな、と注意だけしておいた。
中へ入ってみると、予想通り真っ暗だ。何も見えない。ただ、何か感じる。声と同じ感覚だ。その方向に進めば正解だということがなぜか分かる。モンスターに出会わずに何やら明るい場所についた。
そこには1つの剣が刺さっている。他に何もない。これを抜け、ということなのか?少し疑問に思ったが試しに抜こうとしてみた。
「ふん!ぬぬぬ…。」
シャッ
「うわぁ!」
バタン、と抜けた反動で後ろへ倒れ込んでしまった。
「いてて…。」
「闘熾、大丈夫??てか、その子誰。」
大丈夫ではあるが、その子とは?俺たちは最初からさっきまで2人だ。誰もいるはずが…
「ん…んんん?なんか、重…たい…。ってうわぁ!だ、誰だよ!って服は?!」
目を開けてみるとそこには黒髪の小さな少女1人がいた。誰だ。知らない。見当もつかない。俺が抜いたのは剣だ。女の子を連れて来た覚えはない…。
色々考えながら女の子に自分のローブを着せた。
「ん…ぁ…。ご主人…様。やっと見つけてくれた。また会えた。嬉しい。」
ご主人様?また会えた?何を言ってるんだこの子は。
声はあの時の声と全く同じだった。声の主だということだけは理解ができた。
「…君が、俺に語りかけてたのか?でもなんでご主人様?」
女の子はキョトンとしていた。
なぜ?俺は君を知らないんだけど、と言いたかったが、傷つけてしまうかもしれないと思い、飲み込んだ。
「私を抜いたのはあなた。だからご主人様!何年ぶりかな?またご主人様と戦える!」
まぁ、ご主人様と言われる理由はわかった。この子はさっき抜いた剣なのだろう。なぜかすっと受け入れることができた。
何年ぶり?それだけは本当にわからない。主人になったことのある人は全て同じに見えているのだろうか。
「ご主人様、私たちは2人で1つ。だから見つけて、お姉ちゃんを。私がお姉ちゃんを感じ取るから。」
2人で1つか。確かにログには『双翼の剣(右翼)』と書かれている。じゃあ左翼もあると考えるのが妥当だろう。きっと離れ離れで寂しかったのだろう。
「一緒に探してあげよ!ね、闘熾!」
可哀想な子を助けない、という選択肢は俺の中にはない、と頷く。
女の子は嬉しそうだ。よかった、よかった。とピョンピョン跳ねて喜んでいる。
自分たちまで嬉しくなってくる喜び方だ。と顔を見合わせていると、
「こっち!こっちにお姉ちゃんがいる!」
と、女の子に手を引っ張られながら森を進んでいく。
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