第83話 サキュバスの化身
過去をすてたみどりではあるが、そんな彼女に添えれきれない自分。
もう一つ悩みがあった。
銀次郎はみどりで男性の役目を果たし得ないことが多かったのだ。
自分でも謎だった。
みどりがY子とくらべて魅力がないとは思わない。
みどりも自分が今まであったことのないような美貌の持ち主だったし、実際広島の街を歩こうものなら何人かの男はふりかえった。
彼女はそんな容貌の持ち主だった。
彼女のすべてを愛したい。
そう思うのだが、実際彼女と向き合うとどうしても身体が男として彼女を欲しなくなる。
「・・俺はいったいどうしたんだろう。彼女をこんなに愛しているのに。」
みどりは自分が男として彼女を欲しなくても、それを気づかないふりをしているのか、自分の腕の中で天使のごとくすやすやと眠ってくれている。
彼女を抱く方法、例外はあるにはあった。
過去、みどりを妊娠までさせた男を想像するのだ。
何も知らなかったみどりを、どうやって穢したのか。
みどりになんとつぶやき、みどりがなんと呻いたのか。
それをもし想像すれば、銀次郎はみどりを抱く力がよみがえった。
彼女が多少痛がろうと、自分は強引にみどりを抱けたのだ。
しかし、その抱き方をしてしまうと、自分はその後によりいっそうの自己嫌悪に襲われた。
何よりもみどりが可哀想に思えて、しかたがなくなる。
そんな銀次郎の心の思惑をみどりは知っているのかどうか。
彼女は銀次郎の腕の中で眠り続けている。
そんな彼女を心から愛おしく思うし、彼女が病を得て自分の心臓を欲したら、自分は躊躇なくそれをくれてやろうとも思う。
それなのになぜ。
・・・一方でY子の場合は、躊躇無く抱けた。
彼女が自分の身体に口づけをした瞬間で自分は魔法にかかったようになり、彼女が銀次郎の耳をかじり、首筋に口づけをされたり、肩を噛まれると、身体に電流が走った感覚を感じる。
どうしてだろう
Y子のそれはみどりのように受け身では無く、自分から男と悦び、奉仕するタイプのものであったが、そればかりではなくて、彼女の身体自体がまるで銀次郎の身体と溶け合う割り符のような相性のよさを持っていた。
彼女と身体を交した後は、ここちよい疲労感に包まれる。
Y子は銀次郎をその身体で魅了していたことについて、それを自分で自負していたようなふしもある。
銀次郎の上になって、彼女が満足し終えたとき、自分の顎に額をつけながら彼女は、熱い息でこういった。
「・・うちはぎんじろうの女・・無茶苦茶にしてくれてええんよ・・・」
身体だけでは無くて、心の最後のありかまで、彼女に吸い取られそうな気がした。
良心が麻痺しないうちに、Y子と離れるべきだ。
そんなことを何十回思っただろう。
上から見下ろすY子。
その美しい胸に自分は額をつけてこういった。
「・・Y子、君は悪魔のような女だ。・・・」
彼女はだまって自分を抱きしめた。
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