第18話 別れを思う

 

  カサカサと乾いた音がして季節の移ろいを感じた。落ち葉が風に吹かれてアスファルトの道を覆い尽くしていく。

 祐樹とはプロポーズを断ってからというもの、多少の当たり障りのないメールをする程度で一度も会うことはなかった。もう決心しなければいけないと思うけど心に空いた穴はなかなか塞がらない。あの時に頷いていたなら今頃は結婚準備に忙しかったかもしれないのに。梅さんの飴のおかげで過去世を知った今なら結婚に恐れを感じることはなかったのかもしれない。

 でも、時間を巻き戻すことはできない。

 祐樹の心が私から離れていったとしても悪いのはこの私なのだ。

 だから、もう自由にしてあげよう。

 そして、私も自由になろう。

 最後に会ったあの時と同じこの場所でスマホを取り出した。久しぶりに愛おしい人の声を聞いた。

 「今までありがとう。。。さようなら。」と、小さな声で言って電話を切った。

 この季節に心が重なっていった。

 冷たい風が吹き抜けていく。

 やっぱり淋しい。

 

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