第4話 採用
[まえがき]
ここから主人公視点での1人称になります。
◇◇◇◇◇◇◇
特殊計算装置技術者の山田女史から就職について依頼を受けた俺は、さっそく実験部人事課の課長を務める同期にメールを送ったところ、ものの5分もかからず返事が返って来た。内容は、即採用。しかも彼女は俺のもとでX-71専任の技術大尉となるようだ。序列的には、ナンバーツーになる。異常ともいえる人事課の対応の速さだ。
結果オーライだからいいようなものだが、いったい人事はどうなっているのか謎だ。まあ、山田女史がいくら外部の技術者といっても、実験艦の内部で作業することが許された人間であることからして人物的には調べ上げられているはずだ。なので採用にはなにも問題ないのだろう。
人事から送られてきたそのメールには添付ファイル1として彼女の略歴が添付されていた。俺はその略歴を開いてみて驚いてしまった。
氏名:
05年、皇国第1数理大学主席卒業
07年、同大学大学院博士課程修了、数学博士、数理学博士、数理工学博士。
07年、皇国中央研究所演算装置開発部部長、のち研究員に降格、新型演算装置の開発に携わる。
11年、皇国中央研究所退職
11年、皇国演算株式会社技術部第2課長
研究員に降格という一文が気にはなるが、こんなのが俺の下で働くのか? いや、こんなハイスペック女史の上で俺が働けるのか?
とはいえ、彼女が実験部に採用された上に俺の下に配属されたのは事実なのだ。添付ファイル2は、彼女へ俺が渡すべき辞令で、添付ファイル3が彼女のIDカードを作成するためのデータファイルだった。さっそく辞令はプリントアウトし、IDカードは専用のカードライターにデータを送って用意した。そして、明日の朝、実験部事務所内の俺の執務室に来るよう彼女にメールをいれておいた。
翌朝。
事務所の俺の執務室に山田裕子が指定時刻のきっかり5分前に現れた。
あまり上等とはいえない官給品の応接セットに向かい合って座り、軽く挨拶をしながら、俺の
「おはようございます。それで、
山田裕子、貴殿を航宙軍実験部技術大尉として採用する。配属先はSS-72、実験部URASIMA出先事務所とする。当面実験艦X-71の専任とする」
「こういった辞令です。よろしいですか?」
「はい。ありがたく拝命します」
「そうですか? それで、明日からX-71は性能試験を始めるのですがどうします?」
「どうとは? とうぜん同行いたします」
「それはそうですよね。
おい、吉田少尉、お茶はいいからちょっとこっちに来てくれ」
「はーい。今いきまーす」
「涼子、ここは実験部といってもれっきとした軍隊なんだぞ。『はーい』も『いきまーす』もないだろ」
「それをいうなら、『涼子』はないでしょう」
吉田少尉がお茶のカップを乗せたお盆を持って現れた。カップを山田新大尉と俺の前に置き、
「それで、どういったご用です?」
「ああ、ここにいる山田技術大尉だがな、今日から俺の下で勤務することになった。明日からのX-71の性能試験にも同行する。おまえが当面面倒見てやってくれ」
「吉田少尉、山田です。よろしくお願いします」
山田大尉が立ち上がり、吉田に敬礼した。その敬礼に吉田が慌てて答礼した。素人とは思えない山田大尉の見事な敬礼に俺まで驚いた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。それでは大尉の部屋を用意しなくてはなりませんね」
そこで、携帯端末を操作した吉田が、
「ちょうど、この部屋の隣が空いています。そこにデスクやその他の備品、こういった個人用携帯端末などを用意しておきます」
「ありがとう」
「俺は、ちょっと出かけてくるから、あとはよろしくな」
二人の話を聞いていても仕方がないので、散歩に出ることにした。後ろの方で吉田少尉が山田大尉に説明する声が聞こえてきた。
「それでは実験艦乗艦時の注意事項を説明をします。そのあと、戦闘服など採寸しますので……」
人工惑星URASIMAではシリンダーの内側に施設を作ることで1Gの重力加速度を常に得ているわけだが、散歩は推奨されており、手の
ぶらぶら歩いていたら航宙軍の駐留艦隊が管轄する区画まで来てしまった。見知った連中もそれなりに多いので簡単に敬礼しながら歩いている。
ここ竜宮星系には、軽巡洋艦1、駆逐艦6、補給艦1の実戦部隊とこの部隊を支援する支援要員からなる第44艦隊がこのURASIMAに司令部を置いていて駐留している。
第44艦隊の司令官は
[あとがき]
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お気づきの方もいらっしゃると思いますが、村田某、吉田某などの苗字が出てきますが、拙作『異世界で魔王と呼ばれた男が帰って来た!』https://kakuyomu.jp/works/1177354054894079776 の登場人物の子孫のような設定にしています。
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