第79話 敵襲
残して来たポシルの分裂体が、気配察知で敵を発見。すぐさまこちらのポシルに、それが伝えられた。
「わかった。すぐに帰ろう。すみません皆さん。自分が護衛中の商隊が魔物に襲われそうなので、これで失礼します。大変だと思いますが頑張って下さい」
【転移門】
「ありがとうございます。タカヤ殿」
ワニルと握手を交わし、レプラコーン達に見送られながら転移門をテント内に繋ぎ帰還する。
『マスター!』
テント内に戻ると、すぐに分裂体ポシルが気付きテント内へ入ってくる。
この甘えようは、分裂体のポシルも自我があるのか随分と寂しかったようだ。
「タカヤさん!?」
続いてフィーネもテントの外から顔を入れ中を確認していた。
「ただいま。ポシル。状況は?」
『はい。マスター。現在誰も気付いておりません。敵意のある魔物がこちらにゆっくりですが、まっすぐ向かっています。数は4体比較的強いです』
「えっ?えっ?どういう事ですか?」
ポシルの報告に、理解が追いつかないフィーネが少し混乱した様子で、こちらのやり取りを確認する。
なぜ出掛けたはずのタカヤがテントにいるのか疑問に思ったが、魔物が近づいている事を聞くと、すぐに魔物への関心が上回ったようだ。
「うん。ポシルの気配察知は優秀なんだ。ごめんフィーネ。フィーネはフェオンさんのテントに言って、まっすぐ魔物が近付いている事を伝えて。数は少ないけどちょっと強いみたいだから戦闘は避けられないって」
「う うん。分かった。タカヤさんは?」
「うん。僕は、魔物に備えておくよ。負けはしないと思うけど僕も確認したいしね」
「分かった。気をつけてね」
気配察知をかけても、魔物の気配はまだ分からない。
現在の探知距離は、半径200m。
ポシルは、数体の分裂体を周囲に配置し警戒していた。魔物までの距離は約500m。警戒はしているようで、ゆっくりと進みまだ探知の距離には入って来ない。
「来た」
残り200mを切ったところで、急に速度が上がる。
数は4。
人型の魔物であるリザードマンナイトと、地を這うように四足歩行で移動するロックリザードだ。
気配は重なってる。
ロックリザードに騎乗しているのか!
「タカヤさん!」
フィーネと共に、【赤月の護り】のメンバーも到着した。
どうやら、ある程度の護衛をフェオンさんの所に残して、自分達が駆けつけたようだ。
「フィーネ。シャウさん!魔物は、ロックリザードに騎乗しているリザードマンナイト!フィーネはすぐに周囲の護衛冒険者に伝達」
「はい!」
「来ます!」
迫り来る2組の魔物を前にフィーネが後方の冒険者の一人に状況を説明しすぐに戻ってくる。
そして弦楽器を取り出し、前の曲とは違う少しテンポの速い軽快な音楽を搔き鳴らし始めた。
すでに目視で確認できる距離まで近づいている魔物に対し、左右の大盾を前に出し構えるガイファさんとクオさん。
そして、その後ろにシャウさんとユニーさん、そして僕が構え、後方に魔術師のピータさんが詠唱を開始した。
後方ではフィーネが軽快な音楽と共に歌を歌い、そしてメロディが終わると同時に不思議な高揚感に包まれる。
【解析】
【Name】 タカヤ
【age】 18歳
【職業】 (1.魔術師・暗殺者(転移者) 2.自由人 )3.魔物使い
【状態】 火歌の加護※大地の上にいる時に限り有効。力上昇(中) 体力上昇(中)残り29分
『凄いですね。マスター。魔法とは別に攻撃力と防御力 HPが増加しています。風歌とは違う効果のようですね』
「あぁ。力が湧いてくる」
分裂体を吸収し、1体に戻ったポシルも歌の効果を受けて、その効果を実感しているようで触腕を振りやる気を漲らせた。
「どー せいっ!!」
「ふんぬっ!!」
「ギャガッ!!」
両手に持った身長と同じ丈の大盾を両手に構え、気合いを入れて、ガイファとクオの2人がロックリザードの眼前に盾を突き出す。
この大楯は所々に突起が突き出し、防御と同時にダメージも与えられる作りとなっていた。
大きな衝突音が響くと同時に、血だらけのロックリザードが跳ね上がり、リザードマンナイトが投げ出される。
「「がっははー。そりゃ《フルスイング》!!」」
さすがは双子。
台詞も動作もシンクロし、2体の前脚の浮いたロックリザードAの左側面そしてロックリザードBの右側面に対し、大盾による力任せの一撃が加えられる。
すでにバランスを崩していたロックリザードに、それを防ぐ手立てもなく飛んで行き、跳ね飛ばされたロックリザード同士で衝突し、さらなるダメージを与えた。
ガイファとクオ2人の大楯使いによって、戦いの幕が開かれた。
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