第76話 小人族

 目の前には、緑や赤のボロボロの服を着た男女が12人。怯えた表情で互いに身を寄せていた。


 少し丸みを帯びた体。かといって太っているわけではなく、ノームやドワーフのように髭があったり髪の毛が異常に多いわけでもない。


 子供?


 まだまだ筋肉質な締まりのあるような体になる前の、幼児のような体型。

 身長も30〜40cmほどで、正直最初に助けた時は子供だと思い、声を掛けようとした……。


「私らは次は何処へ連れて行かられるのですかのう」


 怯えた声で、牢屋を開けた僕に問いかける。

 捕らえられていた残りの11人を庇うように一歩前に進み、そう問いかけたその人物は、見た目通りの幼児なんかではなく立派な成人男性であると感じさせた。


 レプラコーン(小人族妖精種)

【Name】ワニル 

【age】 121歳

【職業】 1.超級細工師※細工師から上級細工師を経てLv50でクラスUP 器用に補正 大

【Lv】 50

【HP】 220/220

【MP】 520/520

【力】 155

【体力】 125

【器用】 620

【知力】 220

【素早さ】145

【魔力】 225


【スキル】

 ノーマルスキル

 細工<Lv7> 彫金<Lv5> 裁縫<Lv4> 農業<Lv3>

 土魔法<Lv4> 鉱物鑑定<Lv3>


 あまりの堂に入ったその出で立ちに、つい解析を使って観てしまった。


 レプラコーン。

 僕の記憶だと、緑の帽子を被った顎髭のお爺さん的な姿だったが、この世界のレプラコーンは幼児のような姿だ。


 しかし見た目のイメージとは違い、能力やスキルはイメージ通りのものを持っている。

 すなわち、装飾品のプロフェッショナル。


「いやいや。どうか怯えないで下さい。僕は冒険者のタカヤといいます。そして肩にいるスライムがポシルです。皆さんはもう自由です安心して下さい」


 ’自由’その言葉を聞いた彼らは、静かにゆっくりとその言葉の意味を理解し、怯えていた表情から一気に解放された喜びを爆発させていった。


「おぉーおー ついについに!」

「有難うございます!」

「あなた!」

「おぅ!」

「なんと なんとお礼を言ったら!」

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「「「「「「「「「「「「ありがとうございます!」」」」」」」」」」」」


 一斉に頭を下げるレプラコーン達。その目からは涙が溢れ落ちていた。


 彼らが囚われの身となったのは、今から4年程前。もともとこのアジトは、彼らレプラコーンの一族が崖の中を掘り出し住んでいた場所であった。


 彼らは、その器用な指先を頼りに細かな装飾で飾り付けられた装飾品や、革靴などを作り特定の商人に商品を売り生計を立てていた。


 この世界でも小人族の多くは物作りの秀でた種族が多く、彼らレプラコーンも例外ではなかった。


 しかし4年前のある日、取引が終わった帰りに、当時冒険者として商人の護衛をしていたゲースルに、後をつけられ住処が見つかってしまったと言う事だった。


 そこからは悲惨な生活の始まりとなり、女子供を人質に取られ、朝から晩まで売買用の装飾品を作らされ、仲間は1人、また1人と過酷な労働に耐えられず亡くなってしまったと唇を噛み涙を流していた。


「他に捕らえられた人はいないの?あなたたちだけでなく、普人種の人達もだいぶ襲われて連れ去られているみたいなんだけど」


「はい。私らはこうして盗賊の金ヅルとして生かされておりますが、男は殺され、女はしばらく前にオークションに連れて行かられ、それっきり……。」


 聞いてみると、数週間前に裏オークションで売るために女達は連れていかれ、奪った物も運ばれてしまっていた。


 どうやら今回は、そのメンバーが戻ってきたため久しぶりに盗賊稼業を再開する予定だったらしく、何もなければ明日峠の移動中に襲う予定だと、見張りが話していたのを若いニルネと呼ばれるレプラコーンの女性が聞いていた。


「そっかやっぱり明日襲うつもりだったのか。今日アジト含め潰せたからよかったのかな」


 それよりも、ここは元々彼らの住処。

 入口も小さく、何もなければ4年以上もの間見つかることがなかった場所だ。


 盗賊達のサイズに崖内の間取りは弄られているが、彼らにとって住みやすい場所である事は確かだろう。


「それで、私らは結局どうしたら良いですかのう」


 すでに怯えは消えたが、困惑している表情は消えていない。彼らはこの4年間死にものぐるいで生きてきた。


 残りの仲間が12人になっても、いつか自由になると信じて。


 彼らレプラコーンの寿命は、普人種の2〜3倍の150〜240年。時間はあった。この盗賊団が討伐され助け出されるその瞬間を夢見て。


 ならばやる事は1つだろう。


「このままここに住めばいいんじゃない?運がいいのかボスを脅して聞いた限りだと、明日のために盗賊団員は全員集合。このアジトの場所を知っているのももういないみたいだし。今度は見つからないように気をつけてね」


 自分がここの盗賊団を討伐したことを報告するのは簡単だ。


 しかし、そのためにはこの場所を明かす必要があり、彼らの隠れ家が白日の下にさらされてしまう。


 盗賊団員は全てポシルに吸収。装備一式は貰うがどうせ報告するような金品もない。それならばレプラコーン達に元の生活に戻ってもらうのが一番だろう。


「おぉタカヤ殿。申し訳ございません。名乗るのが遅れました。私は族長のワニル。私らレプラコーン一族は、生涯貴方からの恩を、いやこれから産まれる子供らにも伝えていきましょうぞ」


 胸の前に手を置き、全員が軽く目を閉じ頭を下げる。レプラコーン族最大の感謝の意を示す所作だ。


 そして、この4年で亡くなった元族長のワニルの祖父と次期族長の父親に変わり、新たな族長となったワニルが全員に目配せをし、全員が頷いたのを確認し、こちらに視線を向ける。


「タカヤ殿に是非、お見せしたいものがございます」

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