第62話 奴隷?

 身だしなみを整え、フェオンさんからの手紙を持って指定された宿屋に辿り着く。


 宿屋はこの《クイート》の中で、最も格式があり、部屋もスイートルームのみという超高級宿屋となっている。


 流石は大商会のトップだ。


 勿論入口には、ホテルが雇っている屈強な護衛が立っており、周囲を警戒している。


「すみません。これを」


 こちらが近寄った事に警戒していた護衛の1人に、宿屋の地図を渡す。


 護衛は地図を手にし、裏と表を確認したところで地図の裏に手を当てる


「開錠」


 護衛が手をかざし一言発すると、光とともにフェオン商会のエンブレムが浮き出てくる。


 そして、それを確認したもう1人の護衛が頷きすぐさま宿屋に入っていった。


「はい。確かに確認致しました。フェオン商会のフェオン様にお取次ぎ致します。中で少々お待ち下さい」


 扉が開き、案内されるまま中に入ると、そこは高級宿に相応しい見事な作りのフロアとなっていた。


 まさに絢爛豪華。


 大理石のような石の床。


 そして正面に目を向けると、そこにはゆったりと内側にカーブを描く、左右対称の階段。


 その階段の手すりには、細かな美しい鳥の装飾が施され、その一つ一つの鳥の目には様々な色の宝石のように煌めく石が埋め込まれている。


 その中央部にはフロントがあり、そして天井には非常に大きな光り輝くシャンデリアがかけられている。


 また美しい花や木が、計算され尽くしたように配置され嫌味のない美しさを演出していた。


「おー。タカヤさんよく来てくれた。フェオン様の部屋まで案内する。付いてきてくれ」


 フロント横の階段から降りてきて、出迎えてくれたのは【赤月の護り】のリーダー。シャウさんだった。


 赤月の護りには、リーダー シャウさんの他に、斥候のユニーさん。

 大楯タンクのガイファさんとクオさん。

 そして魔術師のピータさんがおり。


 5人パーティで、フェオン商会専属護衛として活動する事になったと言う事だった。


 部屋に着くまでの短い時間だが、お互いの近況を少し報告したり、パーティの話を聞けた。


 どうやら護衛が専門のパーティといっても、護衛依頼を最優先するものの、護衛以外の時間は普通の冒険者として依頼をこなしたり、ダンジョンに潜ったりしている普通の冒険者パーティだった。


 そんな話を聞きながら、2階の南東角部屋の前に到着した。


「フェオン様、タカヤさんをお連れしました」


 軽いノックの後、部屋に入り挨拶を交わす。


「タカヤさん。よく参られました。その節は碌におもてなしも出来ず申し訳ない。ただせっかく来て頂いたものの。今回もそこまで時間も取れないのが現状、大変心苦しいですが、さっそく本日のご用件である奴隷についてご説明しましょう」


 フェオンさんは、挨拶も早々にゆっくりとわかりやすく奴隷について説明をしてくれた。


 しかし、本当にこんな初歩的な説明にフェオンさんの時間を取って貰っていいのだろうか。


 そんな普通じゃあり得ないであろう状況に、場違い感を感じながら、だからこそしっかりと説明を聞く。


 そして説明された奴隷については、まとめるとこんな感じだった。


 1.奴隷の種類としては、一般奴隷 と 犯罪奴隷 が存在する。


 2.一般奴隷

 借金の為売られたケースや、親の奴隷落ちと共に子も奴隷化した場合などがある。

 奴隷狩りでの違法な奴隷も一度奴隷になってしまえば奴隷として扱われる。

 犯罪を犯していない奴隷全般


 3.犯罪奴隷

 犯罪を犯して奴隷落ちしたもの。

 重罪人は最初から強制労働者として鉱山などに送られるが軽犯罪者は一定期間売り出された後、強制労働者として安く国に買い上げられる。


 4.一般奴隷における戦闘・家事・労働及び性行為の、可能か否は奴隷によって決まっている。

 できる出来ないの制限によって、値段も変わる。


 5.犯罪奴隷は基本全て可能。

 ほとんどが戦闘奴隷の使い捨てか、超重労働を課せられる。


 6.この世界では一度奴隷落ちすると基本解放される事はない。犯罪奴隷は解放出来ない。


 7.衣食住は奴隷主が保証する。


 8.奴隷は首に奴隷魔法を組み込んだ首輪をつける。


「借金奴隷であっても、解放される事は少ないんですか?」

 借金分働けばいいような気がするが、違うのだろうか。

 借金の為自分を売るなんて、物凄くリスキーなような気がするんだけど。


「そうですね。例え其れ相応の働きをしても、解放されてしまえば、衣食住は自分が用意する必要がありますし、元奴隷となると、なかなか雇われる事はないのです。なので、奴隷とすれば中途半端に解放されると再度の奴隷落ちや生死に関わるのですよ。なので解放されるとしたら、元の主人にそのまま雇われるケースが多いですね」


 言われてみればその通りだ。

 色んな小説で色んなタイプの奴隷契約を読んできたが、なるほど実際の話を聞くと、しっくりくる。


奴隷の世界も甘くないようだ。

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