第63話 百戦錬磨

「ちなみに奴隷の相場ってどのくらいなんでしょうか」


 一通りの説明を理解したところで、相場について確認する。


「そうですね。犯罪奴隷はやはり安いですね。リスクを負いますので銀貨50枚から。一般奴隷もピンキリですが、家事のみで金貨3枚から、容姿にもよりますが美しく性行為も可能な女性で、金貨500枚なんて奴隷もざらにいますね」


 ほえ〜。性行為目的で5000万円か……。金銭感覚が狂いそうだ。


 まぁ貴族とか大金持ち達の世界だろうな。


「ちなみに僕は戦闘も出来る奴隷を探しているんですが、その場合は……」


 あくまでも目的は、一緒に冒険出来る人材だ。

 家事だけ労働だけなんて、定住先を当分持つつもりの無い僕には、奴隷の持ち腐れだ。


「その場合、男の戦闘奴隷で金貨5枚〜数100枚。女性で金貨3枚〜同じく数100枚です。能力、種族、年齢、所有スキルで大きく変わります。ちなみに男は龍人族、女はエルフ族が高額で売りに出されることが多いですね」


 男の奴隷でもいいが。

 やはり僕も男だ!余程の事がなければ女の子から選ぼう!


 心の中で、新たな決意を胸に灯す。


「しかし、女性で戦闘可能な奴隷は男性に比べれば実用的な奴隷は少ないでしょうな。私の所でも数人いるかですよ」


 はい。

 百戦錬磨の大商人様には、しっかり見透かされているようです。


「はは。ですよね。まぁある程度覚悟があれば育てることも可能ですし、そこは相性重視でいきますよ」


 まだ陽の目を見ていないが、創造神の加護に神の御心がある。これを使えば育成可能なはず。それにスキルも取得補正が掛かるから他の人よりもかなり優位になるはずだ。


「なるほど。そうですなタカヤさんは、ご自身も優秀な冒険者であるのと同時に、優秀なテイマーだと聞いております。魔物の育成、特にスライムを戦闘用にするのは、非常に困難。きっとそのノウハウは奴隷の育成にも役立つでしょうな」


「そうですね。いい人がいれば是非ご紹介下さい」


 流石は天下の大商人。

 こちらがテイマーであることも、ポシルの存在も知っているようだ。


 まぁ困ることもないが、きっちりこちらの情報は調べ上げているようだ。


「そうだ。タカヤさん王都に来られませんか?あいにくこちらの街ではあまり奴隷の売買は活発ではありません。王都に行けば私の店以外にも奴隷商会をご紹介させて頂きますよ」


 どうやら、今の仕事が後3日程で片付き、その後すぐに王都に帰還するらしい。


 今回はその王都迄の護衛を兼ねての誘いで、正式にBランクの依頼として、ギルドに指名依頼をするとの事だった。


 王都迄に道のりは約2週間。

 途中いくつかの小さな村や、町に立ち寄りながら補充や売買などを行うそうだ。


 通常ギルドのBランク昇格条件として

 1.1回以上のBランク相当の依頼達成


 2.1回以上他パーティ合同依頼の達成


 3.1回以上の護衛依頼の達成


 4.昇格対象者用の講義の受講

 がある。

 今回の依頼を受けるだけで、1〜3の項目をクリア出来てしまう。


 それに何より、この世界の王都に行ってみたい!


 あー。

 そうか、態々フェオンさんが時間を取ってまで、奴隷の説明をしたのはこのためか。


 それでも、やっとこの街以外の世界を見れる!

 もう気持ちは決まっていたが、答えは明日で良いと言われてしまった。


 きっと僕の焦る気持ちを見抜かれたのだろう。


 次の仕事に向かうフェオンさんと、赤月の護りのメンバーを宿の前で見送る。


「タカヤ!お前さえ良ければ、一緒にパーティとしてうちのメンバーにならないか?他のメンバーもタカヤならって誘え誘えうるさいんだ。どうだこの護衛依頼が終わったら判断してくれればいいから。一応考えといてくれな」


「嬉しいですね。ありがとうございます。はい考えておきますね。お気をつけて!」


 そう言って手を振り、馬車を見送った。


 パーティか………ん?

 体調。悪くならなかったな。

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