第58話 属性スライム

「いない!」


 はい。なめてました。本当になめてました。


 ノーマルスライム。


 そういえば、ギルドの討伐依頼にもほとんど掲載されていないし、変だと思ったんだよ。


 グーボさんからの依頼は、2日以内に取り出した4属性のノーマルスライムの核を持ってくる事。


『ポシル。いたらすぐに狩っちゃっていいからね!』


『はい。マスター。レッドが3体 ブラウンが2体 ブルーとグリーンが1体ずつですね。お任せください!』


 この世界でのスライムは、よほどではない限り魔物達の大好物の食料の1つであった。


 各属性の魔力を効率よく摂取でき、しかも低レベルのうちは攻撃手段もなく、打撃耐性はあるものの、斬撃が弱点の為に牙や爪があるような魔物の索敵に察知されれば、速攻で摂取されてしまう。


 よほどと言うのは、ポシルのような強個体や高レベルにまで育ったノーマルスライムだ。


 今狩れているのも、そうした運良くレベルが上がり、攻撃する手段(溶解液や属性攻撃など)や身を守る手段をある程度身につけた個体だった。


「ったく。気配察知に引っかかったと思えば、行くまでに食べられてるし……。どんだけ栄養源なんだよ!」


 森の中はほぼ全ての属性が手に入るが、レッドは流石に生まれにくい。


 水場の近くでブルーとグリーンに出くわした後、今は生まれるの待ちの状態で、ポシル軍団100体と高速移動中の僕とで、網を張っている。


『ですがマスター。先ほどの街中での分裂もあり、時間的に後1時間弱位しか分裂させれません。これを超えれば一斉に99体が消滅して能力も奪われてしまうので、ご注意下さい』


 現在時間は、16鐘前といったところ。迷子からの脱却に1時間弱使ってしまい。今は捜索して2時間。


『1日4時間制限だね。多少クールタイムで回復したとしてもそんなもんか。わかった。危なくなったら戻って。今日はもう分裂することもないだろうから』


『分かりました。マスター。あっブラウン1体 グリーン1体回収しました。同時にニードルファングスネーク1体を吸収しています』


 ニードルファングスネーク

 ※牙が中央に1本だけ生えており、獲物に噛みつき牙を軸に回転しながら弱毒を注入。締め上げる。


『了解。今回は回収を考えなくていいからね。僕は洞窟と岩場に設置した罠を確認してくるよ。引き続きよろしく』


【転移門】

 今捜索しているエリアとは街を挟んで真反対のエリアに向かう。


 ここは岩場と、洞窟が多くあるエリアになっている。


 スライムは魔力だまりに発生する魔物で、ある程度の規模の魔力だまりを作ればスライムが産まれると、ポシルが話し、そこの奥に僕とポシルで各属性の魔力だまりを作り、同時に他の魔物に食べられないよう保護した《簡易スライムほいほい》を作っていた。



「そろそろ2時間だからスライムが生まれててもいい頃だな」


 この方法でオリジンスライムが量産できるかと考えたが、そうは甘くないらしく。人工的な魔力だまりで産まれるのは属性スライムのみとの事で、オリジンスライム部隊は夢と消えた。


「おっラッキー。レッドが3体とブラウン1体ができてる。それ以外は消えちゃったか」


 この方法でできる確率は実は、そう高くない。


 なので今回20箇所以上に作った魔力だまりのうちスライムが生まれたのは4体

 これでもかなりの幸運であった。


「でもこれで、後ブルー1体だ」


『ポシルー。残りブルー1体だから水場付近以外のポシルは戻していいよ。捜索も水場中心にお願いね』


 と言ってもここら辺の川や池なんかは調べ尽くしちゃったからな……。


「あっ!あそこならいけるか?」


 すぐにゲートを発動し、宿の部屋の中に移動する。


 階段を降りると、コックスさん達が夕食の準備の為、忙しく働いていた。


「なんだい。タカヤ帰っていたのかい?気付かなかったよ。出かけるのかい?気をつけて行ってきな。そういえばセリナとは会ったかい?なんだか探していたようだけど」


「はい。会いました。そういえばセリナさんってラーダさん達の姪に当たるんですね。初めて知りましたよ。びっくりです」


「ん?言ってなかったかい?そりゃすまなかったねぇ。セリナは妹の子供さ。まぁ妹も早くに亡くなったから実質娘みたいなもんさ。良ければ貰ってくんな」


 にやり、と色々なものを含んでそうな笑いを浮かべたラーダさんの言葉。


「ぼっぼくはそんな。そんな感じには思われて、そりゃセリナさんはす すてきですけど おとうと と姉?」


 あの勘違い告白未遂事故を思い出し、一気に恥ずかしさが襲ってくる。


「ありゃー。あんた意外に初心だねぇ。そんなんじゃ彼女のひとつもできないよ!がんばんな!ほれ行ってきな」


 呆れられながら背中を押され、店から外へと出る。


 なんだか色々と勘違いさせてしまっているような気もするが……。


 頬を一度強めに叩き、気持ちを入れ替えると、気配察知をかける。


 そして、ブルースライムの気配を探る。


「よし、やっぱりいるな」


 残り1匹の目処が立ったな。急いで向かおう。



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