第57話 二柱

「それじゃあ。希望を聞くんだな。どんな防具を作ればいいんだな」


「まずは、ランクCからB位までの討伐依頼に耐えられるものを。金属鎧でもいいですが、基本動きを阻害しないもので且つ、魔術を阻害しない物でお願いします。僕は基本、隠密行動が得意で死角からの近接もしくは、魔術で攻撃をするスタンスです」


「ん〜?タカヤは近接なのか?魔術師なのか〜?」


「クラスはモンスターテイマーですが高い魔力を生かしての遠距離攻撃が得意です。近接は主に隠密行動時が多いですね。技術的な部分ではなく、リスク的な意味で態々身構えている敵に近付くメリットを感じないんです」


「だな。タカヤは凄いんだな。いい防具が作れそうな気がするんだな」


 そういうと、隅々まで体のパーツの大きさを測り、図面に書き起こす。


「よし出来たんだな。確認して欲しいんだな」


 書き起こされた図面に目を通すと、その太い腕からは想像できないほど繊細なタッチで描かれた防具の完成予想図があった。


 そこには、フード付きの薄い緑色のコート、そして真っ黒な籠手と具足の3点が描かれていた。


「フードの裏地には繊維状にした金属が編み込んであるんだな。どれも縒りあわせる事で強度も申し分ないんだな。籠手は短刀位の大きさの武器であれば収納可能。具足も意識すれば一瞬だけスピードを加速出来るようになるんだな。もちろん3点ともに【重量軽減】の付与をつけるんだな」


 予想以上。


 考えていたよりもずっと能力の高い防具だ。


「えっと。グーボさん?付与とか速度の加速とかって普通なんですか?そんな付与のついた装備お店で見たことがないんですが…」


「だな〜。付与は独り立ちしているドワーフならば材料次第でつけれるんだな。代表的なもので【重量軽減】【斬れ味上昇】【錆防止】とかあるんだな。スピードの加速は、まぁおらのオリジナルなんだな」


 ハーフドワーフ(熊獣人とドワーフのハーフ)

【Name】グーボ

【age】 36歳

【職業】

 1.上級鍛治師

 ※鍛治師Lv30でクラスUP 力 器用に補正


 2.槌戦士

 ※槌使いLv30でクラスUP HPと力に補正


【Lv】 54

【HP】 950/950

【MP】 80/80

【力】 520

【体力】 230

【器用】 395

【知力】 45

【素早さ】85

【魔力】 40


【スキル】

 ノーマルスキル

 鍛治<Lv7> 槌術<Lv4> 土魔法<Lv4>

 半獣化<Lv2>

  ※体の一部分のみ獣化可能 Lvに応じ変化時間増加


【加護】

 鍛治神の興味

(創作物の質向上 小・魔物能力移譲 小・鍛治スキル経験値増加 小)


 ドワーフ神の呪い(武器製作時マイナス補正 中)


 おおぅ。お強い。


 ていうかまた来たか今度は鍛治神の興味か…。

 興味と好意なら興味が下か?まぁでも加速の秘密は分かった。

 何かしらのスピードが上がる魔物を素材にすることで、その能力を得ているのだろう。


「でも呪いか……」


 ズドンッ!!!!!


「タカヤは、タカヤは何者なんだな!」


 激しい音と共に目の前の分厚い作業机は真っ二つに割れ、柔和な顔が一変。

 どう猛な怒り狂った獣目の大男が、そこにはいた。


「どうして、どうしておらの呪いの事を知っているんだな!これはおらと父さんしか知らない秘密なんだな!」


 迂闊だった。


 つい呟いてしまった呪いの一言を聞かれてしまった。


「すみません。僕は、僕のスキルで呪いや加護が付いている人がわかるんです。だからグーボさんに加護と呪い両方ついていることがわかりました。でも呪い持ちの人は初めてで」


 全てではないが嘘はつかない。

 嘘は信用をなくすし、必要以上の情報は人に不信感を与える。


「それでも。 それでもタカヤはおらに頼むんだな?」


「はい。もちろんです。セリナさんから紹介された鍛治師が信用出来ないはずありませんから」


 興奮は冷めていないが、落ち着いてきてはいるようだ。


「分かったんだな。怒鳴って悪かったんだな。ところで加護ってなんだな?」


「えっ?」


 加護を知らない?そういえばコックスさんも自分の加護に気付いていなかった。


「グーボさんは、どうして呪いがあると?」


「父さんの指導で初めて武器を作った時、あまりの酷さにショックを受けたんだな。そのままその日は寝ることにして、その日の夢にドワーフ神様が出て来て、呪いの事をおらと父さんに教えたんだな」


「あーそれでですか。呪いの内容が分かっても加護がある事には気づかなかったんですね」


 教会に行き、ラノス様に行けば何かわかるだろうか。


 確か鍛治神様の名前はウォルカスト様。

 厳格で厳しい神様であるウォルカスト様が興味を持っているのだったら、何かいい方法を教えてくれるかもしれない。


 そしてドワーフ神モルディル様。


 ドワーフの生みの親と言われ、陽気で大の酒好きの反面、鍛治師として非常に厳しい一面を持っていると言われているらしい。


 この1週間での図書館通いで、この国の歴史や神々の逸話を調べこれらの神様を知ることができた。


 グーボさんの呪いに関しては、近いうちに必ず教会に行こう。


「そうなんだな。おらの事を鍛治神様が見てくれていたんだな。ちゃんと御礼に行かなきゃなんだな」


「そうですね。今度一緒に行きましょう。僕もお伴します」


「ありがとうなんだな。それはそうと悪かったんだな」


 話を聞くと、この装備は今手持ちの素材でなんとかなるとのことだった。


 しかしどうしても必要な素材が手元になく。

 足りない材料は、とって来てほしいとのことだった。


「取り出して2日以内のグリーンスライム レッドスライム ブルースライム ブラウンスライムの核を5個ずつ無傷でとって来てほしいんだな。これはコートを作る為に一番最初に必要なんだな。他のを作っている間になんとか用意して来てほしいんだな」


 各属性スライムの核が、どう使われるか興味が尽きないが、これは楽しみにとっておこう。


「わかりました!これから行ってみます!」


「そんなに急がな…


 後ろでグーボさんが声を上げていたが聞こえない。

 時間は13鐘を回ったところ。


 まだ時間はある!

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