第53話 仕返し
こちらが報酬になります。
差し出された報酬は、金貨78枚。
内訳はDランク相当が金貨5枚ずつ。モンクだけは、3体で1つの依頼とされていた。
そしてCランクのシーフとシャーマンは各9枚の18枚。
Bランクの殲滅報酬はCランク3チームが妥当という事で、金貨10枚×3の30枚が報酬とされた。
「おめでとうございます。今回の功績でタカヤ様はDからCランクへと昇格致しました。もちろんDランク昇格時の特例も解除。Bランク相当の依頼のソロでの達成も評価されての昇格です」
どうやら今回の依頼で昇格必要依頼数をクリアしたらしく、ランクがCとなった。
そして、渡されたギルドカードを見ると青色のカードはそのままにランク表記がDからCに変わっていた。
それにしてもポンポンクラスが上がるな。これは最速なんじゃないだろうか。
よく小説でも転移した主人公が、最速でランクを上げていくなんて内容があるしな。
そう自分のランクアップについて思いを馳せていると、何かに気づいたようにスイデンがニヤリと笑う。
「もうCランクか。タカヤはこの街最速のCランカー到達冒険者だな!」
おぉやっぱりそうか。
「って言われると思っただろ」
はぁ?
「残念。上には上がいるんだよ。最速は登録して2日目でランクをBに上げた奴がいる。魔物の大進行がこの街であってな。その前日に冒険者登録をした新人が大活躍して、一気にランクが上がったんだ。そういえばその後すぐに街を出ちまったが今何やってんだかな。有名になってたらこの街まで届きそうだが」
一瞬同じような転移者を考えたが、その後がわからないならあえて広げる必要もない。
それよりもこのギルマスは威圧の件といい、今回のおちょくりといい、よくやってくれるよ。
少し腹が立ったので、スキルの《威圧》を発動する。と言ってもまだまだLv2とスキル自体は低い、その為たっぷりと威圧に闇属性の魔力と少しの殺気を乗せてスイデンに向け放つ。
すぐに、スイデンの額から冷や汗が吹き出し、おちょくって面白がっている笑顔が消えソファーから後方に飛ぶ。
「なっ。待て。待て待て待て。そりゃなんだ。ちょっと待て悪かった。ちょっとした悪戯心だ。その威圧を引っ込めてくれ。ていうかそれ普通の威圧じゃねぇだろ」
しっかり反省したようなので、発動を止める。
「初めて会った時のお返しです。いつか返そうと思ってましたが意外に早く返せました」
発動を止め、にこりと笑いかけた事で、スイデンも汗を拭いながらソファーに戻る。
「ちっ。威圧使ってんの気づいてたか。わーったよ。悪かった。降参だ。全く寿命が縮まったぞ。とにかく昇格おめでとさん。これからも頑張ってくれや」
そう言って、改めて金貨の入った袋を目の前に差し出し、拗ねた感じでシッシと手を振る。
「金貨78枚確かに確認しました。改めて見ると金貨78枚ってかなり嵩張りますね。マジックバッグの類の鞄を持っているので持ち運びに困りませんが、一般的に硬貨の持ち運びってどうなってるんです?」
78枚の金貨の内半分程を両手で掴み、ジャラジャラと布袋に入れ直す。これだけでもかなりの重さと容量になる。
「ん。タカヤは持っていないのか?今までどうしてたんだ?ああ直接その鞄に入れてんのか」
そう言うと、腰のポーチから俗に言うガマ口のような容れ物を出してきた。
その形は色々だが目にしたことが無い訳ではない。
一般的に街中で使われている財布だろう。
「こいつは財布だ。だがこの財布の中には金貨19枚 銀貨81枚 銅貨が60枚入ってる。まぁ分かったと思うがマジックポーチの一種だな」
タカヤは知らなかったが、この街だけではなく一般的に財布には時空属性の空間魔法が付与されている。
実は時空属性の魔法を調べる際に、本の一つも見ていれば時空魔法の中では、ポピュラーな魔法として一番最初に紹介されているほど、時空魔法を使う魔術師に普及している。
しかしタカヤは、それを調べる前に自ら時空魔法を作ってしまい。結局調べる事なく今に至ってしまった。
時空属性には言霊はなく、イメージが重要であり通常適正のある魔術師であっても、なかなか最初の魔法発動が難しく、熟練度が上げられない。
その為、有名な時空属性魔術師が財布に空間魔法を付与する方法を創り、今では希少な時空属性持ちの熟練度上げ=マジック財布作り。となっている。
その為、熟練度上げに大量に作られたマジック財布は過剰在庫を抱えており、非常に安価に手に入る為普及しているとの事だった。
しかし、これはそれこそガマ口サイズの大きさに、せいぜい硬貨だけを500枚程入れれる程度の空間魔法で、あまり大きなものとなると、それだけ熟練度が高くないと作れない。
その為ポーチやバッグサイズになると急激に価格が上がり、容量をどれだけ増やすかでも金額は1桁変わってくる。
実は中堅以上の冒険者や、商人が1つは容量を増やした魔法鞄を持っているのだが、付き合いのあまりないタカヤは気付いていなかった。
「まぁ安いと言っても、硬貨500枚入りゃ十分だし、勿論重さは財布の重さだけだ。取り出す時も意識すれば出したい分出せるし、不便はねえな」
一般常識の大切さを改めて思い知らされながら、報酬を受け取る。
タカヤは、少し立ち止まってこの世界の事を色々見ておきたい。そう思いながら部屋を退室した。
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