第49話 転移門

『問題……ですか?』


そうこの魔法の致命的な弱点……

それは…


「1人専用なんだよ……」


 そうこの魔法【瞬移】は、以前使った時ポシルを置き去りにしている。


 今回はモンスターBOXに入って貰ったが、一々BOXに入って貰わないといけないだけじゃなく、今後仲間ができた時、一緒に移動することができない。


そう。この魔法の弱点……。それはボッチ限定魔法という事だ!


ポシルが一緒にいたのに、一人での移動のイメージしか出来なかったなんて……。


『そうですね。確かにこの魔法はマスターお一人であれば良いですが、パーティ向けの魔法ではないですね。私もあの時は急にマスターが居なくなって悲しかった記憶が……』


よよよよ。っと泣き真似をしながら、念映でその時の様子が映し出される。


一瞬でポシルの前から消え、その後まだオリジンスライムだったポシルが必死に近寄ってくる映像だ。


芸が細かいな……。


「うっ……。あの時はごめんよ。そう!だからね。今回は新しい魔法を開発しようと思うんだ。僕の知っているゲームだと瞬間移動的なものは接していれば一緒に飛べるんだけど、どうも【瞬移】は最初にイメージしたのが一人だったからそれに固まってしまったみたいなんだ」


『では今回は、複数が移動できるようイメージするのですね』


「そういう事。で、今回はゲームや小説にあるような場所と場所を繋ぐ魔法にしようかと思うんだ。たぶんこっちは空間を、現在地と移動先をくっつけるから距離的な制限は無いに等しいと思うんだよね。それこそ行った場所ならどこでも。理論上座標が分かっていれば行かなくても行けるんだけど、イメージがかなり厳しい。っという事で今回は空間接続魔法【転移門】を作ろうと思うんだ。どこでも行けるドアや門的な物もできるけど、こっちは物質自体を創造しないといけないから効率が悪いんだよね」


 さて、長々と語ったけどイメージを膨らまそう。


 まずは空間と空間の距離を接続して0距離にする。


 その状態で複数人が移動できるように空間に入口となるように空間を開く。


 空間はワープではなくあくまでも現在地と目的地を繋げたもので移動の負担はない。


 いつか仲間が出来た時の為に、空間を通れるのは僕が許可した者のみとし、許可者には魔力によるマーカーを用いる。


 繋げた先に危険がある際これを警告。

 これはスキル【危険察知】を応用する。


 開いた空間は無属性魔法で固定し任意で閉じれるようにイメージする。


「できた!」


 先程のオークのいた池を頭に思い浮かべし 、魔法を唱える。


【転移門】


 在り来たりな名前だが、これが一番イメージしやすい。

 すぐに目の前の空間が歪み、その空間が広がっていき、直径1.5m程の円ができる。


「よし繋がったかな」


 覗き込もうと顔を空間に入れようとすると、ポシルから待ったが掛かる。


『マスター。マスターを信用していないわけでは無いですが、念のため私の分裂体を先行させて下さい。念映で移動先の映像も見れますので』


 やはりポシルは心配性のようだ。


「分かったよ。ありがと。ではお願いしようかな」


 ポシルの体から小さめの分裂体が生まれ、穴に飛込む。


 そして、すぐに脳裏に移動先の映像が送られてくる。


「うん。イメージした場所だね。成功だポシル行こうか」


 移動先を確認し、すぐにゲートをくぐる。


 その先は間違いなく、先程までいたオークと戦闘した形跡の残る池だった。


「無事成功だね。これでみんなで移動できる。しかもこの魔法MP100くらいしか消費しないんだ。かなり効率がいい」


 池の確認をし、そのままシャーマン小屋に戻ってくる。


 時間は16鐘を過ぎたところ、このまま帰っても普通に帰れるが、今回はゲートで森の入り口付近まで移動し街へ戻る事にした。


【転移門】


 森の入り口付近から少し外れた場所にゲートを開く、1時間以上の距離があっという間だ。


「誰かー!!誰かいないかー」


 微かに街道から声がする。

 街道まで距離があるが、間違えなく人の声だ。


「ポシルBOXへ。すぐに街道に移動するよ」


 ポシルをBOXに戻す。

 救出に行って、ポシルを普通のモンスターと思われたら余計混乱する。ここは一人で行くべきだろう。


【瞬移】


 街道の声がする方向、見えるギリギリに向けの移動する。


 街道の近くまで移動したところで、助けの声の主が見える。


 どうやらファングウルフ12匹に襲われている。

 護衛5人が近づくファングウルフを追い払っているが、すでに斥候風の女性の肩からは血が滴り、剣士の男性も傷を負っている。


 護衛達は、ヒットアンドアウェイでジワジワと体力を消耗させられているようで、このままでは5人と主は間違いなくやられてしまうだろう。


「おーい。助けはいりますかー?」


 混乱させないために、声をかける。


 護衛のうち赤髪のスポーツマンタイプで、よく引き締まった体形の剣士風の男性がこちらに気付き、一瞬子供だと思ったのだろう暗い顔を見せたが、そうも言ってられない状況に声をあげる。


「頼む!礼はする。助けてくれ」


 続いて、馬車に乗った主がこちらに向かって叫ぶ。 


「頼む。そこの冒険者様助けてくだされ!」


「わかりました。加勢します」

 そういうとすでにこちらに向かっていた12匹のうち、3匹に向け魔法を放つ。


【土槍】×3


 土で出来た槍を、高速でファングウルフに向かい放つ。


 ファングウルフ3匹もすぐに回避行動に移るが、1匹は左後足大腿部に土槍を受け、槍で地面に固定される。


 そしてもう2匹は、避ける事が出来ずに胴体に貫通され、絶命していた。


 移動しながら、動けずにいるウルフに【風太刀】を放ち、留めを刺す。


「ファイヤーボール」


 5人の冒険者のうち、魔術師風の格好をした男性が杖をファングウルフに向け、呪文を唱える。


 杖の先から火属性のボールを撃ち出され、1匹に直撃する。

 そして、そのまま直撃を食らったウルフは丸焦げとなり倒され絶命した。


 そして太ももを貫かれたウルフに、剣士がとどめを刺す。


 そして僕は、残り8匹となった群れに向かう。


【矢雨】


 上空に向け魔力の弓で、透明な矢を1本放つ。

 しかしその矢は落下が始まると同時に数十本の矢となり降り注ぐ。


 冒険者とウルフ達の配置は、馬車を背中に馬車の扉前に魔術師の男性、その一番前方に鋒矢型の頂点を盾持ち重量戦士2人、その後ろ左右を短剣を構えた斥候風の女性、そして先程の剣士が剣を構えている。


 対するウルフは冒険者を囲うように7匹が、その後方に大きめの個体が陣取る型となっている。


 極力気配を隠蔽し、察知し辛くした不可視の矢は、冒険者の前に陣取るウルフ7匹に襲いかかり、ウルフ達の胴体に矢が多数穿つ。


 1匹だけ大きめの個体は、危険をいち早く察知したようだ。より後方に下がっていた。


 (5匹以上の群れか...)


 ファングウルフリーダー

【スキル】

 ノーマルスキル

 危険察知<Lv2>

 統率<Lv4>


 やはりリーダーがいる群れだったか、ファングウルフはリーダーがいるだけで、連携が増し危険度が大幅に上昇する。


 今回も不用意に近づかない ヒットアンドアウェイの戦法がはまり、護衛の冒険者達を苦しめていた。


 これ以上無理だと悟ったか、ウルフリーダーは逃げの体制に入る。


「この魔石は吸収出来ないよね。さすがに」


【風太刀】

 腕を横に振るい。水平方向に風の刃を撃ち出す。


 さすがに不可視の刃を避けきれずに、ファングウルフリーダーの胴体は分かれ絶命した。



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