第22話 無限の可能性

「キュー キュー」


 足元に擦り寄ってくる。生まれたてのスライムがこんなに可愛いいなんて知ってたら、今頃オリジンスライムは乱獲されているんじゃないだろうか……。


「いや、いや、いや。それはない。狙って見つかるスライムじゃないし」


 それにしてもこれはヤバイな、可愛い過ぎる。


 感触はヒンヤリとして、モッチリクッションのような触りごごち。

 そして、とにかく仕草が可愛い。


「よしよし。キミのステータスをもう一度見せて貰うよ」


 オリジンスライム

【Name】ー

【age】0

【Lv】1

【HP】 1/1

【MP】 0/0

【力】 1

【体力】 1

【器用】 1

【知力】 1

【素早さ】1

【魔力】 1


【スキル】

 ユニークスキル

 吸収 透明化


 ノーマルスキル

 分裂<Lv1> 衝撃耐性<Lv1>


 どうやらテイムしても、ステータスとスキルには変化がないようだ。


 グリーンスライムの吸収が、ノーマルスキル化していたのは、グリーンスライムに定着したからだろう。


 吸収【ユニーク】

 ※あらゆる物を取り込み糧にする事で、能力をステータスに取り込む


 吸収(植物・風属性)<Lv1>

 ※ 植物を取り込み糧とする。風属性の魔力を糧にする事が出来る[(風属性魔力値×0.01)×Lv]。 最大Lv10


 同じ吸収でも流石はユニークスキル。次元が違う。

 グリーンスライムの吸収は、100の魔力を吸収してやっと1しか還元されない。

 成長に必要なものは、ほとんど植物から吸収するか、周囲の風属性の魔力を常に吸収しているのだろう。彼らが生き残れないのも納得だ。


 成長への効率が悪すぎる。


 そして、ユニークスキルの吸収はこの説明だと、吸収すればするほど強くなる可能性があるって事だ。


「よしよしいい子だ。こっちにおいで」


 考察中も、ポヨンポヨンと足元でアピールを繰り返すオリジンスライムを、手の上に誘導する。


 驚いたことに、手の上に乗ると同時に、手のひらサイズまで縮小した。


「おー。サイズを変えられるのか。すごいなー」

 頭?を撫でながらよく観察する。


 透明の体の中に、非常に見えづらいが小さい丸い物体が動いてる。


「これがキミの核になるの?」

 つい言葉に出したが、驚くことに肯定の意思が伝わってくる。


「おっそうなんだね。すごいな。意思が伝えられるんだね。これもテイマーの能力のひとつかな」


 ポヨンポヨン。

 

 そんな中、オリジンスライムは手の上で軽く跳ねて何かを訴え始めた。


 手の上で訴えるオリジンスライムに集中すると、ぼんやりと何かが伝わってくる。


「ん?そうか名前か。名前が欲しいんだね」

 嬉しそうに、1回大きく跳ねて肯定の意思を伝えてくる。


 名前か。

 これは大事だよね。定番だと【ライム】なんだけど、定番すぎるのもなんだかなー。


 うーん。


 スラリン、オリジンスライムだからリジン。

 違うなー。無限 可能性……infinity possibility インフィ ポッシ ポッシル ……。

 よし【ポシル】だ。無限要素はこの際無視だな。無視。英語苦手だし……。


「よしよし。今から君の名前は【ポシル】だ。どうだい?」


 その瞬間、ごっそりとMPの殆どが持っていかれ、魔力枯渇の症状をもろに味わうこととなった。


 この世界の魔物や魔族にとって、名付けの意味も、名付けをした主の存在も非常に大きい。


 そのことを僕は、まだ知らなかった。


 そしてこの名付けという行為は、モンスターにとって神聖化されている程の行為であり、それだけに格上の者から格下の者にしか、名付けが出来ないのは勿論のこと、名付ける者の魂の器の大きさで名付けられる数も違う。


 そして殆どのテイマーが、1体しか名付けることが出来ないため、モンスターテイマーの常識として最も強いか、最も可能性のあるモンスター1体に名を付ける。


 このように、最弱と言われるスライムに名付けを行う事なんて勿論あり得ないのだ。


 そしてそんな常識など、勿論知らなかった。


【ポシル】と名付けられた生まれて間もないスライムは、この瞬間、隆也という創造神ラノスの加護を受け、無限の可能性を秘めたマスターを持つ、ネームドモンスターとしてこの世界に顕現した。


 ピロン!

 モンスターテイム <Lv1>→<Lv2>


 あっ……。初めて上がったな。

 メインの職業でLv1は、流石に格好がつかないしね。

 これで一安心だ。


「マ ス タ」

「マ ス タ」


「この頭に響いている声は【ポシル】?」


 魔力枯渇状態を回復するため、座り込んでいると頭に言葉が伝わってくる。


「ハ イ 」


 念話というやつだろうか。

 伝えようと思い頭に念じると、会話が成り立つようだ。


 しかしまだまだ生まれたばかり。会話が覚束ないのも頷ける。


 オリジンスライム

【Name】ポシル

【age】0

【Lv】1

【HP】 10/10

【MP】 0/0

【力】 10

【体力】 10

【器用】 10

【知力】 10

【素早さ】10

【魔力】 10


【スキル】

 ユニークスキル

 吸収 透明化


 ノーマルスキル

 分裂<Lv1> 衝撃耐性<Lv1>


 ステータスにもしっかりと名前が表記されてる。

 というか名前付けただけで、ステータス10倍かー。


 それよりも成長させるのに、何食べさせればいいんだろう。


「ポシル?ポシルは何が食べたい?」


「ま りょ く マ ス タ」


「僕の魔力かい?」

 

 肯定の意思が伝わり、改めて魔力についてと定着について考える。


 オリジンスライムにとって偏った魔力は、定着の元になってしまうのだろう。時空属性のスライムも見てみたいが、ここは我慢だ。


 ならばポシルにあげる魔力は、偏りのない純魔力もしくは、全属性の魔力。


 全ての属性が可能な僕だからこそ、やってみる価値はありそうだ。


「ポシル。これからちょっとやってみたい事があるから、魔力を僕以外からのも含めて吸収するのを待ってくれるかい?」


「う ん。 ま つ」


 肯定の意思だけでなく、ちゃんと念話も込めるとは。

 やっぱりポシルは可愛いな。


 ポシルを地面に待機させ、早速新魔法の開発に取り掛かった。

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