第20話 検証
報酬は計59銀貨50銅貨となった。
2人で分ける際、スズネが報酬が多すぎると言って受け取らなかったが、最終的に僕が30銀貨、スズネが29銀貨と50銅貨として無理やり渡した。
「じゃあスズネ。今日は有難う」
「ううん。こちらこそおかげで依頼が達成できたし、こんなに報酬も貰えて。またパーティ組めたら嬉しい。そうだ、今日の感謝の気持ちにこれを受け取って。前のクエストの時、たまたま死体があって採取出来たの。それでも報酬は、まだまだ貰いすぎぎなんだけどね」
-フォレストスパイダーの絹糸-
※フォレストスパイダーの糸袋の中から採取可能。絹糸の元となり肌触りがよい。
「いいの?ありがとう!有り難く貰っておくよ。初めての素材だしね。じゃあまたパーティよろしくね」
「うん。こちらこそ」
ギルドでスズネとパーティを解散し、大通りを北門に向かって歩く。
「おうにいちゃん。今日もどうだい?」
初日に買った串焼きの店から声がかかる。
「あっおじさん。覚えてるの?僕のこと」
「あたりめぇよ。あんなに美味そうに食ってくれる奴の顔忘れるかよ。俺はスティボーってんだ。よろしくなにいちゃん」
どうやらあの時、相当顔に出てたらしい。
「じゃあ今日も3本お願い。僕はタカヤです。一応冒険者です」
そう言って自己紹介しながら銅貨を30枚渡す。
「よろしくな。ほら3本だ。また買ってくれよ!」
「はい。また来ますね。ちなみにこれってなんの肉なんですか?」
この不思議肉はなんの肉なのか。予想は魔物肉なんだけど……。
「なんだタカヤ。知らないで食ってたのか。これはオークの肉だ。食肉として有名な豚の顔した人型の魔物だな」
おう。こんなところで定番豚顔モンスターが出てきたか。でも旨いからいいんだけどね。
美味いは正義だよね。
「オークなんですね。有難うございます。今度狩ったら持ってきますね」
「おっそりゃありがたい。少し色をつけて買い取るよ」
時間は18鐘を過ぎたところ、少し実験を兼ねて宿に帰る前に色々試してみた事がある。
「まずは気配遮断は、どこまで遮断しているかだな」
大通りを門に向かいながらスキルを発動する。
その瞬間、一気に人の視線が感じられなくなった。
ただ、すれ違う人がぶつかってくるような事はなく、障害物を避けるように直前で避けている。
「ん〜。これは完全に消えるわけじゃなく、人として、個人としての認識を阻害している感じか?しばらくは気配遮断を継続して歩いてみるか」
どうやら本当に認識を阻害しているようだ。
何かがあるとは分かっていても、それがなんなのか分かっていない。
目の前にいても、生き物がそこにいるという事自体認識されていない。
ただ獣人や高Lvの冒険者は、そこがなにかおかしい、ということは認識しているようで明らかに避けていた。
現状のLvは2。
2では一般人や、低レベルのモンスターくらいしか効かないだろう。
恐らく高レベルになれば、今の一般人に起きているレベルくらいの、気配遮断となるのだろう。
やっぱり神様から貰ったスキルは優秀だね。
「よし。Lv上げのために普段から発動させておくか」
この世界にきて、様々なチートのような能力を貰ったが、無条件に何もしないで強くなるようなスキルや加護はない。
とにかく、自分で自分自身の能力を上げていくしかないのだ。
そのまま大通りをUターンし、ギランさんのいない、いつもと逆側の南門から気配を断って出ていく。
目の前を通過しても全く気にされることもなく、すんなりと門を通ることができた。
しばらく歩くとその風景に思わず息をのむ。
南のエリアは、どこまでも続く森林となっており、北門の草原を初心者の練習用ステージだとすれば、ここからが冒険者として独り立ちできるかの登竜門なのだろう。
ピロン!
気配遮断LvUP <Lv2>→<Lv3>
「おっ上手いこと上がったな。流石は実践訓練だ」
そう今現在、まさにゴブリンたちのグループの中心に入り込み、3体のゴブリン達と一緒に歩いている。
ゴブリン達の平均Lvは6。北側で初めて討伐したゴブ達のLvは2。
こちらは北と比べ高レベルのようで、気配遮断のLvが3になるまで、幾度となく"あれ?グループの中に違う奴いんじゃね?"的な雰囲気になったが、そこはゴブリン。勘違いで終わってくれた。
そして、入り込むこと30分。
とうとう目的の気配遮断のレベルが上がったという訳だ。
ちなみに
ゴブリンA Lv7 剣ゴブ 剣術<Lv2>
ゴブリンB Lv5 剣ゴブ 剣術<Lv1>
ゴブリンC Lv6 棍棒ゴブ 棍術<Lv1>
の3体で、剣は恐らく拾い物であろうボロボロの長剣。棍棒は丸太の持ち手部分を細く削っただけの簡素なものである。
気配遮断のLvが上がった瞬間から、何かいると言った気配すら全く感じている様子がない。
……これほどLv1の違いを実感できるなんて。
スキルは本当に奥が深いな。これからも検証はしっかりとしていこう。
「そういえば、初日に討伐したゴブの魔石がまだBOXの中に入れっぱなしだ」
BOXからGランクの魔石を2個取り出す。
薄っすらと赤色の入った小石程の魔石。
すっかり忘れていたが、試していないスキルがある。
ゴブ達のグループの中心を歩きながら、BOXから聖者の短剣を取り出す。
とさっ
とさっ
とさっ
まさにアサシン。
ゴブリン達の後ろに回り、背中から心臓を一突き。それを素早く3回繰り返す。
ゴブリンは、仲間が崩れていくのを気付く事なく、命を散らしていった。
素早く解体し、右耳と魔石を回収する。
Lvは違えど魔石の色合いや大きさは変わらない。
よし、まずは前の魔石からだな。
確か剣ゴブと棍棒ゴブ
それぞれ、剣術<Lv1>と棍術<Lv1>だったな。
そう、僕が試そうとしているスキルとは
➖ユニーク➖
学ぶ者
解析眼※魔眼 解析を使用可能。
吸収※他者の技術の経験を吸収 魔物の魔石よりスキル経験値を吸収できる。
取得経験値UP大※得られる経験値を増大する。
ユニークスキル 《学ぶ者》 その中の 《吸収》の能力である。
今までは他者の動きを観察し、学習する事でスキル経験値を上げてきた。
このスキルのもう一つの効果。魔石からのスキル経験値の吸収を試す。
このゴブリンのスキルは剣術<Lv1>。
掌に集中しスキルを意識する。《学ぶ者ー吸収ー》
音もなく、光もなく。ただ静かに魔石から何か。いや。剣の経験が確かに掌から吸収される。
そして、経験値が吸収され終わった瞬間。静かに魔石は粉々になってしまった。
「流石に吸収後に売るって事は出来ないか。魔石の力を吸収してる訳だしな。それにしてもスキルLvは上がらないのか。でも確かに経験が蓄積された気はするんだよな」
何度か剣を振りながら前との違いを比べるが、若干振りがスムーズになった感じがする程度だ。
「とりあえず剣術魔石は、全部吸収してみるか」
2つの魔石を、1つ手に取り吸収させる。
同じように、剣術の経験値が自分に取り込まれる感じがするが、1個目に比べ少しだが入ってくる経験値が違う。
また2個目<ゴブリンLv7>と3個目<ゴブリンLv5>も同じ<剣術Lv1>だが、明らかに入ってくる経験値が違う。
恐らく、本当に魔石内に蓄積された剣術の経験が、そのまま入ってくるのだろう。
そう考えれば<ゴブリンLv2>の剣術と、<ゴブリンLv7>の培ってきた経験は、まるで違うはずであり、この経験値の違いは納得できる。
ピロン!
剣術LvUP <Lv3>→<Lv4>
おっ上がった。やっぱりきちんと経験値が吸収されてたか。
剣を一切振らずにLvカンストも出来ちゃうなこれは……。
さて、次はそれこそ一切棍類を扱ったことがない人間が、どういう感覚になるか。
これは間違いなく棍術魔石だけど……。
おもむろに魔石を確認するための解析を発動させる。
ー魔石 Gランクー
スキル
棍術 2
あれっ?なんでだ?
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