第17話 パーティーの実力
「おーいタカヤさーん」
ホールの一番出口側のテーブル席から声がかかる。
オレンジ色のショートカット。少しタレ目の愛くるしい少女が手を振っていた。
「おはようございます。スズネさん。朝から元気ですね」
「タカヤさんおはようございます。そして今日からパーティメンバーとして、よろしくお願いします」
「うん。一緒に頑張ろうね。それじゃあ先ずは何を受けるの?」
そう言うと、肩掛け鞄から数枚の紙を取り出す。
ランク:F
依頼内容:➖ファングウルフ討伐➖
報酬:1体あたり銀貨1枚銅貨50枚
討伐証明部位:右犬歯
数量:5匹以上
その他:群れている場合に注意。5体まではバラバラに襲ってくるがそれ以上は統率者あり。買取額は納品された状態にて査定。
ランク:F
依頼内容:➖突撃猪➖
報酬:1体あたり銀貨1枚銅貨20枚
討伐証明部位:尻尾
数量:3体以上
その他:買取額は納品された状態にて査定。
ランク:F
依頼内容:➖毒草採取➖
報酬:1本あたり銅貨80枚
数量:上限なし
その他:毒草は根を残し、根元から切って採取。薬草が非常に似ている為注意。
討伐に採取。効率を考えられている良いチョイスだ。
「討伐2つに採取ね。わかった。ところでファングウルフに突撃猪を選んだ判断基準ってなんなの?」
「どちらも美味しいんです。2つの意味で……じゅるり…」
おう。まさかの肉食系だったか。
まあ遠距離からの援護を貰いつつのアタックなら、問題ないかな。
「あぁ了解。ウルフって美味しいの?」
「はい。美味しいです。よく定食で出てますよ。煮込みが最高なんです」
「えっ!普通に食べてたの!魔物だよ?」
まさか日々の食事に普通に使われていたとは……。
「はい。格が高い魔物ほど美味しいんです。大鼠と段違いです。それよりもタカヤさんが知らないのが驚きです」
「あぁ僕のいた所は魔物を食べる事は…」
「そうなんですね。美味しいですよ」
笑顔で答えるスズネは、やはり可愛らしい。
初めてのパーティメンバーとして、この依頼は必ず成功させよう。
初めて街へ入ってきた時の北門から、平原に向かう。
今日の門兵も4人で出入りをチェックしているようだ。
「おう!タカヤじゃねえか。無事冒険者になれたんだな」
門の前でギランさんが、声を掛けてくる。どうやら今日もこちらの担当のようだ。
「おはようございます。ギランさん。はい、無事にFランクの冒険者になれました。あと、宿屋の紹介ありがとうございます。凄くいい宿でした」
しっかりと頭を下げお礼を言うと、一瞬驚いたような顔をしたが、直ぐに爽やかな笑顔に戻った。
「おう。なんかあればまた頼んな。それに昨日の今日で、もうFランクか!戦闘試験を受けたのか?」
「いえ。戦闘試験は受けてないんですけど、成り行きでゴーバっていう冒険者の攻撃を避け続けてたら上がっちゃいました」
「上がっちゃいましたって……。Cランクのゴーバだろ。それの攻撃を避け続けてたら、そりゃあGランクじゃないわな。まあ気を付けて行ってきな。そっちの嬢ちゃんとパーティ組んだんだろ。怪我させるなよ!」
そう行って背中を押して出口に押し出される。本当にこの人は暖かい人だ。
「よし。じゃあ行こうか」
やり取りをただ見ていたスズネに、声をかける。
「はい!すみませんぼおっとしてしまって。門兵さんと仲良いんですね」
「うん。ここにきた最初にお世話になって、宿とか紹介してもらったんだよ」
「そう……なんですか」
そんなたわいもない会話を続けながら、小走りで目的地に向かうこと20分。
ようやくファングウルフと、突撃猪の出現報告がある草原が見えてくる。
「スズネさん。着いたよ。この辺りがウルフ達が多いエリアだ」
資料室で調べた魔物の分布エリアではこの辺りの草原でウルフと猪の討伐件数が多い。
今回は効率と安全マージンを取って、分布エリアの浅いところで狩りをする予定だ。
「スズネでいいですよ。さんはいらないです。私達パーティーですから」
「分かった。僕にもさんはいらないよ。じゃあスズネ、ここから気配を探りながら森の方角へ歩いていこう」
「うん。分かった!……タカヤ」
あっ可愛い……。
視界の開けている草原で、奇襲はないだろうが警戒は怠らない。20分程歩くと3体の気配がする。
「いた。あそこの岩の陰」
ちょうど岩の陰が、日陰になっている。
ファングウルフ達は日陰で休んでいるようで、まだこちらに気づいてはいない。
ファングウルフ
【Name】ー
【age】3
【Lv】 5
【HP】 30/30
【MP】 10/10
【力】 50
【体力】 50
【器用】 20
【知力】 20
【素早さ】70
【魔力】 20
【スキル】
ノーマルスキル
連携<Lv1>
爪術<Lv2>
うん。やっぱりスピードタイプだ。全体的にゴブリンよりも、ステータスが高めかな。
「スズネ?どうやらリーダーのいない集まりみたいだ。この距離から狙える?」
「うん大丈夫。タカヤは残り2匹をお願い」
「わかった。5秒後以降いつでもスズネのタイミングで射って。後ろの2匹は任されたよ」
そう言って魔力を込める。
ファングウルフ達が寝ているのは、ちょうど岩陰。頭の上の岩の部分が、ちょうど影になっている。
5
4
3
2
1
0!
ちょうど5秒後。スズネが弓を射る。それと同時にこちらも魔法を発動する。
【影玉】×2
スズネの放った矢が一直線に、岩の上で横になっているファングウルフの頭に突き刺さる。
それとほぼ同時に、岩陰で寝ているウルフの頭上と見張りのウルフの頭上から魔法が放たれる。
影から生まれた黒いピンポン球のような黒球が、一瞬でファングウルフの脳を貫通させ、3匹はその場で絶命した。
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