第3話 異世界へ

 強烈な光の渦の中に飲み込まれ、意識を失った。

 背中にひんやりとした感触。頬をなでる優しい風を受け目を覚ます。


「ん〜。ここが異世界か」


 コリをほぐすようにゆっくりと伸びをしながら起き上がる。

 見渡す限りの草原。たしか4大陸の一つアゼーナ大陸だったはず。


 明らかに地球とは違う身に纏う空気。そして、赤と青の大小の月が照らす薄紫色の景色。

 恐らく夜明け前であろう、正面にはうっすら太陽がのぼり始めている。

 背面には深い森だろうか、鬱蒼と木が繁っている。小高い丘はあるが、山は見当たらない。


「まずは、鞄を確認するのだったか?」


 神様。創造神ラノスの最後の言葉。彼は楽しめと言った。善人でも極悪人で王でも商人でも自由に生きろと。


 出来れば極悪人には、なりたくないけどね。


 さて

 足元に真っ黒の背負い袋のような鞄が落ちている。恐らくこの中に確認すべきものがあるのだろう。

 そう思いながら、鞄の中に手を入れる。


「うわっ!」


 何か違和感を覚え、手を出すが特に何もない。再度手を鞄に入れると原因がはっきりした。


 ーラノスの手紙ー

 ー黒パンー

 ー干し肉ー

 ー無限水袋ー

 ー聖者の短剣ー

 ー金貨 10枚ー

 ー銀貨 10枚ー

 ー銅貨 10枚ー


 異空間。鞄に手を入れた瞬間頭の中に恐らく入っているものであろう一覧が出てきた。

 試しにパンを取りたいと脳内に浮かべてみる。


 ー黒パンー

 ーラノスの手紙ー

 ー干し肉ー

 ー無限水袋ー

 ー聖者の短剣ー

 ー金貨 10枚ー

 ー銀貨 10枚ー

 ー銅貨 10枚ー


 思った通り、一覧の最上部にパンが出てくる。

 恐らく、スキルとは別にラノスが用意してくれた収納鞄なのだろう。時間の経過はあるのだろうか。


 ラノベだとアイテムBOX=生物以外何でも入り、時間の経過がない。高価な物ほど多くの荷物が入る。

 というのが一般的な解釈だろうが。


 さて色々知りたいことも多いけど、まずは手紙の確認かな。


 再度鞄に手を入れ、手紙を取り出す。


 隆也君

 手紙を開くと急にラノスの声が頭に響く。


 どうやら無事転移が完了したようじゃな。これはあくまでも手紙じゃ。

 なので一方通行で伝えよう。

 そこはスイゼンが4大陸の一つアゼーナ大陸。その中にある【クイート】という街まで太陽に向かって歩き半日といった場所じゃ。

 流石にいきなり街中に転移させる訳にいかんでの、比較的魔物の少なく弱い魔物だけしか出ない草原を転移先としたのじゃ。

 街にすぐに行くのもよし、多少考察してから行くのもよし、とにかくまずは太陽が昇った方角へ向かってほしい。

 街への入場税は銀貨5枚、まあ5000円といったところじゃ。あとは色々実際に聞いてみるがよい。

 ど田舎の村から冒険者になるために来たといえば、常識がなくとも疑われんじゃろう。

 それと基本魔物は敵対してくる。もしお主の言うように友好的な者であればお主なら分かるはずじゃ。

 さてここからがお主の第2の人生のスタートじゃ、縁を大切に自由な人生を送ってくれる事を願おう。

 それとくれぐれも奴隷狩りには注意じゃぞ。それではの


 ラノスの贈る言葉と同時に、手紙が青白い炎を伴い消失する。さすが神様だ、やる事が細かい。


 さて、まずはどうするか。

「ステータス!」



【Name】 タカヤ・イシガミ

【age】 18歳

【職業】 (1.無職(転移者) 2.自由人 )3.魔物使い

【Lv】 1

【HP】 30/30

【MP】 60/60

【力】 30

【体力】 20

【器用】 70

【知力】 70

【素早さ】60

【魔力】80


【スキル】

 ユニーク

 異世界言語理解

 収納BOX

 学ぶ者(解析眼・吸収・取得経験値UP大)


 ノーマルスキル

 剣術<Lv3> 気配察知<Lv3> 気配遮断<Lv2>

 モンスターテイム<Lv1>



【加護】

 創造神の加護(限界突破・神の御心・友好度UP・隠者)



 ふむ。まずはなぜか名前が漢字じゃなくカタカナになってる。

 そしてタカヤ・イシガミか名前が先なんだな。と言うか一般的な平民に苗字なんてあるのか?

 タカヤだけに出来ないものか…


【Name】 タカヤ

【age】 18歳

【職業】 (1.無職(転移者) 2.自由人 )3.魔物使い


 おおぅ。なったよ。どうやら多少表記が変えられるようだな。


 それじゃあステータスを詳しく確認してみようか。


【Name】 タカヤ

【age】 18歳

【職業】 (1.無職(転移者) 2.自由人 )3.魔物使い

【Lv】 1

【HP】 30/30

【MP】 60/60

【力】 30

【体力】 20

【器用】 70

【知力】 70

【素早さ】60

【魔力】80



【スキル】

 ユニーク

 異世界言語理解

 収納BOX

 学ぶ者(解析眼・吸収・取得経験値UP大)


 ノーマルスキル

 剣術<Lv3> 気配察知<Lv3> 気配遮断<Lv2>

 モンスターテイム<Lv1>


【加護】

 創造神の加護(限界突破・神の御心・友好度UP・隠者)


 まず気になるのは職業だな。なぜか1.と2.にはカッコがついている。

 恐らく他者から見られるステータスには魔物使いと見えるのだろう。確かに転移者はまずい。


 そして自由人。。。

 フリーターか⁈まぁ間違いなく今の僕はフリーターだ。

 この職業の意味をもう少し詳細に見れるといいんだけど。


 1.無職(転移者)※(転移者)※異世界からの転移者(全ステータスUP補正・中 ユニークスキル【異世界言語理解 収納BOX】取得)

 2.自由人 ※全ての職業取得の可能性を秘めた者 (職業取得補正 職業変更可能)

 3.魔物使い ※親和性の高い魔物を使役する者 (スキル【モンスターテイム】取得 親和性増加・中 ユニークモンスター発見率・大 ユニークモンスター成長率・大)


 それぞれの詳細が表示される。

 ステータスなどだけでなく、みたいもの知りたい物の詳細が見れる。恐らくこれが解析眼の能力だろう。職業により様々なステータスへの影響が見られる。


 全ステータスUP補正とは、LvUP時のステータス上昇に補正がかかるのだろう。今の平均が55。少し一般的な兵士よりも高いくらいか……

 あとは自由人。フリーターって事じゃないんだな。。。複雑な気持ちだ。実際今は何もしていないしな。

 全職業取得可能って地味に凄くないか?さらに職業変更も自由とくれば、今後色々試せそうな課題だな。

 魔物使いは親和性がよくわからないけど、そういうものなのだろう。ユニークモンスターについては今後調べればいいか。


 次はステータスについてか。

 まずは自分のステータスの特徴としては、後衛タイプ?に当たるのだろうか。

 だけど、スキルとステータスを合わせると完全に暗殺者・アサシンなイメージしか湧かない……

 後ろから気配を消して、首元にひと突き……。

 まさにアサシン。あとは魔法が使えるようになれば剣よりむいてそうだな。アサシンプレーに魔法!まさに僕好みだ!


「僕好みか……」


 確かに当然か?僕の能力は、ラノス様からの質問とその解答に反映されている。

 頑強な肉体を望まず、強靭な精神と解答をだした。

 魔物を友としたいと言った。

 成長する事を願った。

 守れる力を願った。


「随分と過保護な神様だ」


 僕は自然と笑っていた。この世界を楽しもう。まずは、能力を把握して街を目指そう。仲間を見つけるのもいい。


 さて次はステータス値だけど、これは後回しでいいか。

 それよりもスキルの詳細が気になるし。

 スキル一つ一つに焦点を合わせ解析眼を意識していく。


【スキル】

 ➖ユニーク➖

 ※通常では後天的に取得することがないスキル

 ユニークスキル以外では確認不可。


 異世界言語理解

 ※異世界の言葉や文字を理解し使用可能。


 収納BOX

 ※生きている生物以外を収納可能 収納力は所有者のLv依存現在10種類 各10個まで収納可能 時間の経過は現在選択不可(Lvにて解放)時間停止で固定中。

 収納できる大きさも、取得者本人のLv依存(現在は2㎥まで)


 学ぶ者

 解析眼

 ※魔眼 解析を使用可能。


 吸収

 ※他者の技術・経験を吸収

 魔物の魔石よりスキル経験値を吸収できる。


 取得経験値UP大

 ※得られる経験値を増大する。


 ➖ノーマルスキル➖

 剣術<Lv3> ※剣を扱うスキル 剣での攻撃に補正 最大Lv10

 気配察知<Lv3> ※周囲の気配を察知するスキル 探知距離はLvに依存。20m×Lv×2 最大Lv10

 気配遮断<Lv2> ※気配を消す。認識されなくなる。 最大Lv10

 モンスターテイム<Lv1>

 ※親和性の高い魔物をテイムすることが出来る。Lvが高いほど親和性の高い魔物に会う可能性が増える。

 専用スキル使用可能

 〜モンスターBOX※魔物を収納する異空間〜


「おぉ〜。チートだこれチートだよ」


 予想以上に過保護なスキルだ。

 収納BOXは今は少ないけど、Lv次第では無限に近い量入れられるんじゃないか?

 そして特に学ぶ者はやばい。これって俗に言う強奪系とかラーニング系スキルじゃないか?

 恐らくノーマルスキルは転移前の経験が元になってる。

 それはなんとなくだけど、当たりだと思う……。


 剣術:小さい頃からやっていた剣道だろう。

 気配察知に気配遮断:これはあれだ、自称妻の幼馴染の気配を察知して逃げ回り、見つからないように気配を殺して生活してたせいだ。お陰で、普段から教室にいても認知されないことが、よくあった。まさか普段からアサシン生活を送っていたとは……。

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